残暑お見舞申し上げます。
辰巳満次郎先生のメルマガ・アーカイブも第31弾になりました。
この号は、平成22年7月24日に配信いたしております。
どうぞ、お楽しみください。
心より、猛暑

「背中を見せない」とは、つまりは俗に言う「お尻を見せない」という事であります。
能の所作では、お客様に背中、つまり「真後ろ」を極力見せないようにいたします。
これは礼儀としての意味ですが、真後ろを見せる事を演出的に好まない、芸術的に避けるという意味もありましょう。
能舞台上では、位置によって、左に向くか右に向くか、座る時には左膝をつくか右膝をつくか…など色々な作法があり、これはシテ・ワキ・ツレのみならず後見・地謡・囃子方と、諸役ともに徹底されています。
特に江戸期に式楽となってからは更に厳格となります。
雲の上人が御高覧になることもあった為でしょうが、その厳格な所作はひとつの「様式美」となって、能の美や精神性にピタリと来るものでもあります。
現在の伝統文化の主流とも言える能楽・茶道・華道・書道の大成された室町期にもその意識はあった筈です。
それぞれの様式美は全て理にかなった手順・姿(構えなど)であり、対象(神仏・大自然・神霊・お客様・建物…)に対し最大の礼儀・敬意をはらい、尚且つ美しき所作を心掛けている訳です。
「お尻をみせたら失礼ですよ」

という深い意味…
日本の伝統文化にはその精神が大いに示されていますが、現代の日本家庭にも残っている部分があるなら、もっと大事にいつまでも伝わりますように…
辰巳満次郎


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