四月はね、やっぱりコレにしました! 「八島」 | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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まり子です。
既に挫折しそうなこのシリーズ…、当初は「小袖曽我」にしようと思ってたんですけど、機を逸してしまいましたので、「八島」にすることにいたしました。
それも当日記事をアップするというテイタラク…

さて、企画公演「時の花」も二回目。
一回目は事前の宣伝不足もあったので、良い公演だったのに見所が今ひとつ物足りなかったのですが、きっと今回は見所も満席になるのでは…、と期待が膨らみます。

今回カップリングの狂言「樋の酒」はどういう風に「八島」と繋がるんでしょうね~。
他のシーズンの狂言は能との組み合わせに納得がゆくのですが、これだけ謎?です。
太郎冠者&次郎冠者がお酒飲んで宴会?するときに「八島」でも謡うのかな~。

とそれはさておき。
今回の目玉は「八島」の間狂言が「奈須与市語」であることです!
宝生流の「八島」には小書(特殊演出)はありません。
だから、まり子もお能の間狂言としてこれを拝見?するのは初めてです。

今回は和泉流なので「奈須与市語」ですが、大蔵流では「那須語」となります。
来月の「和の会」公演の番組として組まれていますから、やっぱり今回と合わせて観ていただくのがオススメであります。

狂言方の重い習い物として独立して演じられることが多い「奈須与市語」ですが、初めてその存在を知ったのは、NHKの伝統芸能番組で、でした。

これは屋島の戦いの時のお話。
海上の平家方より扇を立てた一艘の舟が漕ぎ出てきます。
船にはに美しい(と思われる)平家の官女がひとり、しきりに手招きを…。
「カモ~ン、この扇、弓で射ってみよ」
おおっ、これは平家による源氏への挑発だぁっ!

ここで受けねば源氏の名が廃る。
これを受けて立たんとて、源氏の御大将源義経は、後藤兵衛実基の献策により、弓の名手・奈須与市宗高を召し、扇の的を射ることを命じるのでありました…。

このエピソードを狂言方一人で語るのであります。
登場人物は三人。
これを一度も立たずに人物によって位置を変えたり、けっこう激しい動きを伴うもの…。
どうぞお見逃し無く!
そして見事、扇を射抜いた奈須与市宗高を労う義経がかけた言葉にご注目!なのです。
キーワードは「乳(チチ)」でございます。


さて本体?の能「八島」について少々書かねばなりません。
今回のおシテ様は武田孝史師。
長身で涼やかな端正さが魅力のおシテ様です。
辰巳満次郎様もそうだけどさ、長身の方が「八島」をする度につい、
「小兵じゃないし!」
と心の中で密かにツッコミを入れているまり子でありますが、史実でも源義経は小男であった、と言われてますね。
この「八島」の後半でも、弓流しのエピソードで語られています。


その時兼房申すやう 口惜しの御振舞やな
渡辺にて景時が申ししも これにてこそ候へ
たとひ千金を延べたる御弓なりとも 御命には代へ給ふべきかと 
涙を流し申しければ判官これを聞し召し いやとよ弓を惜しむにあらず
義経源平に弓矢を取って私なし 然れども佳名は未だ半ばならず
さればこの弓を敵に取られ 義経は小兵なりと言われんは 
無念乃涙次第なるべし よしそれ敵に討たれんは
力なし義経が運の極めと思ふべし
さらずは敵に渡さじとて 波に引かるる弓取乃名は末代にあらずやと
語り給へば兼房さてその外の人までも皆感涙を流しけり



ね、ツッコミたくなる気持ちもわかるデショ?

でもそんなことは関係なく、カッコいいんですよ。
義経による義経の為の義経の能、が「八島」なんですから。
お能のあちこちに顔を出していながら、一番華やかな時を誇らしげに語る、唯一のお能なんです。

ここで粗筋をザクっとご紹介。(宝生会HPのをマルマル引用)


旅の僧が八島の浦で老若二人の漁師に出会う。①老翁は源平合戦の模様を語り、自分が義経の化身であると仄めかして消え去り、②その夜夢の中に霊となって現れ、③修羅道の苦しみを再現します。修羅能の大作です。


ははは、これまたなんのこっちゃ、ですね。
しかし今回も番号をふったところが、特に注意していただきたい、みどころききどころなので、ゴザイマス。

①では、老翁(ツレ)が床几の腰掛けて、八島の戦いの悪七兵衛景清と三保谷四郎の一騎打(錣引き)の話をまるで見てきたかのようににひひ語ります。これ、前半の山場です。

錣引

ところで、まり子の「八島」好きの原点はNHK大河ドラマの「源義経」であります。
それも最初のバージョン。
尾上菊之助(現・尾上菊五郎)が主演で、まあ、そのりりしいこと!
幼なゴコロに恋しておりました…。(今でも?)
だから、義経は小兵なんかじゃなくて、カッコよければええんです。

-義経@尾上菊之助

②の部分が、最初に紹介した「弓流し」の場面。
ここは後シテなので、りりしい武者姿で現れた義経が床几に腰をかけた状態で語ります。
ってか地謡部分なんですけど、今回も地謡には辰巳満次郎様がおいでになる精鋭メンバーですので、聴きごたえ満点の迫力ある謡になるにちがいありません。

そして③ですが、これに限っては修羅道の苦しみを再現しているようには思えません。
義経にとっては輝かしい栄光の記憶なのです。
むしろ嬉々として修羅道に居続けているように思えてなりません。


今日の修羅の敵は誰ぞ なに能登守教経とや 
あら物々しや、手並は知りぬ 思ひぞ出づる壇乃浦の

その船戦今ははや、その船戦今ははや、閻浮に帰る生死の
海山一同に震動して 船よりは閧の声
陸には波の楯
月に白むは
剣の光
潮に映るは
兜の、星の影
水や空 空行くもまた雲の波の 
討ち合ひ刺し違ふる 船戦の駈引き 
浮き沈むとせし程に 春の夜の波より明けて 
敵と見えしは 群れ居る鴎
閧の声と聞えしは 浦風なりけり高松の浦風なりけり 
高松の朝嵐とぞなりにける 



ね、微塵も後悔はなさそうです。
そしてそして、まり子が愛してやまない能登守教経サマ!
手並みは知られちゃってるんですが…。

教経@山口崇

この方も義経同様、生き生きと修羅道で今日も戦っていそうですね。

乞う、ご期待ですっ。


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