「 京の恋唄 」
作詞: 西條八十
作曲: 竹岡信幸
1969年(昭和44年)2月
「永訣の詩」B面として発売
♪ 好きだけど~
たまらないほど好きだけど
あなたは 可愛い薄羽の蝶々~
~ ~寂しく見上げる嵐山 ♪
♪ さやさやと~
嵯峨野の青竹風に泣く~
あなたの来ない日さみしい夕べ~
~ ~悲しく見送る 京の秋
♪ 恋 哀れ~
残るあなたの 置き手紙
抱けば仄かに袖の香 香る
~ ~ 若い日さみしく 鐘が鳴る
前回の「蝶の羽」との関連で「京の恋唄」を、、、
この曲には京情緒たっぷりに「蝶の羽」が登場する。
当初B面として発売された「京の恋唄」。最近のコンサートで和服を着て歌われたことが
あるような気がするのだが。50周年記念プレミアムBOXDISC4に入っているのが嬉しい。
西條八十さんの京情緒が溢れ出る見事な詩
嵐山、嵯峨野を舞台にしたロマンの香り高い恋物語
舟木さんは繊細な情感を込めて、大詩人の醸し出す香気を端正に品よく表現される。
ただ、40年以上も前の曲だから、可愛い薄羽の蝶々のイメージに合う女性が今いるか
どうか・・・
まして置き手紙を残してお別れをするかどうか・・・
しっとりと嵯峨野の情緒を味わい、 嵐山を背景に渡月橋を渡り、 桂川の清流を目に
したいものだが、 残念ながらそんな古都の恋は、 今や舟木ワールドの中だけかも知
れない。
「京の恋唄」に冬のシーンはない。
「薄羽の蝶々」のあの人は、秋の深まりとともに置手紙を残して去っていった。
置き去りにされた心は行き場なく、 燃えるような嵯峨野の紅葉のなかに一人寂しく立
ち尽くすのみ。
錦秋の京の秋は余計に侘しさが身に沁みる。
やっぱりあの人は「薄羽の蝶々」、冬になる前に儚い蝶の一生を終えてしまったのだ。
舟木さんがコンサートのトークでよく言われるのは、
”今、流行歌の中で抒情歌系と言われる歌がすっかり姿を消してしまった”ということ。
「京の恋唄」を抒情歌といっていいのかどうか解らないが、西條八十さんの詩の内容なら立派に
これこそ抒情歌といえるように思う。
流行歌の中で抒情歌系がなくなっている!
自分の感情を乗せて歌を歌い、若い時代を過ごしてきた私たちにとってはもちろんであるが、
歌い手である舟木さんにとっては、もっと何倍も残念なお気持ちが強いに違いないと思う。
由紀さおりさんのアルバムをきっかけに、その頃の日本の歌謡曲を再評価する機運もあるよう
だが、 今(私たちに)歌詞が沁みてくる曲は本当に少なくなった。
だからこそ、舟木さんの押し付けがましくない歌唱の「明日咲くつぼみに」に期待を寄せてしまう。
もっとたくさんの人たちに歌ってほしいものだと。