若者向けの歌を選び、そこにいわさきちひろさんが挿絵をつけた、
なかなか素敵な、絵本のような本です。
かなり昔、20代のころに買いましたが、久々に再読しました。
意外かどうかわかりませんが、結構短歌は好きなのです・・・というより、
憧れていると言った方が正しいかな。
わずか31文字の中に、これだけの想いをこめられるってものすごいことじゃありませんか。
絵画などの造形に限らず、あらゆる創作のうちのいずれかににかかわった事がある方なら
ご承知のことと思いますが、わずかなスペースの中に余分なものを取り去った感動だけを
表現するって、ものすごく集中力が必要なことですし、やはり特殊な能力を要するものですよね。
ある程度は訓練と努力で補えるものでもありますが、持って生まれたものがやはり大きいと
凡人はいつも思うのです。
実は何回か挑戦してみたいと、NHKの短歌入門の本など読んだこともあるのですが
結局一度もできあがったことはありません・・・・。
さて、この本ですが撰者の大原さんが書いていらしたように、確かに情熱的で
素敵な和歌が収録されています。
あちこちの人と自由恋愛をしていた時代のように思っていましたが、意外にも(?)
一般ピープルの皆様は、素朴で純情かつ情熱的な恋愛だったようです。
一つだけで成り立つ歌も素敵なものはたくさんありますが、やはり相聞歌(そうもんか)と
呼ばれる、男女のやりとりでなされた歌は素敵ですね~。
電気のない薄暗い中で、こんな歌の応酬・・・・う~ん、まさに陰翳礼讃の世界。
実に美しく奥ゆかしいですね~。
他に防人の歌や、詠み人知らずなれど秀作がたくさん収められていました。
随所に挟みこまれた、いわさきちひろさんの万葉人の絵がまたすばらしいのです。
これ、まだ重版がなされているのですね。ですよね、本当に素敵な本です。
古典もやはりいいものですね。
代表的相聞歌 ・・・さすがに意味深・・・。
あかねさす 紫野行き標目行き 野守は見ずや 君が袖ふる 額田 王
紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも 天武天皇
万葉のうた/大原 富枝

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