まり子、新作能「六条」を推理する…やっと完結編(後編) | 能楽師 辰巳満次郎様 ファンブログ

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こちらは、不休で普及に励む宝生流グレート能楽師の辰巳満次郎先生♥に「惚れてまったやないかぁ~!」なファン達が、辰巳満次郎先生♥と能楽の魅力をお伝えしたいな~、と休み休み、熱い思いをぶつけるブログです。

前編よりの、つづき。

   ★  ★  ★

地謡:ならば絶対に捕まらない魚になり鳥になるのだ。捕まると見せかけてするりと逃げては悔しがらせる。いつでも深い淀、高い枝から男の様子をうかがっていなくてはならない。

六条:絶対に捕まらない魚や鳥になぞ、なれるものだろうか。

地謡:その昔、竹の中に生まれた姫は月の宮人だった。数多の貴公子が日々押しかけては姫に求婚した。

月の宮人は、これらを退けんとて難題を課す。

石作皇子には仏の御石の鉢、車持皇子には蓬莱の玉の枝、右大臣阿倍御主人には火鼠の裘(カワゴロモ)、大納言大伴御行には龍の首の珠、中納言石上麻呂には燕の産んだ子安貝。
いずれも果たせず、池中の月はさえざえと美しく、魚はその影の中を涼しげに泳ぐ。
同じように、衣通姫に連なる小野小町も、月の宮人に倣い、百夜通いを求めたとか。


六条:深草の少将は、

地謡:高き梢でさえずる鶯に恋をした。鶯を我が手中に収めんと、百夜通うと誓いを立てた。

少将は思う。

夜空に浮かぶあの月は夜ごとに姿を変える。鶯だとて気が変わらぬことがあろうか。
百夜を待たずして鶯はわが懐でさえずるであろうと。
しかし、三度めの月が満ちてまた欠け始めても、鶯は一声も鳴かず、
百夜にもあと一夜届かず、少将は失意のまま、むなしくなった。

小町がそれをどのように思ったのかは、誰も知らない。


或女:いにしえの月の宮人も小町も、あっぱれな生き方ではないか。
私も必ずや心のままに泳ぐ魚や飛ぶ鳥のごとき自由な女となって、決して男には心奪われまじ。


六条:笑止な。それは何も見えなくなる程に、身を焦がす程に人を恋うたことのない女の、傲慢で幸せな夢物語。

地謡:袖濡るる。

急ノ舞 …「紅葉狩」っぽく?

六条:袖濡るるこひぢとかつは知りながら。

地謡:下り立つ田子のみづからぞ憂き。

六条:恋は無上の喜びと底も見えぬ暗闇を同時にもたらす。

地謡:高貴な身と生まれ、それに恥じぬ生き方をしていたのに、まばゆい光の前では何の役にも立たない。

六条:憎や、憎や。まばゆき光は浅ましき我が姿をあらわにした。

地謡:憎き光よ。酷き光よ。わが身を焦がす瞋恚の焔。
永遠に晴れぬ妄執の黒雲。

しかし時には焔おさまり雲間より月の影出ずれば。そのさやけさに浮かぶは忘れえぬ面影。
耳に残るは君の睦言。


六条:恋しや、恋しや、光君。憎や、憎や、光君。

地謡:憎や、恋しや。恋しや、憎や。永遠に繰り返す。
その苦しみと悦びはこひぢに迷う牛の小車…。


六条:みづからぞ憂き。

地謡:今はただ身をそぼつ深きこひぢを迷うべし。その果てには。
泥より出でて泥に染まらぬ蓮の花こそ待つやらん。そなたも早や夢から出でて現に生きるべしとて。
かの人は声のみ残して失せにけり。長き夢路は覚めにけり。


(注)こひぢ…「泥」と「恋路」の掛詞。

   ★  ★  ★

いや~、何とも言えない(切り貼りツギハギの)仕上がりになっちゃいましたね。
当初はここまで書く気はなかったんだけどナ~。だっはっは。

きっと全然!違うと思うけど、大変楽しく遊ばせていただきました。
(一句でも合ってたら奇跡カモ…。)
でもさ、もっと軽く遊べばよかったナ…。お恥ずかしゅうござりまする…。

→原作者サマ、辰巳満次郎様、ゴメンナサイ…m(_ _;;)m

 (でも、本物はどういうお能だったんでしょうね~。知りたい。)

これにて完なり♪

じゃっ d(^-^;)/