連続テレビ小説「オードリー」の再放送 ⑬  | 満天の星Lovelyのブログ

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60周年をあれほどに輝かせながら61周年へと繋げていかれた舟木さん、本当にお見事でした!
2023年もこれからもずっと、素晴らしい夢時間を頂けますように・・・。

                         連続テレビ小説  再放送  

 

               山鹿の温泉旅館にて

 

         露天風呂あるで。ほな、ええなぁ。みんなで入ろか?

 

     夕方までには京都へ戻らなければいけない滝乃には、温泉に入っている

     時間はない。

     滝乃にとって、美月は自分の命よりも大事な存在ではあったが、椿屋も、

     椿屋のお客様も、同じように命に代えても守らなければいけない。

     美月と「椿屋」と自分の命、どれかひとつ犠牲にせよ言われたら、自分

     の命を捨てるだろう、という滝乃だった。

 

     黒田社長たちが帰ったのは、夜中の1時過ぎ。深夜に車を飛ばして、春

     夫が見つけて来た伊丹空港3時30分発のムーンライト便に飛び乗った。

     これが滝乃のできるギリギリの限界。美月への愛情はママにも負けない

     と思っているが、夕方までには「椿屋」へ戻って、お着きのお客様をお

     迎えし夕食の接待もしなくてはいけない。それが滝乃の宿命であるから。

 

     「温泉だけチャチャっと入って、昼の飛行機でみんなで一緒に帰ろうか

     ?」と春夫が提案したが、今晩が君ちゃんの誕生日で、灯籠祭りで踊る

     ことは、君ちゃんの小さい時からの夢だった。

 

     「君ちゃんが灯籠祭りで踊るまで、帰らない。」という美月に、愛子は

      もう一泊付き添うことにした。「滝乃さん、美月のためにも、もう一晩

      山鹿で、、、。」と愛子も滝乃に言ったが、「それはできない。仕事

      の重さは、愛子さんにはわからへん。」ということだった。

 

      「仕事、仕事と仰いますけど、そんなに仕事が大事なら、仕事に掛ける

      お気持ちがあるなら、なんで美月に仕事を持って生きるなんてこと考

      えたらいけない、お嫁さんになるのが一番幸せだなんて、吹き込まれ

      るんですか?滝乃さんの生き方とまるっきり矛盾しているじゃないで

      すか。」

              「私みたいになって欲しないからよ。あんたがこれからの時代は、女も男

                と肩並べて生きる時代やというてるのは知ってるえ。それは、たぶん当

                たっているやろ。愛やの恋やの結婚やのと、女子大の時の友達が騒いで

                いる頃、もう私は『椿屋』の主人やった。親を亡くしてから、一日たり

               とも男の人に食べさしてもろたり守ってもろたことはない。これって、

               愛子さんの理想やろ?」

              「そうです。ただ、美月には親から押し付けられた仕事ではなく、自分で

               選んだ仕事を持ってほしいんです、私は。」

 

             「どんな仕事も、仕事の厳しさは同じえ。そやからこそ、私は美月ちゃん

               にそんな苦労はさせとうないねん。 自立なんて言葉は、耳に心地よいだ

              けや。 ほんまに自立している人間の苦しさも悲しさも、愛子さん、あん

              たには絶対わからへん。」

 

             「わからないかも知れません。でも、滝乃さんにわからないことが、私に

               わかることもあるんです。私は昭和20年3月10日の東京大空襲で家

               族を失いました。空襲を免れた京都の人にはわからない恐怖だったと思

     います。戦争じゃなくっても、いつ何が起きるかわからないのが人生で

     しょ?パパだって滝乃さんだって、君ちゃんだって、自分の思い通りに

     なんて誰もなってないじゃないですか。」

 

                 「そやね。それで?」

 

 

     「だから私は、美月を身ごもった時思いました。女の子でも男の子でも、

      苦境に立たされた時、強く生き抜ける子供に育てねばならないって。

      それが、新しい生命をこの世に送り出した親の、最大の務めだって。」

 

     「そうやって、いつもいつも愛子さんと私が違うことを言うから、美月

      ちゃんは混乱して、家出してしもたんやね。」

     「そうです。11年前に私がもっと強ければ、、。」

 

      2学期からは美月を自家用車で送り迎えするのは、やめてほしい。雨の

      冷たさも、風の厳しさも知らない人間になったら、後で苦労するのは美

      月なのだから、と愛子は滝乃に要望した。

 

        滝乃は、「短い時間でも山鹿にまで来てよかった。ママともよく話がで

      きて、ママの気持ちもよくわかった。自分の夢を美月ちゃんに託して、

      苦しめていたかも知れない。ここでよ~く考えて、椿屋に戻ってくるか、

      ママとパパのおうちへ戻ってくるか、美月ちゃんが自分で決めたらい

      い。」と言って、山鹿を後にしようとした。                 

 

                  パパの想い

     「滝乃さん、そんなこと決める方がおかしいんとちゃうか。ずっと思う

      てたんやけど、オードリーを追いつめたんは、僕も含めた3人のせい

      や。けど、もう11年や。9月に誕生日が来たら、12年もオードリ

      ーはこんな風に暮らしてきたんや。あんたらの話は、どっちがオード

      リーの母親か、どっちがオードリーの家かて、選ばせる方向へ行った

      やんか。オードリーの中では、愛子も滝さんも必要な人なんや。二人

      で一人前言うたら失礼やけど、どっちが欠けてもオードリーの母親は

      半分になってしまうんや。そやろ、オードリー。」

 

      

      パパは美月の気持ちを分かっていてくれた・・パパのこの優しい顔・・

        美月は、泣きながら「うん」と言うのが精一杯だった。

 

     

 

     3人共に差し出したハンカチを、誰のハンカチも受け取らず、自分で涙を

     拭くオードリー(パパ、ママ、滝乃さんに気を遣って、美月ちゃんのいじ

     らしいこと)。

 

     「けど春夫さん、どっちかで暮らさなあかんやないの。どっちも美月ちゃ

      んの家、みんな家族言うたかて、それこそ夢みたいな現実味のない話や

      わ。」

     「真実やから、現実味がないんや。分かり易いことの方が、嘘くさいこと

      もある。一見、仲良う見えるシンプルな家族が、みな幸せとは限らへん

      やろ?」                 (さすが、的確な見方のパパです!)

 

     「自分のお部屋で暮らす。ママのおうちも私のおうちや。お母ちゃまの

      椿屋も、私のおうちや。ずっとそう思って暮らしてきたんやもん。お

      母ちゃま、これからはベッドで一人で寝てもええ?」

       

          「ええよ」        成長した我が子を見る愛子

 

     「ママの言う通り、車の送り迎えはもうやめて。歩いて、電車で通いたい。

      雨の日も、迎えに来んといて。撮影所には行かへんから、絶対。」

          「ええよ」

     「これから、自分のことは自分で決める。お母ちゃまも、ママも、私の

      こと信じて!」

 

     「みんな勝手なこと言うかも知れへんけど、お母ちゃまもママもパパも、

      美月を愛していることだけは、わかってくれよ。」

     「お姉ちゃん、もっと家に来いよ。」

     「行くよ~。ママのスパゲティ、食べたいもん。」

 

       この日から6年、とうとう私は撮影所の門をくぐらなかった。

 

                 その晩の灯籠祭り

        綺麗やけど、悲し気な踊りやな~。 念仏踊りやもの。

        日本は涙の文化やな~。

 

                君ちゃんや。君ちゃ~~ん。    

           

 

         ママにも、パパにも聞こえなかったけど、私には聞こえた。

             「美月ちゃん、あんた、映画作りや。」

           君ちゃんは、私に映画を作れていうたんや。

 

                  よへほ節

          主は山鹿の 骨なし灯籠  よへほ よへほ

          骨もなければ 肉もなし  よへほ よへほ

 

          洗いすすぎの 鼓の湯籠  よへほ よへほ

          山鹿千軒 たらいなし   よへほ よへほ

 

          心あら瀬の 蛍の頃に   よへほ よへほ

               ~~~~~  

                   ~~~~~

                      (野口雨情の改作による歌詞)

 

           2年前に君ちゃんのおばあちゃんは亡くなり、

           君ちゃんは遠くの農家へお嫁に行った。