夜光珠のおんな | サズ奏者 FUJIのブログ

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夜光珠のおんな


ひとつかみの夜をしのばせてわたしは女に逢いに行った。そこは色とりどりの石がちりばめられた広い海の波打ち際で、わたしはいつものように女の指先をみていた。「死んでしまったのよ、夜が」おんなははらりと髪をといた。髪の間から緑色の珠が零れ落ちた。そんなはずはない、たしかにここには夜が。わたしはポケットをまさぐった。するとそこにはひからびた魚が目を開けたまま眠っているだけだった。女の髪は真砂のように光に反射した。「どの色がお好き?」おんなはてあたりしだいに色を取り出してはわたしの体にふりかけた。遠ざかる汽笛の音を聴きながらわたしは、おんなの秘密の通路を探していた。きがつくとそこは鉄板の上で、わたしの上に何か熱いものが流し込まれると、すぐ近くで聴いたことのない外国の言葉が聞こえた。わたしは家を出てくるときにガスストーブのスウィッチを切ったかどうか急に気になり始めた。