『「能楽&国楽」公演 飯塚恵理人』 … 能楽タイムズ5月号より転載  | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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まり子です。

この前に記事でのお約束どおり?飯塚恵理人氏の能楽タイムズ5月号に掲載された記事を、ここに転載させていただきます。
じっくり読んで下さいませ。


日韓伝統文化交流「能楽&国楽」公演 ― 辰巳満次郎の韓楽とのコラボ「光明」(ガンミョン)、四月四日、ソウル南山国楽堂 主催:財団法人韓国伝統無形文化財振興財団、満次郎の会。


 韓国での研修中思わずも非常に質の高い能楽の催しを拝見できたので一言報告させて頂きたい。冒頭の「能楽&国楽」公演」がそれで、韓国だからこそできる韓楽とのコラボを含めた能楽公演だった。初めて能を観る韓国人向けに能を観せ、新しい演劇を創造し、かつほぼ満席の観客を満足させた点に大きな意味を持っていた。
 能の演目としては、舞囃子の高砂、半能の羽衣と半能の石橋だった。辰巳満次郎師は神・天女・獅子という登場人物を見事に演じ分けた。能を全く観たことがない韓国の人が観ても、満次郎師が如何に鍛えられた役者であるかが伝わったと思う。地謡三人でも聞き取りやすく、声量も十分だった。囃子方も笛栗林祐輔、小鼓清水晧祐、大鼓山本哲也、太鼓上田慎也というメンバーで、特に石橋の囃子の気迫には韓国の人も感動していた。
 韓楽を僕は初めて耳にした。「トリ・アンサンブル」というグループで、琴(ゴムンゴ)がホ・ユンジュン、正歌(チョンガ)がカン・グォンスン、デグム(笛)とチャング(鼓)がミン・ヨンチ、ピリ(笛)がイ・ソクジュだが、何より音楽としてとても美しかった。
 この公演に来て本当に良かったと心底思ったのは最後の韓楽と能楽のコラボレーションの光明(ガンミョン)だった。
 恋しい人を失って深い暗闇の中にいる女が萌黄地立涌唐織厚板を壺折にして打ち掛け、緋の大口の姿で現れ、恋しい人を失った喪失感を述べる。この女性は生きがいを無くしており、感情を抑えているというのがよく表現されていた。囃子がはげしくなり、上着をとると女性は赤地山道箔、黒地腰巻姿で激しい悲しみの感情を舞で見せた。最後激しい動きから一転舞台に座り、スポットライトが当たった場面で、この女性は悲しみをわすれることは出来ないが、確かに前向きに生きてゆく光明を見出したように見えた。コラボだったが悲しみが美しく表現された詩劇であり、上品な質感はまぎれもなく宝生流の能だったと思う。

光明

 後で満次郎師に教えて頂いたのだが、「光明」の西洋楽器部分は上田益氏作、それ以外の詞章・作曲・演出は満次郎師ご自身とのことだった。二〇一〇年に阪神大震災の慰霊のために作られた能舞だが、韓楽とのコラボレーションとしてはこの日が初演とのことだった。「恋しい人」について、私は「恋人」と思った。
 満次郎師に本曲の意図をお尋ねしたところ、「『恋しき人』は観る方の想像に任せた、老若男女不定としています。夫、恋人、親兄弟、我が子…甚だ恐縮ですが、被災した方への希望の為の曲であります。イタズラに、かさぶたを剥がす為ではありません。」と、お返事いただいた。あの場にいた圧倒的多数の韓国の方が「恋しい人」をどのようにとらえたか尋ねてみたい。




能楽タイムズ上では一行12字なので特に改行がなくても問題ないのですが、ブログ上ではそれだと読み辛いので、適宜、改行(と写真)を入れさせていただきました。
「光明」の写真は2010年の初演のチラシのものです。


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