インタヴュー | サズ奏者 FUJIのブログ

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SAZ  神秘なる野性 憑依したる反逆 猥雑な理性 
SAZ  それは特定の楽器ではなく ある種のどうしようもない生きかたのことである



 Q:サズは何処の楽器ですか
A:トルコだよ。きまってるじゃねえか。
Qトルコでは何語を話してるんですか
A:何語って、おいおいあんた、肉屋ではなにを売ってますかみてえないい質問だ。おれに質問する前に地球の歩き方くれえ読んどけよ。
まあまあ、これは公式インタヴューなんですからもうすこし親しみやすい感じでお願いしますよ(主催者わってはいる)
A:はいはい、わかりましたよ。気仙沼さん。
Q:サズを始めた動機は?
A:当時おれはすべてに絶望していた。生きてることにも、死ぬことにも、くそしてけつの穴拭くことにさえもな。
主催者:またあ、FUJIさん、言葉に気をつけてください、これはあくまで公式発表なんですから
A:わかったよわかったよ、まあ、その頃おれは学生時代から独学してたフラメンコギターに、なんとなくしっくりいかねえもんを感じてた。おれの求めてる音はもっとギトギトしてて、腹にぎんぎん来るような、それでいてスカーンとどっか違う世界にいざなってくれるような、そんな音だった。そしたらあんた、あったんだ。このサズがな。
Q:なんかもっと、理路整然としたお話しがきけるものと想ってたんですがねえ。それではサズという楽器について説明してください。
A:古くはコプーズと呼ばれていた。トルコやイランや、コーカサス地方の吟遊詩人の弾き語りに使われたものだ。吟遊詩人はウザーンとよばれた。話をつなぎ合わせる人、という意味だ。要するに、詐欺師だな。うめえ話をでっち上げて夢や希望を売って商売する。ときには片手に銃を持って山野を駆け巡る、義賊の親玉みてえなつわものもいた。ウザーンの役目はいろいろあってなあ、恋の仲裁、揉め事の調停、結婚式や各種イベントの盛り上げ役。とまあいろいろだ。彼らの語る英雄伝説や、こいものがたりは村の女たちのひとみを涙であふれさせたもんさ。アイシェ、シーリーン、ファトゥマ、ゼイネップ、ギュル、イムラーン、ネスリーン・・・・ああ、俺もあの頃に生まれてればなあ・・・・
主催者:FUJIさん、FUJIさん、きいてますか。
A:おお、すまんすまん、質問は楽器についてだったな。えーこれはペルシャのセタールから派生した楽器のひとつでして、胴体は栗や桑や柳の木でできており、竿はマツを使っている。反響板はカナダマツ。ここに、スチールや銅巻弦を3コース複弦で張り、チューニングは上からソ、ド、レ。通常は下のコースでメロディーラインを引き、中と下のコースはドローンのようにかき鳴らす。まあ、こんなところでいいだろ。
Q:トルコ音楽にはどんなジャンルがあるのでしょう
A:よくしらねえが、伝統的には音楽にも金持ちと貧乏人の音楽があってな、宮廷の楽師や女奴隷がスルタンの御膳で演奏していたのがウードやカヌーンなどを使ったアラビア起源の音楽、サナートだ。旋回無踊で有名なメフレヴィ教団の典礼音楽やベリーダンスもこの系列だ。貧乏人の音楽はいわゆる民謡テュルクで、村の集会や結婚式で演奏されていたものさ。太鼓や笛、ラッパでがんがんやるやつ、サズもまあ、そっちの一派だわな。サナートとテュルクは交わることのない別世界の音楽で、使われる楽器も違っていた。例えば伝統的にはサズでサナートを演奏することはなく、ウードで民謡を弾くこともなかった。だがまあ、今となってはなんでもありだな。
Q:トルコ民謡について教えてください。
A:そもそもトルコ民謡のことをトルコ語でテュルクというんだが、これはトルコ人に属するもの、つう意味でな。共和国成立以来トルコはアタテュルク指導のもと国粋主義にまい進し、サナートはアラブペルシャ起源の遅れた音楽とされ、民謡こそがトルコ人本来の素朴で純粋なおんがくとされ、やたらサズがもてはやされた。だがな、トルコ人本来の音楽といっても、先住民であるクルドやアルメニアやギリシャ人の民謡が言葉だけトルコ語に置きかえられたものもたくさんあってなあ。つまりトルコ民謡はいろいろな素材がごちゃ混ぜになったカルカッタの牛肉カレーみてえなもんだ。
Q:その、カルカッタの牛肉カレーというのは
主催者:ああ、すいませんあんまり気にしないで、また例のでまかせですから。つづく