~ 春を待つ如月の日々 ~
節分を迎え立春も過ぎ、雪もその後の思わぬ初夏の数日も過ごして、気温の
乱高下に見舞われた如月。下旬になりやっと本来の厳寒の日々が到来して、
このところしとしとと降り続く雨は土に柔らかく沁み込んで、間もなくの春
を運んで来ているようにも思えます。
2月2日(金)に大宮で舟木さんにお目に掛かって以来、私の舟旅はしばらく
ご無沙汰~弥生3月を楽しみにしながら、やがての春を待っております。
気になっていた伊集院静氏の「いとまの雪」(上・下)を読み終えた後、途方
もないフィクションの東映映画「身代わり忠臣蔵」を見に行ったり、友人のお
誘いで千住真理子さんのヴァイオリンコンサートをお聴きしたり、チャンネル
NECOさん放映の舟木さんコンサートや西郷輝彦さんの映画を見たり。NHK大
河ドラマで若かりし頃の紫式部と藤原道長の出会いをあれあれと驚きながら拝
見したりの日々を過ごす毎日です。
「身代わり忠臣蔵」
主人公は大石内蔵助ではなく、吉良上野介の弟で上野介の身代わりとなる
吉良家6男の考証(たかあき)。
江戸城で藩主が刃傷に及んだために赤穂藩はもちろん、上野介が斬られた
吉良家も将軍綱吉と側用人柳沢吉保の怒りを買ってしまった。武士の恥を
晒したとして、吉良家もお取り潰し、お家断絶の危機に瀕してしまった。
ここは、ぶらぶらと気ままな坊主の暮らしを続けていた弟が身代わりにな
ることで上野介存命を装い、幕府を欺こうという魂胆が始まっていく。や
がて大石内蔵助(永山瑛太)と身代わり上野介(ムロツヨシ・・上野介と
二役)との間には、敵同士ではあっても立場を超えて心が通い合っていく。
お互いに藩のために、家臣やその家族のために身を挺していく、その背負
わされた責任の重さ、荷物の大きさ・・・機転を利かせ合って無事主君の
仇討ちを成し遂げた(ことになった)内蔵助と吉良家存続もかなった身代
わり上野介・・・別々の道を歩むことになった二人の晴れやかな別れ。身
代わり上野介は、「大石内蔵助はこの上なく立派なひと。できればこの先
も一緒に生きたいものだ」と述懐していた。
「超高速・参勤交代」「引っ越し大名!」などの大ヒットコメディ時代劇に
連なる、とにもかくにも奇想天外な、とてつもなく面白いフィクションの
痛快エンタテイメント時代劇「身代わり忠臣蔵」!俳優陣も多彩で、若い方
も大勢見に来ていて終演後には口々に ” 面白かった~ ” の声が聞こえていた。
「いとまの雪」(上・下) 伊集院 静
こちらも、あっと驚く骨太のフィクション・・・48番目の志士!
主君の仇討ちのために、1年10ヶ月にもわたる大石内蔵助の一分の
隙も無い用意周到さには驚くばかり。
内蔵助は、本当に討ちたい敵はもはや吉良家の引退した老人・上野介
ではなく、柳沢吉保であり徳川綱吉(元禄期を終えて崩れ行く予兆を
示しつつある幕藩体制)なのだということを認識していった。
しかしながら浅野家家臣が主君の元に逝くまでは、徹頭徹尾、忠義を
貫いたあっぱれな忠臣たちの仇討ちとのみ見られなければならない。
そのために、敵も世間も、時には味方にさえも本心を隠し通してあら
ゆることに心を砕いていった。それができたのは、~〈君、辱められ
し時は、臣死す〉~という山鹿流軍学の教え、武士のあるべき姿とし
て内蔵助が大切にしていた言葉があったからである。浅野内匠頭の命
が果てた時、内蔵助の命もすでに亡きものになっていた。
「いとまの雪」には「東下り」も「南部坂の別れ」もないけれど、赤穂
藩における塩田の役割、47人それぞれの動き、寺坂吉右衛門の役割、
江戸、京都、大坂、当時の三都の豪商の幕府を凌ぐ経済力などの世相
がこの著作で大変によくわかった。
嬉しいことに矢頭右衛門七さんも登場するし、舟木さんの新橋演舞場公演
「忠臣蔵」のシーンを想い出し、重ねながら、大石内蔵助の男子の力量あれ
ばこその320年続く日本人の物語、伊集院氏のフィクションを楽しんだ。
「千住真理子 トーク&コンサート」
杉並区の文化活動の一環として、2月は千住真理子さんのトーク&
コンサート、3月は野村萬斎さん父子の狂言の世界が楽しめるよう
です。
いつまでも愛らしい真理子さんも、もう還暦を過ぎておられるのだとか。でも
私の心の中ではずっと可愛らしい天才少女のまま。スリムなお身体で、聴けば
誰でも知っているお馴染みのクラシックやお兄様(千住明氏)の曲などをたっ
ぷりと聴かせて下さいました。
素敵なピアノ伴奏と愛用のストラディバリウスで、バレンタインディにちなみ
エルガーの「愛の挨拶」やリストの「愛の夢」など「愛の曲集」を揃えたメニ
ューでした。気取らない「家庭音楽会」に招かれたような心温まるコンサート
で、休日の午後に素敵な時間を過ごすことが出来ました。
NHK大河ドラマ「光る君へ」
平安時代、貴族のお屋敷に住まう姫君は薄暗い帳(とばり)の向こう、十二
単衣に黒くて艶やかなロングヘアの大垂髪(おすべらかし)、引目鉤鼻を美人
の条件として、殿方から寄せられてくる歌を頼りに暮らしていた・・・
という先入観から離れられずにいるものだから、毎回の展開には目を見
張るばかり。それでも紫式部だけではなく、平安貴族の暮らしをもっと
知りたいとの好奇心が勝り、「『光る君へ』完全読本」まで買ってしま
いました。
たくさんの写真や資料で、平安時代へのタイムスリップが楽しめます。
弥生3月まで、もう少し春を待つ如月の日々を楽しませて頂くことと致
しましょう。