(その1)では、花見の稚児のことで大脱線してしまいました。m(_ _;)m
さて、先に参りましょう。
橋掛リにずらり、並んだ牛若+稚児達は順番に舞台に入り、舞台を囲むように座ります。
いよいよお花見が始まる訳です。
桜は満開

「今日見ずは悔しからまし花盛り 咲きも残らず散りも始めず」
とあるぐらいパーフェクトな花見日和なのです。
ここで、狂言方によるお花見の余興が始まります。
すると楽しい余興の只中に、シテの山伏が傍若無人に乱入、中央にどっかと
腰を下ろします。
いますよね、こういうアブナイ人。
当然、皆さん気分を害して、出直そうね、と帰ってしまいます。
花見の稚児達も、退場。
登場から退場まで、15分ぐらいかなぁ?
モチロン何もセリフなんかありませんが、小学校に入る前の子供がじっとして
お兄ちゃんの後をついて一定の速度で一定の距離をおいて、行って帰ってくる、
大変なことです。
まあ、これ自体がお客様へのファンサービスみたいな部分で、ホントのお話は
ここから始まるみたいなもんです。
後に残ったのは、山伏と牛若クンのみ。
山伏(シテ:実は鞍馬の大天狗@辰巳満次郎様

「桜の花を愛でようとしただけなのに、なんて心の狭い人達なんだ!」
と自分を棚に上げた独り言!
すると牛若(沙那王)は
「可哀相ですね。桜を一緒に眺めればもうお友達ですよ、一緒に見ましょう」(超意訳)
と声をかけます。
おおまるで小公子セドリック!そのキュートさに山伏はイチコロです。
山伏は「キミはなんで一人残ったの?」といろいろ尋ねます。
牛若クンは
「他の子達は平家の子だしボクは源氏、月にも花にも見捨てられているんです」
と思わずうるっと涙をこぼします。
山伏はメロメロです。
「可哀相にね~、源氏の嫡流の身分なのに。じゃあ、オジさんがイイトコロへ
連れて行ってあげようね♪」
キャ~、危ないっ!?

実はこの危うさもこのお能の魅力の一つなんですね。ふふふ。
山伏は牛若を連れて、あちこちの桜の名所を尋ねます。
(今だったら、ディズニーランドのアトラクション巡りですかね~。)
なんせ正体は大天狗なんですから、そんなのお茶の子サイサイなんですよ。
このシーンでは、観客の皆様は精一杯の想像力を働かせて、山伏の中に
大天狗の姿を見、山伏&牛若の足元には雲があって、空を飛びながら桜の名所めぐり
をしているんだぁ~、っていう風に地謡を聴きながら舞台を見てくださいね。
さてひとしきり、楽しく桜見物をして戻ると、牛若クンは
「こんなボクに親切にしてくれて…。ありがとう、オジさん!
ボク、生きる勇気がわいてきたよ! オジさんのお名前を教えてもらえますか?」
って超歪訳、ですが、まあこんなことを言うのよ。
すると山伏は、
「ふっふっふ。もう隠さなくてもよいだろう。オジさんはね、
本当はこの鞍馬山に住む大天狗なんだよ~」
と正体を明かし、源氏の棟梁たるべきキミに、平家を討伐する兵法を授けよう。
キミにその気があるなら、また明日会おうね、と言ってびゅ~っと雲を踏んで
あの谷の向こうへ消えてゆくのでした。
ここで中入り、シテと子方はお着替えの為、退場します。。第一幕の終了です。
あと2回ほど、続きそうですわ~。
懲りずにお付き合いくださいませ。
まり子