「夜になると鮭は」 レイモンド・カーヴァー | MARIA MANIATICA

MARIA MANIATICA

ASI ES LA VIDA.



村上春樹翻訳でなければ、一生読む機会がないままだったかもしれない作家。
アメリカでは80年代を代表する作家の一人だそうですが、春樹ファンか
コアなアメリカ文学ファンでない限り、日本では無名に近いのではないかと。

あまり裕福でない、慎ましい生活を送る人々の特別でない日常の一部を
骨太な文章で書きあげていて、うわ~っ!という感動ではないけれど
村上春樹がよく使う「滋養」となるような短編集が多い。

短編いずれもよかったけれど、「羽」が特に印象に残ったかな。
そしてそれ以上に、後半にまとめられた表題作「夜になると鮭は」を含めた
詩がとても良かった。

詩は好きで昔は良く読んだ。でもそれは古典に近いようなものであることが多く
新しいものは谷川俊太郎さんの作品ぐらいしかないのですが・・・
なじみのない新しい詩人の作品には食指がうごかない・・・カーヴァーの詩は
とても、とて~も良いと思う。

正直にいえば、この詩の良さも短編の良さも、原作以上にしているのは
村上春樹の翻訳のちからによるところもかなり大きいとは思う。
的確な理解と、的確な言葉の選択がなければ、ここまで感動を与えられないのでは
ないかなと思う。
「そりゃあなたが村上春樹ファンだからでしょう・・・」と言われても仕方ないけど、
でも以前から書いているように、私は村上春樹の文学に対する姿勢(書くだけでなく
読み方についても)が、あの方の作品以上に共感できるし、好きなので
こうした取り組みは歓迎したい。
ちなみに、本書の村上春樹の解説のリズムが、カーヴァーの詩のリズムとそっくり
同じで、そのまま詩を読み続けているようだった。

まだ別の本のストックもあるので、じっくり再読も含め取り組みたいと思う。



夜になると鮭は… (中公文庫)/中央公論社

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