「ベンジャミン・バトン」フランシスコ・スコット・キー・フィッツジェラルド | MARIA MANIATICA

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ASI ES LA VIDA.



見ていない映画の原作だわ・・・と思ったら、フィッツジェラルドの作品だった。
びっくりして買ってしまった・・・短編集でした。

80ページ程度のこのお話を、どのような脚色で映画にしたのかわかりませんが、
原作は淡々とした作品です。
読み手によっては(ふぅん)で片づけてしまうこともあるかなと思う。

老人の姿で生まれてきたベンジャミン。
産院の医師にも看護婦どころか両親からも疎まれて育つ。
時代的に仕方ないことかもしれないけれど、親までがこれでは・・・
ちょっとやるせないですね。

年を経るごとに若返っていくベンジャミン。
ベンジャミンの若返りは、見かけだけでなく思考力にも作用していたので
父親と同世代になった時には父親との距離を縮めることになるが、
その逆に妻との隔たりは大きくなるばかり。
同じものを似通った感覚で見ることができるか否かは
人間関係が継続するかどうかの要なのかもしれません。

悲劇的な描きかたはされておらず、本当に淡々と書かれた小説。
SFのようなファンタジーのような。
でもこういう世界で描かれることで、本質を突いてくるような気がします。

「レイモンドの謎」
ミステリー。フィッツジェラルド13歳の時の作品だそう…驚き。

「モコモコの朝」
犬の視線で書かれたお話。悪くはないのかもしれないが、
こういう甘々な翻訳文は私の好みにはあわないなあ。

「最後の美女」
「ダンスパーティの惨劇」
う~ん、途中までは悪くはなかったけど、私にはこの作品に
あるのかもしれない深いものが読み込めないみたい。

「異邦人」
これは好き。先日読んだカポーティの「叶えられた祈り」を
構成するパーティピープルの誰かの生活様式例みたい。
でも最後が前向きなのか、後ろ向きなのか・・・よくわからない。

「家具工房の外で」
娘と同じものを見ながら、物語を紡ぐ父親。
でも娘は娘なりの物語を作っているのを目の当たりにすることになる。
平和な家庭のいずれくる行き違いの暗示??

全般的にわかりづらかったかなあ。
というかアメリカ文学はカポーティなど一部を除いて、
大抵私はこういう印象を持つことが多い。
感想を書くという作業に、ほかの国の作品の何倍も時間がかかる。
かかる割にはろくなことが書けない。

今回は解説を読んでしまったけれど、それでも納得しきれないものがある。
それに今回の解説はちょっとほめすぎのような気がするけど・・・。

でも・・・というのも変だけど・・・読みやすいのは読みやすい。
ただ何が読み手に残るか・・・となると、一読しただけでは
私には図りづらいのです。
もしかしたらすぐれた表現が原文にはあるのかもしれないけれど、
私が鈍いのか、残念ながらこの翻訳からは感じ取れなかった。
訳文のせいにするわけじゃないけどね。



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