「さらば愛しき人よ」 レイモンド・チャンドラー | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.



チャンドラーの1940年に発表された第2作目。再読です。

刑務所から出たての大男マロイとふとしたことから知り合ったマーロウ。
マロイが捜しているのは、逮捕前の恋人・ヴェルマ。
彼女が歌手をしていた店を訪ねてみたものの、マロイが刑務所に入っている間に
店はすっかり黒人専用となってしまっていた。
そしてここで再び殺人を犯してしまうマロイ。

そうそう、マロイよね~と思って読んでいたけれど、後はほとんど思い出せない。
チャンドラーの小説はいつもそう。
「長いお別れ」だけいは、さすがに他とは読み返した回数が違うのでほぼわかるけど、
なぜだか他の作品はあいまいなのですよね。

多分、ものすごく印象的なストーリーというわけじゃないからだと思いますが、
そう感じながらもなぜ読むのか・・・と問われれば、やはりストーリー以外の
美学みたいなものが好きだからということになるでしょうか。

時代が時代だけに、黒人はもとより東洋人やインディオに対する白人たちの
意識もはっきり見えたりして。
差別などという感覚ではない・・・そもそも同じ土俵上の人間として
考えられていなかったんだな、ということを今回はいくつかの表現から特に感じた。
全然バカにしたりしているわけじゃないし、まったく悪気がない。
もう普通なの、白人以外が劣等であることが。

そうねえ、以前私の好きなレイ・ブラッドベリが「日本が大好きだ。ぜひ日本も
アメリカの属州になるべきだ」と心から言っているのを読んだ時と同じ印象かな。
なんというアメリカン!心の痛みも感じていない・・・彼らにとってはごくあたりまえの
感覚らしく、そこが私にはへええ、って感じだったけど、同時にそういうものだったのかと
単純に思っただけで不快にはならなかった。


原題は「Farewell My Lovely」。
今回読んでみて、lovelyと呼ばれる対象は複数考えられるかなと思った。
無難なのは、マロイからヴェルマかもしれないけれど、
マーロウの立場から、アンやグレイル夫人に言えなくもないかな。


・・・それにしても毎度のことながらハードボイルド小説の感想は書きづらい。
あらすじを詳細に書くのも無粋だし、本当に毎回困っているので
何か共通ポイントさがして、毎度それをメインに書くと良いのかもね。

次は順番から行くと「高い窓」ですが、同じ作品を村上春樹が翻訳した
「さよなら、愛しい人」をどんな感じかな?と手に取ってみたら
そのまま抜けられなくなってしまったので、同じ作品を訳者違いで読むことにします。





今回は清水俊二さん訳のもの。この方の翻訳はなじみがあるからというだけでなく、
実際とても良いと思う。
特にこの作品のタイトル「さらば、愛しき人よ」は秀逸だと思う。



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映画にもなりましたね。


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