「高い窓」 レイモンド・チャンドラー | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.


10月は清水訳の「高い窓」を再読し、今月は村上春樹訳の「高い窓」を初読しました。

何度か書きましたが、チャンドラーの作品って記憶に残りづらくて、
読んだそばから内容を忘れてしまうのです(そういう人がまたかなり多いらしい)
で、この作品もご多分に漏れず・・・でもほかの作品に比べるとかなりストーリーを
覚えていたけど・・・やはり印象なども忘れてしまっていました。
が、先日以前書いた「高い窓」の感想を読んだら意外にも絶賛していたのでした。

そして今2冊を読み終えてもやはり良い作品だな、と思います。
「高い窓」はストーリーもわかりやすいし、マーロウの美学もかなり良いのです。
強烈なキャラクターはあまり出てこないと言われてはいるものの、結構皆エキセントリックと
いうか病的でヘンな人たちが出てくるし、そういう人たちに語るマーロウのその時
その時のセリフがなかなか響きます。
謎解き的な部分も、他のチャンドラー作品よりも楽しめるものだと思います。

さて、清水訳と村上訳です。
私の印象としては、清水訳はモノクロムの映画で、村上訳は総天然色って感じ。
実際、村上訳を読んでいると風景や花の色、人の姿がカラーで浮き上がってきます。
で、(あれ?こんな文章、清水訳にあったっけ?)と思って清水訳を見てみると
確かに同じような単語(たとえば赤い花とか青い空とか)が並んでいるのです。
でもその文章では(私は)色のついた風景を思い浮かべることがなかった、
ということなのですね。

どこに差があるのかわかりません。
文章はやはり似たような日本語訳が使われているのに。
でもきっと村上訳にはどこかに色を感じさせる微妙な単語が隠されているのでしょう。
チャンドラー以外の他の翻訳でも、この色彩の鮮やかな描写は良く感じます。
特に「誕生日の子供たち」が私は印象的でしたが・・・。
それが何ゆえなのか、これから探ってみたいですね。

二つの訳者の作品を読むことは、決して訳の優劣を決めるためではなく
より深く作品を楽しむため、目線をちょっと変えてみるといったイメージです。
あと1冊、ハヤカワポケミスの「高い窓」田中小実昌訳も持っているので
少し時間を空けて、また同じ本に再挑戦したいと思います。






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