舟木一夫 特別公演 通し狂言 『 忠臣蔵 』
2017.12.2(土)~12.24(日) 新橋演舞場
後編 雪の巻
まとめ(10)
<第四場> 南部坂浅野家
「雪の別れ」 (元禄十五年十二月十四日。雪)
B 表 (続く時刻。雪)
C 再び、仏間 (夜更け)
キャスト
千坂 兵部 : 里見 浩太朗
内蔵助が南部坂浅野家の門を出ようとするところへ、千坂兵部が近づいて来た。
家来に先に行くよう指図し、兵部との再会となる。
(内蔵助) ご苦労なことにござるのう、 この雪の中を。
(兵 部) 顔を見ないで将棋をしているようでな、話の種に赤穂のご家老の顔を
拝みに参った。
(内蔵助) これでよければ、たんとごろうじろ。
(兵 部) 懐かしいのう。
(内蔵助) まことに。
ところで、祇園の茶屋に刺客を送り込んだは、そこもとか。
(兵 部) そのような野暮なこと、、、あれは、我が殿の勇み足じゃ。
(内蔵助) で、ござろうのう。
(兵 部) が、しかし、これから後はそうは参らぬ。
いつ、どこで襲われるやも知れぬぞ。
犬死をさせとうはない。
今からでも、遅うはない。
つまらぬ義理立てはせぬことだ。
(内蔵助) つまらぬかどうか、この胸次第。
(兵 部) おぬしと戦いとうはない。
それにしても、不思議な縁(えにし)よのう。
(内蔵助) 神様も、随分と意地の悪いくじを引かせて
下されたものじゃ。
(兵 部) どうしても行くのか。
(内蔵助) 心のままに。
(兵 部) 引き返せぬのか。
ともに学んだ山鹿流の軍学。
勝てぬ戦(いくさ)はせぬものじゃ。
吉良を討つことは、上杉との戦い。
我が殿は、必ず兵を繰り出すであろう。
50にも満たぬ数で、どこに勝ちの戦(いくさ)がある。
(内蔵助) はてさて、、。
今夜は積もりそうじゃ。
赤穂で雪が降ると、我が殿はまるで子供のように
雪合戦をしたがってのう。
雪国のおぬしには分かるまいが。
(兵 部) 米沢では、一夜にして一間積もることも、珍しくは無い。
おぬしに、一度米沢の雪を見せてやりたい。
どうじゃ、浪々の身じゃ。
いっそ、米沢へ来ぬか。
(内蔵助) さて、それもよかろう。
命あらば、またお目にかかる。
(兵 部) 戦さ場ではなく、、。
(内蔵助と兵部、すれ違う)
(内蔵助) 兵部殿
花道より内蔵助を見て
(兵 部) 内蔵助、友とはまことに良きものじゃ。
(内蔵助) さようにござりますなぁ。
(兵 部) 負けぬぞ。
(内蔵助) ごめん。
互いに、頷きあう。
内蔵助、浅野家屋敷に手を合わせた後、、兵部を見る。
頷く兵部。 内蔵助、雪を踏みしめ舞台上手へ去る。
兵部、花道を去っていく。
C 再び、仏間 (夜更け)
キャスト
瑤泉 院 : 長谷川 かずき
戸田の局 : 長谷川 稀世
桔梗: 川上 彌生
間者の腰元、桔梗が仏間に入り、仏壇に供えてあった巻物を持っていこうとする。
戸田の局が、気付く。
(戸田局) 何者じゃ。 何をする。
曲者じゃ。 出会え、出会え。
そなた、夏から仕えている者じゃな。
誰の指図で紛れ込んだ。
申せ。 申さぬか。
(桔 梗) さ、斬れ。 討て。 討たぬか。
(戸田局) 引っ立て。
(瑤泉院) 何事です。
(戸田局) 申し訳ございません。
どこぞの間者が腰元に紛れて。
(瑤泉院) わが身に隠しごとなど無いものを。
(戸田局) 先刻、内蔵助殿が、殿にお供えを
して参られました。
(戸田局) お方様、仇討ちの連判状。
(瑤泉院) 何たる身の不徳。
内蔵助。 内蔵助、許してたもう。
許してたもう~。
(戸田局) 内蔵助殿、、内蔵助殿、、、
お許しを、、。