プレイバック満次郎、第3弾は「三山」です。
なんでも宝生流と金剛流のみの上演曲だったそうですが、今では観世流でも復曲してます。
これ「ミツヤマ」と読みますのよ。
でも「サンザン」と読んでもいいのかも…。
だって大和三山のお話なんですから…。
香具山は畝傍ををしと耳成と相あらそひき 神代よりかくにあるらし(後略)
チョ~有名な、中大兄皇子が詠んだ、大和三山に擬えてサンカクカンケイのを詠んだ歌、です。
ハイ。
龍田の時にも使ったこちらの地図の下の方をご覧下さい。
耳成山をサンカクの頂点にして、底辺の左(西)に畝傍山、右(東)に天香久山が位置していますね。
標高は畝傍山がもっとも高く198.8メートル、次に天香久山の152.4メートル、耳成山は139.6メートルだそうです。
山の標高から、畝傍山は一番背が高いから「ををし=雄々し」いオトコ、あるいは高嶺の花「ををし=を愛し」いオンナ、と考えてもよさそうです。
まあ、どっちにしても畝傍山は女なんですが、能「三山」は、
耳成山の桂子(女:シテ)
畝傍山の桜子(女:ツレ)
香久山の膳の公成(男:出てこない)
のサンカクカンケイを扱っているお能なのです。
ストーリーのベースに上記の歌や、複数の男に求婚されて困り果てて耳成池に身を投げた縵児[かづらこ]伝説なんかがあるそうです。
さて、昨年11月にNHKで金剛流の「三山」がオンエアされていました。
この時驚いたのが、金剛流では下ニ居するとき、右足を立てるんですね。
宝生は左足を立てますが、右足を立てると、唐織の裾がはだけ易いんじゃないかなぁ~、と思いながら、観てたまり子…。
お能は概ね同じでございました。
そして3月の発表会に、思いもよらず「三山」の素謡(それもシテ!)が当たってしまった、まり子…。
ははは、だから第3弾にこの曲を選んだのよ~。m(_ _;)m
さて、あらすじはここまで読んで下さった方にはうっすら予測が着くでありましょうが、一応簡単にご紹介しましょう。
大原の良忍上人が、融通念仏を弘めようと大和に来ました。
(良忍上人、なんと融通念仏の宗祖です!)
するとお約束の前シテ登場。里女姿の桂子ですね。
女の話によれば、むかし膳公成(カシワデノキンナリ)という男が、耳成山の桂子と畝傍山の桜子の二人の遊女のもとに通っていたけれど、そのうち男は若い桜子の方にしか行かなくなってしまった。
桜子を羨みながら、ついに桂子は耳成池に身を投げてしまった。
なんて憐れな桂子…。私も融通念仏に帰依するので名帳に名前を書いて、成仏できるように弔ってください。
名前は…「桂子」。
え~っ、とは言わない上人。里女は消えてしまいました。(中入)
上人が桂子の霊を弔っていると、まず桜子の幽霊が現れて、桂子の恨みを晴らして欲しいと言います…。
さて、まり子が拝見した辰巳満次郎様の「三山」はツレの桜子を辰巳大二郎サンがなさっていました。
この時まり子はワキ正面の前の方で鑑賞。
後半では、桜の一枝を肩に担いで片肌脱いだツレの桜子がまず登場し、笛の前あたりで橋掛リの方を向いてシテの登場を待つ形になりました。
続いて、辰巳満次郎様♪の桂子が登場、ツレ同様に片肌脱いで桂の一枝を肩に担いで登場します。
コワかったですよ~、桂子。
まり子の位置からはツレの桜子がよく見えたんですが、カワイイ顔の小面が腰がひけて震えてい(るように見え)ます。
敢えて例えるならば、土佐犬に睨まれたチワワ、岩下志麻に睨まれた上戸彩…。
桜子はけっしておとなしい女と言う訳ではないのですが、さすがに岩下志麻、いいえ、辰巳満次郎様に睨まれてしまうと、もう竦み上がって動けないのですよ。
そして「三山」は歌詞もコワイです。
「一つ世に二道かけて三つ山の。」
「あら羨ましの桜子や。又花の春になるよのう。」
「光散る。月の桂も花ぞかし。」
「雪と散れ桜子。雲となれ桜子。花は根に帰れ。」
まり子は毎回、ここで鳥肌が立ちます。
ここからシテとツレは肩に担いだ枝を打ち交わし…、まあ、取っ組み合いのケンカをするのです。
これが終わると、憑き物が落ちたように、いきなり桜子を許しちゃうのです。
思いっきりケンカして、スッキリしたのか、桂子&桜子ともに成仏できるように、上人様にお願いして終わるのでした。
しかし、まり子はなんとなく納得できません。
桂子は桜子を許すふりして、人から見えないトコロをぎゅうっとつねって、
「アンタ、わかってるわよね」
と言ってるんじゃないかなぁ、と見えてしまった満次郎様の桂子なのでした。
コワイ~。
