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ブローチ「シルフィード(風の精)」 箱根仙石原の広大な敷地の奥にゆったりと美術館が建っている。
フランスのガラス工芸作家、宝飾デザイナー
ルネ・ラリック(1860~1945)の作品約1,500点を所蔵、230点を常設展示。
お目当てはブローチ「シルフィード(風の精)、あるいは羽のあるシレーヌ」
ラリック美術館の紹介では必ず目にする、透きとおるような羽の繊細な作品。
電車の中刷り広告で目にする度、どんなに美しい輝きを放っているか、一度は見にいきたいものと
数年間思い続けていた。
そしてその透きとおった羽は、ラリック代表作の工芸品として存在を主張し、最高の場所に展示され
ているに違いないと思い込んでいた。
静かな館内の展示作品を捜しながら見ていったが、、、係りの方に尋ねるまで探し当てられなかっ
た。
繊細な羽は、2F展示フロアを出て通路にもなっているスペースのガラスケースの中にひっそりと
身を潜めるようにして止まっている5cmほどのブローチだった。
しかしこれは蝶の羽ではない。
風の精シルフィードがうすぎぬを纏い、艶めかしく身をくねらせている背からでている羽である。
華奢な身で、身体の何倍もある羽を背負う風の精は、七宝焼きの技法らしいグリーンの羽模様に
シフォンの衣とダイヤの輝きで身を飾る。
小さな風の精。繊細で薄い透きとおったその羽は、今にも自らおこした風に吹き飛ばされそう
である。
かつては、このブローチを胸に飾った女性もいたことだろう。
グリーンの羽模様の光沢と小粒のダイヤの強い輝きが、ひときわ人の目を奪っていたに違いない。
ラリック美術館の作品は「風の精の羽」であった。
しかし、どうしても連想してしまう舟木さんの自作曲がある。
「序曲だけのコンサート」
上田成幸作詞・作曲 杉村俊博編曲
「WHITEⅢ」収録
「WHITEスペシャルセレクション」収録
♪ ~愛はいつも 風の中に
遊ぶ蝶の 羽のいろ~ ♪
♪ ~愛はいつも 棘の園に
招く薔薇の 甘い吐息~ ♪
「京の恋唄」の中にも ♪~あなたは可愛い薄羽の蝶々~ と 「 蝶の羽 」 はあるのだが、
風の精がまとう(蝶のような)羽なら、断然この曲だろう。
杉村さんの編曲が凄い。
コンサートで歌われるときのアレンジは、他の曲とのバランスがあるから、この曲だけ異質
なほどクラシック調というわけにはいかないが(ファイナルコンサート2001DVD)、CDでは
前奏、後奏がまるでクラシックの趣。
ピアノが強く華やかに幕開けを告げた後、弦が華麗に一気に音の階段をかけ下りてくる。
きらびやかに流麗に、、、そして
その最高潮に達した煌きが一瞬にして止まった時、舟木さんの歌声が静かに聴こえてくるのだ。
♪ さらば 愛よ~ 還らぬひとよ~♪
羽ばたく蝶の羽のいろを
風の中に見ることもなく
実を結ぶことなく散っていった
愛の夢
恋の第一幕は開くことなく幕を閉じ
序曲だけで終わってしまった愛の恋歌(うた)が
炎の記憶をこの胸に刻む
この歌は小さな恋歌(うた)の棺
あなたに届けるすべもないままに 永遠に輝く愛は闇をさまよう
歌わずにはいられない
序曲だけの愛の恋歌(うた)
この小さな恋歌(うた)の棺を
薔薇の 甘い吐息とともに
届けたい あなたのもとへ