無限の住人 (1) (アフタヌーンKC (90)) 無限の住人 (1) (アフタヌーンKC (90))
沙村 広明

講談社 1994-09
売り上げランキング :
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

良いバトル漫画に必要なのはスタイリッシュさ。

全てを完結させる美しさのキメ技に痺れる!


今回はアクション時代劇漫画、『無限の住人』(月刊アフタヌーン、1994~)について書きます。

『無限の住人』は江戸時代を舞台とした剣客バトル。

不死の肉体を持つ主人公“万次”とその相棒(?)“凛”の旅路を描いている。


いやー・・・ついに書くことになったか、能力バトル。

え?『むげにん』て能力バトルなの?と思う人もいるだろうけど、それぞれが尽きつめた個性的な技や能力で戦う漫画をすべて僕は能力バトルと呼びます。

それゆえに広義には『スラムダンク』なんかも僕にとっては能力バトルなのだけど・・・閑話休題。


『無限の住人』には様々な特長があって、それはデッサン力に裏付けされた圧倒的な画であったり、漢字の効果音だったり、奇抜な服装や武器やそれらに隠されたユーモアだったりする。

すべてを総括して述べることは難しいだろうし、それはすでに雑誌などで書かれた批評の繰り返しになる可能性が高いのでここでは深く言及しない。

前述したように、能力バトルとして、そしてアクション漫画として『無限の住人』を評してみる。


能力バトルの金字塔といえば『ジョジョの奇妙な冒険』だ。

かの作品はキャラクターたちの対決ごとに話が完結してゆき、それを積み重ねてストーリーが展開してゆくという、バトルに主眼を置いた形式を取っていた。

『無限の住人』もまた、その型に忠実な作品だと言え、いちいちはっきりと《対決が始まり》、《決着がつく》という段階を踏む(特に物語序盤に顕著である)。

この「はっきりと」という部分が、作者沙村広明の上手いところだと思うのだ。


登場する剣客たちはそれぞれに剣の道を極めた達人ばかりで、全員クセのある一筋縄ではいかない《能力者》たちだ。

日本刀を振り回すだけの時代劇とは一線を画した、独特で個性的な武器で戦う外道なバトル。

剣の中から仕込みの小さな剣がでてきたり、三節棍のような槍でアクロバットしたり、隻腕かと思いきや削って尖らせた己の骨で突いてきたり。

創造的とすらいえる戦法の応酬で相手と切り結び、お互いに消耗していきながらも最後の時が訪れる。

対決の締め、決着のキメ技は1ページ使って鮮烈に描かれる。

これが最高にかっこいい。

格闘ゲームだったら「K.O.!」とバンと表示されそうだ。

キメ技、最後の強烈な一撃によって戦いの終わりが「はっきりと」宣言されるのである。


個人的に好きな《キメ》シーンは、百琳が自分を拷問していた逸刀流の敵に跨って背中を切り上げるところだ。

拷問で限界に達していた百琳の一撃は、まるで花が弾けるようで、もはや美しいとすら感じる。

死力を尽くした戦いの果ての、せつなく美しくスタイリッシュな決着は、読者にある種のエクスタシーを与えるのだ。


アクション漫画としては最高峰に位置するだろう『無限の住人』だが、感動すら覚える決着の瞬間にこそ、画力・バトル・書き文字・キャラクター、そのすべてが集約されているのではないだろうか。


・・・どこかのゲーム会社が格ゲーにしてくんねぇかな。

神戸在住 1 (1) (アフタヌーンKC) 神戸在住 1 (1) (アフタヌーンKC)
木村 紺

講談社 1999-08
売り上げランキング :
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 僕にとって、マンガは基本的に息抜きのための存在なのだけど、たまに「あー、生き方見つめ直そ」と思わせてくれる作品に出会うから油断ならない。木村紺の『神戸在住』はまさにそんなマンガで、読んだ後とても前向きな気持ちになれる作品だ。普段マンガをあまり読まない人にも是非ともオススメしたい一作である。

作品情報

 『神戸在住(こうべざいじゅう)』は、マンガ家、木村紺のマンガ。月刊アフタヌーン(講談社)で1998年から2006年5月号(3月25日発売)まで連載された。全10巻。木村は本作品により、第31回日本漫画家協会賞新人賞を受賞した。
 東京出身で神戸の北野にある神戸中央大学校(モデルは神戸山手大学・短期大学)に通う主人公、辰木桂の大学生活を中心に、主人公とその周りを取り巻く人間模様がほぼ1話完結のエッセイ風に描かれている。タイトル通り、神戸近辺を舞台にしているため、特に阪神・淡路大震災の話が度々描かれている。また国際都市神戸としての多様性を象徴するように多様な背景を持った人々が登場する。出会いと別れ、死、地域性や人種・民族、病苦や障害などに焦点を当てたストーリーが特徴的である。(Wikipedia より)

丁寧に紡がれる日常

 大学の美術科に通う主人公の視点で、日々の生活が綴られていく、というのがこのマンガの大筋だ。その際、注目すべきはその描かれ方で、フリーハンドの温かみある絵柄によって、他愛のない出来事や、とりとめのない会話なんかまで、とても丁寧に描かれているのだ。どんな些細な出来事も、大切に受け止める主人公。読者はその姿を見ることで、日常がいかにかけがえのないものか、再発見することだろう。

 このマンガは「丁寧な生き方」を、そしてその大切さを教えてくれる作品だ。

徹底したリアリズム

 側面的な話になってしまうが、このマンガはリアリズムを追求した作品だと思う。絵柄は全然写実的じゃないんだけど、ミョーに登場人物にリアリティーがあるのだ。それは、神戸の町並みの緻密な描写、そして登場人物の言葉づかいへのこだわりの賜物なんだと思う。このような部分も、この作品の魅力を大いに引き上げているといえるだろう。

まとめ

 冒頭でも触れたとおり、この作品は人を前向きな気持ちにする作品だ。気持ちが沈んでいる人なんかは特に、この作品を読むと良いんじゃなかろうか。また、これから大学に入る高校生にも特にオススメしておく。桂を見習えばリア充間違いなし、である。

青春ヒヒヒ 上 (1) (ヤングジャンプコミックス) 青春ヒヒヒ 上 (1) (ヤングジャンプコミックス)
清野 とおる

集英社 2002-05-17
売り上げランキング :
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 ―清野とおるは、ホントに頭がおかしいんじゃないだろうか?―このマンガを読んでいると、そんな不安を覚えてしまう。『青春ヒヒヒ』は、ギャグと狂気のギリギリの綱渡りのような作品だ。

作品情報

 本作は、2002年にヤングジャンプで掲載されていた作品。変人だらけの中学校、日日日中学に転入してきた唯一の常識人、岩清水つとむのエキサイティングな日常を描く学園モノのギャグマンガだ。

 作者の清野とおる氏は本作が初連載で、その後もヤンジャンで『ハラハラドキドキ』というギャグマンガを書いている。それからいっとき姿を消していたが、最近また読み切りやケータイマンガなど、精力的な執筆活動を行っている。

作風

 清野マンガは常に作風が一貫している。どの作品でもやってることは同じで、そこが魅力の1つだろう。

 で、その作風は、いわゆる「不条理ギャグ」と呼ばれるものである。設定、絵柄、キャラなど、全てにおいて常識はずれの作風なのだ。ここで一番重要なのは、その程度が、「清野は真性なんじゃないか?」と心配になる程だという点。

 「不条理ギャグ」や「シュールギャグ」と呼ばれるマンガには、「俺ってこんなに変なんだよ」という、作者のあざとい精神が感じられる作品が少なくないように思う。対して清野作品は、単に彼が自然にギャグを書いた結果として「不条理」が生じており、そこに打算は皆無なのだ。その点が清々しく、読んでいて気持ち良い。

まとめ

 清野作品は良くも悪くもワンアンドオンリー。人によっては「キモい」の一言かもしれないが、ハマる人にはハマると思う。それは清野氏が己の好みに素直に書いている証なので、私はとても好感がもてる。

 少しでも興味を持った方は、清野氏が運営しているブログがあるので、まずはそこから目を通してみることをオススメする。