1月15日は宮中歌会始。今年のお題は「生」、来年は「光」だそうな…。
宮内庁HPによれば、鎌倉時代中期、亀山天皇の文永4年(1267年)1月15日に宮中で歌御会が行われていて、『外記日記』にこれが「内裏御会始」と記録されており、歌御会始の起源は遅くともこの鎌倉時代中期まで遡ることができる、とあります。
宮内庁HPによれば、鎌倉時代中期、亀山天皇の文永4年(1267年)1月15日に宮中で歌御会が行われていて、『外記日記』にこれが「内裏御会始」と記録されており、歌御会始の起源は遅くともこの鎌倉時代中期まで遡ることができる、とあります。
この歌会始を意識したのか、季節としては「夏(他流は四月)」に分類されるこの曲が、年の始めの月並能の二曲目に演じられました。ワタシにとっては初見のお能。期待にワクワクです。
宮中歌合せの会で大伴黒主は、小町の詠んだ歌は古歌であると申立て、万葉の草紙を差し出す。小町がそれを洗ってみると黒主の入れ筆であったことが分かる。小町は恥じ入る黒主を慰め、和歌の徳を賞して〈中ノ舞〉を舞う。 三番目物、季節:夏 ☆社団法人能楽協会HPの曲目データベースより引用☆季節が「夏」なのは、この「草紙洗」中に催される歌会のお題が 「水辺の草」 だからなのでしょうか。
小野小町がシテの曲は何曲かありますが、これを除いてはみな老いさらばえた(←可哀相な小町!)晩年を題材にしており、唯一この「草紙洗」だけが、若く美しい小野小町を描いています。
歌合せは1対1で行なわれ、小野小町vs大伴黒主、というカード、まともに勝負したら勝てないと踏んだ黒主(ワキ)は、何とかして小町を失格にさせようと策を弄する訳です。
歌合せと言えば、岡野玲子の「陰陽師」にも、小町ではありませんが歌合わせのエピソードが描かれていましたね。村上天皇が催した内裏歌合の時の好カード、平兼盛vs壬生忠見、お題は「忍ぶ恋」。
しのぶれど色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで 平兼盛
恋すてふ我が名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか 壬生忠見
優劣を付け難かったこの歌、帝にお伺いを立てた時(その時たまたま)前者の歌を口づさんでいた、という理由で負けとなった壬生忠見は、ショックの余り病気になり死んでしまい、いつまでも内裏を自分の歌をつぶやきながら彷徨うというエピソード。この後内裏は火事になるんですが…。
しのぶれど色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで 平兼盛
恋すてふ我が名はまだき立ちにけり 人知れずこそ思ひそめしか 壬生忠見
優劣を付け難かったこの歌、帝にお伺いを立てた時(その時たまたま)前者の歌を口づさんでいた、という理由で負けとなった壬生忠見は、ショックの余り病気になり死んでしまい、いつまでも内裏を自分の歌をつぶやきながら彷徨うというエピソード。この後内裏は火事になるんですが…。
さて、ワキは家来(狂言方)を連れ、敵情視察にやって来ます。前シテの小町は、唐織着附のいでたちで舞台中央で床机に腰掛け、お題の「水辺の草」を前に歌を思案します。
⇒唐織着附の女って床机を使わないものと思っていましたが、ある程度の身分だと床机に腰かけるんですね~。初めて知りました!
⇒唐織着附の女って床机を使わないものと思っていましたが、ある程度の身分だと床机に腰かけるんですね~。初めて知りました!
蒔かなくに何を種とて浮き草の 波乃うねうね生い茂るらん
この歌を得た小町は退場、黒主はいま盗み聞きした歌を万葉集の草紙に書き写して、小町は万葉集にある古歌を盗作した、と恥をかかせてやろうと画策して、続いて退場します。
で、このシーン、どこかで見たことがあるとずっと気になっていたのですが、ワーグナーの「マイスタージンガー」の第3幕、ベックメッサーがザックスの家に忍び込んで書き付けてあった詩(実はワルターの詩)を盗む、というところにそっくりだということに気付きました。
古今東西を問わず、このテの輩のやることって同じなんですね~。
で、このシーン、どこかで見たことがあるとずっと気になっていたのですが、ワーグナーの「マイスタージンガー」の第3幕、ベックメッサーがザックスの家に忍び込んで書き付けてあった詩(実はワルターの詩)を盗む、というところにそっくりだということに気付きました。
古今東西を問わず、このテの輩のやることって同じなんですね~。
さて、後半は歌会合わせの場、天皇(子方)を先頭に、紀貫之、小野小町(緋大口に唐織)、ツレの歌人達3名、最後に大伴黒主が登場します。いかにも新春らしい、のどかで華やかな雰囲気がいっぱいにあふれます。
そして、小町の歌が貫之によって吟詠され、天皇は「さすが小町」と、この歌を勝ちとしますが、そこへ黒主が「その歌は万葉の古歌である」と証拠の草紙を天皇に差し出します。小町、ピ~ンチ!
そして、小町の歌が貫之によって吟詠され、天皇は「さすが小町」と、この歌を勝ちとしますが、そこへ黒主が「その歌は万葉の古歌である」と証拠の草紙を天皇に差し出します。小町、ピ~ンチ!
しかし、万葉集に納められている7千首もの歌で小町の知らない歌はない(←スゴイ!)と、小町はその草紙を見せ給えと頼み、よくよく吟味します。すると行間やら字体やら墨の色やら不自然!
なので、身の潔白を証明させて欲しいと草紙を洗うことを願い出ますが、許しが出ず、悔しさ恥ずかしさに涙にくれながら去る小町。この辺、本当に小町が可哀相です。このシテはホントにウマイ!(でもワタシの好みとしては、このシテの個性には小町よりももっと別の役の方がハマルと思ってますが…。)
なので、身の潔白を証明させて欲しいと草紙を洗うことを願い出ますが、許しが出ず、悔しさ恥ずかしさに涙にくれながら去る小町。この辺、本当に小町が可哀相です。このシテはホントにウマイ!(でもワタシの好みとしては、このシテの個性には小町よりももっと別の役の方がハマルと思ってますが…。)
その哀れさに紀貫之が天皇に願い出て草紙を洗う許可をもらいます。
でも墨って乾いちゃったらもっとも落ちにくいんで、洗っても落ちないんではないですかね~、とついツッコミを入れたくなるワタシ。
でも墨って乾いちゃったらもっとも落ちにくいんで、洗っても落ちないんではないですかね~、とついツッコミを入れたくなるワタシ。
しかし見事!、黒主が書き加えた歌は洗い流され(このあたりのシテの所作が見事!)、悪事?の露顕した黒主は恥ずかしさのあまり自害しようとします。
小町はそれを優しく止め、大団円となるのでした。
小町はそれを優しく止め、大団円となるのでした。
日影に見ゆる、松は千代まで、松は千代まで…
キリの地謡が本当に美しくのどかに響いて、「翁」で祝福された後をめでたくめでたく舞い納めたのでした♪