青森市コンパクトシティ政策と佐々木市長 | 不動産鑑定士、長濱 宏昭の平凡なる日々

不動産鑑定士、長濱 宏昭の平凡なる日々

世界70カ国以上を放浪した元バックパッカー。今は宮崎県都城市で不動産鑑定業を営んでいます。旅行・登山・政治学・業界ネタなどを気ままに綴っています。

 佐々木誠造元青森市長が豪雪対策として、街づくりの中心に据えたコンパクトシティ構想。当時、除雪・排雪費用で10億円を超える費用が発生していたという。街が拡大分散すればするほど、道路延長が伸び、この費用は更に大きくなってゆく。雪国はこういった費用が毎年発生するが、道路延長が伸びれば管理費用が積みあがるので、雪が降らない地域であってもその維持更新費用は大きくなる。無関係ではない。

 青森市は都市計画上、区域区分が設けられており、市街化区域と市街化調整区域とに区分されている。市街化調整区域は市街化を抑制する地域であり、原則建築、開発行為は禁止されている。よってかかる制度が設けられた都市では市街地は基本的には拡散しないはずである。しかし、青森市は調整区域の規制緩和、特例制度によって市街化調整区域にも開発がなされ、街は郊外へと拡散していった。なお、このような制度の緩和、抜け目を利用した開発は青森市に限ったことではない。 

 同時に、旧来からの市街地においてスポンジ化が進むという問題も生じた。確かに、昨日と今朝青森駅周辺を散策したが、活力があるという感じではなかった。一方、郊外型の路線商業地域は大型店舗が建ち並び、賑わっている。このような問題は多くの地方都市が抱える問題であり、似たような光景を不動産鑑定士という職業柄日本全国で何度もみてきた。これから次々と高度成長期に整備された旧来の市街地のインフラの更新を迎えるなか、公共投資と負担のあり方も重い問題となろう。

 青森市は中心市街地再開発事業で躓き、コンパクトシティ政策の失敗例のように言われている。しかし、街づくりは少なくとも20年以上の期間で考えなければならず、佐々木市長の構想が途中で途切れてしまったのはもったいないことだ。

物事を各種プレーヤー達(政治家・地権者・開発業者・一次取得者)は短期的に考えてしまう傾向にある。この短期的思考は各自には部分最適をもたらすのだが、長期的思考でみると、全体最適は著しく棄損されてしまう。ある意味、将来世代への負の転嫁であるが、その点はあえて考えないか、気づいていたとしても口をつぐんでしまっている。

 リーダーシップを発揮し、全体最適を考える政治家の登場を期待したいところだが、残念ながら、このような視点に立つ政治家は佐々木先輩くらいしかしらない。

参考文献:「都市経営」 まちづくり人づくり意識づくり