
だいぶ時間が経過してしまいましたが・・・。
三月から延期となった『春の別会能』のレポートです。
未曾有の震災で世の中が一瞬にして激変してしまいました。
あれから4ヶ月。
いったい、どれだけの人たちに、どれだけの想定外のドラマがあったの
でしょう。
宝生能楽堂の入り口には「春の別会能」の大きな看板。
・・・・万感の思いで参りました。
『春の別会能』平成23年7月24日(日)
能「頼政」金森秀祥
今回、初見です。
旅の僧侶が宇治を訪れた日は、なんと、その場所で源頼政が討ち死にした日と
同じ日だった。つまり、命日です。
むむむ。これって「隅田川」と同じパーターンじゃないですか!
センセーショナルだけど、ありがちな設定?
“頼政”という専用面と“頼政頭巾”に注目してました。
あまり老いを感じさせない、眼光鋭いハンサム(←気のせい?)なお顔立ち。
エジプトのスフィンクスがかぶってるような立派な頭巾です。
ガンダムのシャア専用モビルスーツの様なこだわりの出で立ち(?)です。
頼政は、能「鵺」では鵺退治をした人物なので、もの凄い豪放なイメージで
いましたが、荒々しさより品の良さが勝ってて、正義の味方?みたいな
スマートさを感じました。
床几に掛けて戦の有様をさめざめと語り、立ち上がって勢いよく激しく
立ち回り、最後、自害して果るところ。扇をシュバッと飛ばして、観客に
背中を向けて帰っていき、印象的でした。
修羅物にしては地謡が静かで、全体的にセピア色の昔の時代劇映画(?)を
観てるような印象でした。
能「隅田川」武田孝史
オペラ「カーリュー・リヴァー」は、イギリスの作曲家が能の「隅田川」に
感銘を受けて、作曲したそうですが・・・。
やはり、不朽の名曲ですね。無条件に“泣けるお能”だと思います。
期待してましたが、さすが武田孝史師だと思いました。
“正しい隅田川”を観た感じ。(←正しくないのがあるのか?)
謡も所作も気品があって美しく、心地よい雰囲気。
思う存分泣いていい。といったら変ですが・・・・・
とにかく絶対的な落ち着きがあって素晴らしかったです

ワキの渡守の工藤和哉師は、下町の職人気質のおじさんの風情。
温かな人情味が出てて涙を誘いました。
子方の高橋希クン、塚の中から、最初のかすかに聞こえる声にならない
ような「ナムアミダブツ」が、すごく良かったです。
子供の幻が塚に消えると、悄然としたハコビ。
塚に生い茂る草に、愛おしく手をかざしてなでて、静かにシオル。
ラストシーンは、やっぱりじ~んときます

余韻を楽しみたかったのに・・・拍手は余計でした。
それが、いまいち惜しかった~。
能「道成寺」高橋憲正
※当日の舞台の様子は、まり子さんのレポをご覧ください。超詳しい~。
カウントダウン寸前に、まさかの延期。衝撃だったでしょうね。
なるほどがってんポッドキャストのインタビュー、
延期前と延期後の両方を改めて聞いてみました。
お人柄のわかるインタビューだと思います。
「正直、道成寺、嫌です。コワイっす。」
アバンギャルドな発言。まる子的には超ウケました。
自然体で面白い方だなぁ~と感心しました。
そして、いざ本番は・・・とても落ち着いて堂々とした様子で、
あまり緊張していないように見えました。
むしろ、楽しんでるかのような…余裕?
ご本人は、実は緊張されてたのかもしれませんが、
本当に初めて?ってぐらいの安定感。
助走期間が延びて、メンタル的には2回目だったとか?
今回、初めて鐘を落とす(鐘後見)家元は、さすがに緊迫感が伝わってきました。
事故でも起きたら一大事ですからね。
満次郎先生は、いつものように鐘の番人(?)をしておられ、
やはり宝生のガテン系能楽師?
鐘を見上げる真剣なお顔が、そりゃもうハンパなく怖い!
きゃぁ~♪素敵


シテの唐織はオレンジ地に花柄。めちゃくちゃキューティ

とても似合ってました。
まさか、その可愛らしさが、見た目の緊迫感を与えなかった!ってことは
無いと思いますが。
「まともに出来るとは思えない。」
そんなコメントとは裏腹に、美しい鐘入りでした。
気負いの無さと冷静さは、鍛えぬいたアスリートのようです。
勢いよく幕に消えたとき、無事、終わった~という安堵感がみなぎりました。
異例の延期で、いろいろ大変だったと思います。
2回目のインタビューでおっしゃってました。
「仕切り直しは、体力も気力も結構使うものだとわかった。」
日本が大変な時に・・・演じる側も観る側も、とても印象に残る
道成寺となりました。
道成寺を絽の着物で拝見するとは思ってもみなかったし。おほほ。
この度は、本当におめでとうごさいました




