ダンテ、「神曲物語」。 野上素一訳、教養文庫。
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ダンテとヴィルジリオが一週間をかけ、あの世である天堂(天国のこと)と地獄、そして煉獄である浄罪界を含む世界を旅するイタリア文学の古典。
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現代のインテリ達によれば「あの世」なる彼岸の世界は、単に宗教上の迷信として退けられるだけだろう。
同様に現代の大衆もまた彼岸のことなど考えもしないものだ。
しかし、古今東西、あの世、つまり天国と地獄の存在に対する描写は数知れない。
あの世の存在が是が非か、と言う議論はともかく、こうした宗教上の描写や文学が、ある種の寓意を持っていることは誰も否定できないだろう。
だからダンテのこの著作もそうしたものの一つといえば通じるかもしれない。
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とにかく、これは永遠の古典というべき著作である。
ここでダンテは現世での行いの報いとして、あの世で人間がどういう目に会うのかを天堂編、浄罪編、地獄編の世界を描く事で表現している。
こうした「あの世」的な知識に疎い人々は、漠然と、生きているうちに悪さをしたものは地獄へ行き、良い事をすれば天国へいけるのだ、と考えがちだが、このダンテの著作はあの世のあり方についてもっと踏み込んでおり、もっと実際的である。
確かにここには政治家でもあったダンテの、政敵に対する個人的な意見や考えが感じられはする。
それでもやはり、ここにはダンテの強力な正義感と意思、そして一定の論理性が垣間見られるのも事実だろう。
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こうした著作は一種のファンタジーなのかもしれないが、それでもこの本の内容、特に地獄編等は、我々日本人のとっても真実味のある内容として伝わってくる。
結局それは、ダンテの物の見方が正確で、確かな経験に裏打ちされていたからなのだろうと感じられた。
いずれにしても、緻密で細かい彼岸の世界の描写は、ダンテの観察によって、人間の徳についての実際的意義も有しており、興味深い本であることには間違いがない。
