いよいよですね、平成26年9月の五雲会!

まり子イチオシの「殺生石」ですが、予備知識はあった方がベター。
お能ってさ、実は目の前で展開するストーリーは単純でゴザイマス。
時間的にも半日未満の出来事なんだけど、その裏に知ってた方がよい情報が…。
だからちょっと予習しといた方が、納得ゆく鑑賞にナルンデス!
それでは…

まず、この画像をご覧下さいませ。
「殺生石」に使われる、前後シテの面と、作り物でゴザイマス。
謡本は(当然ながら)情報の宝庫ですねっ!

この作り物が、那須野の殺生石となりまする。
さて粗筋ですが、まず玄翁和尚(ワキ)が登場、奥州の旅先から都に戻るところ、
白河の関を超え、那須野の原を通りかかりました。
おおっと、大きな石の上を飛んでいた鳥が、落ちたとな!(by 間狂言)

そこへ突然一人の女(シテ)が現れて、その石に近づいちゃダメ、と言う。
なぜならその石は殺生石と言って、近づく物全てを死なせてしまうから、と。
昔、野干の精(白面金毛九尾の狐)が玉藻の前という才色兼備の美姫に化け、
宮中に入って時の帝をたぶらかし禍をなしたが、正体がバレてこの地に逃げた。
しかし成敗されてしまい、その怨念が凝結して石になったのだ、と語ります。
(ここらへんは、シテが舞台中央にじっと座り、地謡が語るようにこれらの内容を謡います。)
そして、実はワタシが昔は玉藻の前、今は殺生石の石魂なの、と告白

玄翁和尚は、ワルは案外本気で改心するもんだから供養しちゃる、と言うと
昼の間は恥ずかしいから、夜になったら本当の姿でまた来ます、待っててね、
と言って、女が一畳台の上の石の作り物の中に入って前半が終わります。
シテは石の作り物の中でお着替え、間狂言が前半をおさらいして、後半です!
玄翁和尚は殺生石に向かって、よぉし成仏さしちゃる、と力強く供養します。
すると石ばパックリと二つに割れて…


観逃スベカラズ!
ここは、ホントにホントに見ドコロなので、絶対に

さあ、後シテの殺生石の正体、野干の精(白面金毛九尾の狐)が登場です~!
待ってましたッ!
後シテは、自らの悪逆非道の過去を(ちょっと省略して

天竺にては
大唐にては幽王の后
我が朝にては鳥羽乃院の、玉藻の前とはなりたるなり
だけど、陰陽師の安倍泰成の祈祷によって正体がバレちゃった。
で、ここ、那須野の原に隠れ住んでいたんだけど、勅命が下って、
(さあ、ここからが力強い舞となります!楽しんでくださいな~。)
三浦の介と上総の介の両名が大軍を引き連れてやってきたのよ。
百日の間、キツネは犬に似ているって、犬を射る稽古をして!
大軍に包囲されて、追いつめられて、射殺されましたっ!
チョ~アタマ来たから殺生石になって、殺生を続けてきたけれど、
今あひ難き
この後悪事を致すことあるべからずと、お僧に
約束固き石となって、鬼神の姿は失せにけり
以上が思ったより長くなった、粗筋でゴザイマス。
で、いくつか補足しなくちゃなりません。
後シテの懺悔が省略と書きましたが、全部挙げるとこんな感じです。
1.殷の
まり子は、高校の世界史の時間に習ったことを、今でもハッキリ覚えてます。
「酒池肉林」はホントに紂王と妲己がやったコトが、四文字熟語になりました。
2.天竺の
千人の王の首をチョン切ってそれをまとめて塚に祀って祈れば、天下は
アナタのものよ、と斑足太子をそそのかした。(それで、塚の神)
華陽夫人って「咸陽宮」というお能で、秦の始皇帝が暗殺されかかった時
琴を弾き歌を歌い機転を利かせて、始皇帝を逃した賢妃と同じ名だから、
敢えて名を出さずに「塚の神」としたのかなぁ、とまり子の考察でアリマス。
3.周の幽王をたぶらかした、
全く笑わない絶世の美女の褒娰(それが手?)と笑顔が見たかった幽王。
たまたま絹を引き裂く音にほほ笑んだので、絹を引き裂きまくった…、とか。
また手違いで上がった烽火に結集した諸侯を見て笑顔になったんので、
有事でもないのに度々召集の烽火を繰り返して(オオカミ少年ですなぁ)
ついには有事に誰も参集しなかった…ので国が滅びたとか。
4.鳥羽上皇をたぶらかした、
白面金毛九尾の狐は、それから遣唐使の帰国の船にちゃっかり乗って
日本に渡ってきたらしゅうゴザイマス。その名が若藻。
平安末期には
ある詩歌管絃の遊びの際、突風により蝋燭が全部消えて真っ暗になった時、
藻女の体が光を放って、まるで玉のようだと以後玉藻の前と呼ばれるように
なったんだとか…。ちなみにモデルは美福門院(藤原得子)だそうです。
もっと詳しくはここに書いてありますので、興味のある方は読んでくださいませ!
http://dic.nicovideo.jp/a/%E4%B9%9D%E5%B0%BE%E3%81%AE%E7%8B%90
その他にも、殺生石を割ったのが玄翁和尚だったので、コレを

ゲンノウと呼ぶようになったとか、
野干を仕留める為に犬を代替として射止める練習したの(←動物虐待!


犬追物の始まりだとか…。
けっこう調べるとイロイロあるもんです!
なので?やっぱりクドクド長くなりましたが、これで予習は万全ですね!
さて何とかここまで書けたので、辰巳満次郎様

辰巳和磨クン

それでは皆さん、宝生能楽堂にてお目にかかりましょう!
チャオ~


どっちのボタンもポチっと押して、辰巳満次郎様


