やっと書きました…、新作能「影媛」を観て思ったこと | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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まり子です。

8月も半ばをすぎました。
今月のまり子のお能ライフは夏休み状態なので、怒涛のお能月間の7月の締めくくりに観た新作能「影媛」について、やっと感想というか思うところを書いてみようと思います。

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なんでコレを観に行く気になったかというと、まり子が観たことあるナマの新作能って、辰巳満次郎様ドキドキの「マクベス」だけなので、他の新作能ってどんなんかな~、と思ったからです。
しかも、観世(大槻文蔵師)と喜多(塩津哲生)が競演するっていうのも話題だったので、初日(7月29日の夜)に参りました。

「影媛」って初めて聞いた名前だったんですが、なんでも日本書紀の武烈記の最初に登場するんだそう。
なので早速日本書紀をゲットして(そこだけ)読んでみました。

日本書紀〈3〉 (岩波文庫)/坂本 太郎

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しかし、当日は日本書紀なんでまだ読んじゃいないので、プログラムを買って始まる前ににわか情報を仕入れました。
ここではプログラムに載ってたまんま、あらすじを以下に書きます。

大和の国・海石榴市(ツバイチ/ツバキチ)の里を訪れた連歌師。今日は歌垣を再現する日とて、にぎやかに男女が集い、滑稽な恋のやりとりを交わしては去ってゆきます。
あとに残った男はこの地につたわる古代の悲恋の物語を明かします…。
仁賢天皇の時代。物部氏の息女・影媛は、平群大臣の嫡男・鮪大丈夫(シビノマスラオ)と深くちぎりを交わしていました。時の皇太子、のちの武烈天皇は影媛に思いを抱き、海石榴市の歌垣に相まみえ、歌の力でその愛を奪おうとします。
しかし鮪大丈夫は詠み勝ち、影媛は太子の求愛を拒みます。怒った太子は大軍をもって平群一族を急襲。乱戦の末、無念にも力尽きる鮪大丈夫。
もはやなす術もない影媛は、喪服を身にまとい、恋人の亡骸をひとり葬ります。その胸中には限りない哀しみがあるばかり。亡き人の面影を胸に、影媛の姿も春霞の果てに消えてゆきます。


正直に告白すれば、まり子はこの日イロイロ用事を済ませなければならず、国立能楽堂に着いた時はかなり疲れ果てていた為、お能の最中に時々激しい睡魔に襲われたせいか、記憶のところどころが抜け落ちております。
なのでお能の感想に定評のある、このお二方の感想をまずはお読みくださいませ。

  →クリコの観能日記「国立能楽堂特別企画公演 新作能 影媛」
  →能 観たまんま「国立特別企画」


ハイ…。お読みいただきましたでしょうか。
それで、まり子の感想なんですけど、ちょっと全体的に「詰め込みすぎ」だったんじゃないかなぁ、と。

なんでも「影媛」のお話は、馬場あき子氏が若い頃読んで忘れられない(ロマンチックな)お話だったとかで、その分(乙女な)思い入れがイッパイ籠もっているようです。
その味付けがかなり甘~くて、しかもメインディッシュばかりがぎゅうぎゅうに詰め込んでありまする。

実際、日本書紀(のその箇所だけ)を読んでみると、この能ではイロオトコになっている鮪大丈夫は、天皇家に取って替わろうとしている平群一族の若頭?のようで、どうも影媛と相思相愛というよりは力づくで自分の妻とした気配があります。
一方の太子(後の武烈天皇)は横恋慕と言うよりは、天皇家の力を強固にするために力ある豪族の物部氏の娘を娶ろうとして、影媛をご指名したのかもしれません。
だからウガって考えれば、鮪大丈夫がそれを知って先に影媛をモノにし、影媛は結果として夫となった鮪大丈夫を愛するようになって操をたてた…、のかもしれませんが、馬場あき子氏の解釈は、影媛と鮪大丈夫の二人の愛は気高くみずみずしく、それを踏みにじった武烈太子は卑劣漢、という構図になっています。
なんか少女マンガ風というか、ちょっと話が平べったすぎないか?と思ってしまった、まり子。

そして、この能にはワキが出てきません。
その代わりを務めるのが、前半の狂言と後半の能を橋渡しする、山本東次郎師の連歌師、という役割。
しかしですね、この連歌師は橋渡しするだけで終わってしまうのです。
ワキのように最後まで見届ける、ということがないの。
それは見所にバトンタッチしたってことなのだろうか…、見所のまり子は???のまま、ときどき気を失ってしまいましたが…。

そして後半のお能は、影媛と鮪大丈夫の二人の愛のメモリー。ガーン
一応夢幻能の形式らしいので、武烈太子は登場せず、地謡との掛け合いでその歌軍(うたいくさ)の様子を再現します。
歌軍の結果、実は影媛と鮪大丈夫がデキていたと知った武烈太子は怒って鮪大丈夫を攻め滅ぼします。
鮪大丈夫が一人で槍で戦う様を見せ、影媛がそれを弔い、哀しみの舞を舞う(で、なぜ楽?)と鮪大丈夫の亡霊が現れて寄りそうように共に舞うのです。(えっ、二重構造?)

ときどき気を取り直して観るまり子は、舞台が美しいなぁ、と思いつつもなんだか釈然としないまま、終わりを迎えました。

辰巳満次郎様ドキドキの「マクベス」は、原作がシェークスピアで物語はしっかりしているし、能にないことはやらないという辰巳満次郎様のポリシーのもと、しっかり夢幻能としての形式を保っていました。
しかしこの「影媛」は、愛を貫こうとする影媛と鮪大丈夫の姿ばかりが強調されていて、なんだかお話としても能としても、形がぼやけているように思えました。

これだけのものを作り上げてるのに、なんだかモッタイナイ感じ…。

前半の歌垣の場面の狂言は良かったし、後半も良いところはイッパイあったので、もうちょっとストーリーにメリハリ付けて整理されてれば、説得力のある一層素晴らしいお能になったのになぁ、と思ってしまいました。

だから、いっそのこと、これを現在能にして、武烈太子をワキとして登場されたらもっと面白いのでなないかと…。
(武烈太子の役は、当然モリツネ師よね!)
たとえば、

・まずワキの武烈太子が登場、影媛を娶ろうと思って歌垣の場にやってきたと謡う。
・歌垣場面の狂言
・ワキの街謡。影媛が来るのが待ち遠しい、とかナントカ謡う。
・シテ影媛とツレ鮪大丈夫が登場。
・三人の歌軍のやりとり。
・シテ&ツレの関係を思い知らされたワキは怒り、ツレを滅ぼさずにおくものか、と謡って退場。
・シテ&ツレ退場、もしくはツレのみ後見座でクツロギ、戦の準備
・この間、間狂言が登場して、ワキがツレを攻め滅ぼす準備をしていることを語る。
・ツレ、舞台で戦の様を表現、力つきて死んだとして槍を舞台に残したままで、切戸から退場。
・シテ、狂乱の態で登場、カケリ→舞台に残る槍を鮪大丈夫の遺体に見立てて泣きくずれる
・シテひとりで弔いの舞を舞って、終わる。


こんな感じ…。
武烈太子と鮪大丈夫の直接対決無くたっていけるもんね。
まあ言うは易しだけれど、あれだけの作品なんだから、二人の愛のメモリーガーンばかりでなく、メリハリつけて欲しかったなぁ、とコンナことを書いてみた次第…。
一般ピープルの天にツバするような戯言でございました。叫び叫び叫び

それにつけても、

まり子は辰巳満次郎様ドキドキの「マクベス」を、
国立能楽堂で上演して欲しいんだいっラブラブラブラブラブラブ



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