2019年8月24日(土)の授業レポート | 漫才塾

漫才塾

大阪で開講中「漫才塾」の講義模様やイベントのレポートです

のろくて大きな台風が日本列島を駆け抜けたかと思ったら、一気に秋めいてきましたね。

 

今年は過ごしやすいシーズンが早めに訪れそうな気配です。

 

まもなく8月終わろうとしていますが、みなさん夏を満喫できましたか?

 

さて本日は、授業前に漫才塾ネトラジの収録がございました♪

久々に三人がそろった男塾と先輩芸人のてるちゃん。

 

 

写真からも伝わるとおり、和気あいあいとした雰囲気での収録となりましたので、ぜひこちらをお聞きくださいませ。

『クチビルから散弾銃』→http://manradi.seesaa.net/

 

 

本日は大滝塾長が諸事情により欠席ということで、私、高田が講義させていただきました。

漫才塾では、事前に出されていた課題に塾生たちが当日、答える形になっています。

 

今回出された課題は、

・自分の好きなところを何個言えるか?

・「これは困ったぞ…」という話

のふたつ。

 

課題に取り組んだ結果、普段は考えないようなことを思考する塾生もいるでしょう。

 

これにより、引き出しが増えていきます。

 

どれだけ自分に問いかけができるかは重要な要素。そして人からの問いに答える数が多い人ほど、結果的に豊富な話題を持てるようになるのです。

 

今日は、漫才のシステム化について講義いたしました。

※左下部にうつる怪しげな男は、たまたま映り込んだ逃走犯……ではありません(笑)

 

その昔、漫才は余剰を含んでおり、今よりも牧歌的なものでした。

 

しかし若手がネタをする場が増えるにつれて、どんどんネタ時間は短いものへと変化。

 

2001年に始まったM-1グランプリ。ネタ時間は4分。

 

この4分間をいかに使うかが、漫才師の運命に大きな影響を与えるようになります。。

 

2005年で見事な漫才を披露し、優勝を果たしたブラックマヨネーズ。

 

審査員を務めた島田紳助さんの「いや、もう4分の使い方抜群。4分の使い方に感動したね」という言葉が印象的でした。2005年に4分という時間を完璧に使ったのがブラックマヨネーズのお二人だったのです。

 

回数を重ねるごとにM-1グランプリは成熟していきます。

 

2007年のノンスタイルが優勝したことにより、ハイテンポでボケ数の多い漫才の優位性が示されることに。

 

漫才に絶対的な正解はもちろんありません。

しかしノンスタイルがその下の世代に大きな影響を及ぼしたのは間違いないでしょう。

 

限られた時間の中でボケ数を増やすには、フリになる部分を短い尺に凝縮しなければなりません。冒頭をおろそかにすると、演者側がどれだけ自信のあるボケを繰り出しても伝わりません。

 

なので最初の十数秒での会話が、ものすごく大切になります。

 

「ボケ数合戦」と揶揄される側面もありますが、M-1の結果を見るとボケ数の多いネタが好成績を収めているのは確か。

 

ボケの多さに定評があるナイツは、2008年のM-1で33個のボケを入れることに成功しました。

 

その後も、ハイテンポでボケ数の多い漫才は増えていきます。

 

4分間で30個のボケを入れたとしましょう。

 

240秒÷30=8秒

 

なんと8秒に一回、ボケが入る計算となります。

 

ボケがたくさん入る構造を考えると、やはり短い時間でひとつのフリを作り、それに対してボケを重ねていくという形になるのでしょう。

 

お笑いはお客さんの情緒を動かすもの。そのため、無駄を排除しすぎると味気ないものになりかねません。

 

しかし「是が非でも賞レースで結果を残したい」となった際に、ネタの構造分析をして受けやすいフォーマットの研究をすることが重要になるでしょう。

 

とはいえ、ロジックはあくまでロジックでしかありません。

 

理論は身体性にまで落とし込まれ、その上でアウトプットされてから、初めて大きな価値を生み出します。

 

ひとつのフリに対してボケを重ねていくことがいかに難しいかについては、2001年M-1準優勝の実績を持つユウキロックさんと、2008年のM-1王者であるノンスタイルの石田さんの対談『“テンポの漫才”は賞レースで勝てるのか? ユウキロック×ノンスタ石田 対談』をお読みください!

 

「失敗を減らして成果率を上げよう」と考えた際に、システム化が進むのは当然です。

 

しかし時代の価値観はゆっくりと、あるいは急速に変動しています。

 

また4分漫才に関しては、どこかで潮目が変わるはず。

 

これから漫才の形が、どのように変化していくのか、目が離せないですね。

 

                                              写真・文章 高田豪(構成作家・落語作家)