◆砲台名:黒崎砲台
◆起工:昭和3年(1928年)8月15日
◆竣工:昭和8年(1933年)2月14日
◆備砲:45口径40糎加農砲 2門(連装砲塔1基、巡洋戦艦赤城の一番砲塔を転用)
◆首線/射界/実用射程:NW50度/180度/30,000m
◆設置標高:38.59m
◆参考リンク:「壱岐要塞の概略」はこちら→→→
黒崎砲台は、九州北方の玄界灘に浮かぶ壱岐島の西北端に設置されました。
壱岐島の南西にある的山大島砲台(30㎝加農砲)と協力して壱岐海峡を、対馬の竜ノ崎砲台(30㎝加農砲)と協力して対馬海峡を制圧するのが主な任務でした。
40㎝連装加農砲は陸上要塞の最大の火砲でしたので、黒崎砲台の紹介では「東洋一」と形容されていますが、その一方で、実戦での射撃が一度もなかったことから「撃たずの砲台」とも揶揄されています。そんなことを言ったらほとんどの要塞砲が撃っていないわけですが、バンバン撃つのは敵に攻め込まれた時なので、そうならなくてよかったと安堵すべきなんでしょうけどね。
確認した遺構の場所を地図で示します。
『日本築城史』では弾薬庫の写真を載せているので、できる範囲で探しましたが見つかりませんでした。本当にあるのならば探し当てたかったですが。
砲台の場所までは最寄りのバス停から歩いて向かいました。徒歩20分と言われましたが30分はかかりましたね。意外に遠かったです。
せっせと歩いていると門柱が見えてきました。「一の門」です。
ここからが砲台の敷地と言うことなんでしょうね。
しばらく歩くとまた門柱が現れました。「二の門」です。
「一の門」にはなかった金具が残っています。
有刺鉄線も当時のものでしょうか?
砲台跡に到着しました。
入口には46㎝と40㎝の砲弾レプリカが置かれており、説明看板とともにボタンをポチッと押せば音声でも説明してくれます。
看板には砲台のイラストが描かれています。『日本築城史』に掲載のものを参考にしていると思われますが、実際の内部とイラストではだいぶ違う印象を受けました。
もっとも、見学できるのは僅かな区画だけですし、破壊もされているし、何より真っ暗だし。
そこで、『壱岐要塞 黒崎砲台設計図』にある全体図を現在の地図に書き込んでみました。この全体図と実際見た内部の区画や配置は合致していますので、やっぱりあてになるのは当時の設計図ですね。(当たり前か^^;
以前は砲塔井の下まで行くことができたようですが、現在は左側入口からの僅かな区画だけしか見ることができません。
左側入口には迷彩が残っています。
ビーズアートみたいです。
狭い隙間があるので入ってみます。
広い空間に出ました。
見取図で「冷却用貯水所」「ポンプ」の場所です。
角度を変えて通路から見ています。
立入禁止のフェンス越しに奥を見ています。
右手に「送風機室」「貯油庫」「予備庫」「厠」の4部屋があったと思われます。
砲塔井の方向です。露出を上げて明るくしてみました。
左の開口部が「砲塔井」、右が「水圧蓄力機井」です。
今ではただの大きな広場となっていますが、メインの動力室としていくつもの区画に分かれていたようです。
以上、内部はおしまい。(モノタリナイナ...
外から裏手に回ると、右側の入口があります。
フェンス越しに通路の奥を見ています。
「砲塔井」は下から見れませんが、上から見下ろすことができます。
売店横の遊歩道を少し上がると「砲塔井」の上に到着です。
穴の直径は約10m、深さは13mくらい。的山大島砲台の砲塔井とほぼ同じサイズのようです。40㎝加農の黒崎の方が大きいのかと思っていましたが。
少し引いて撮影。
なお、売店の店内に、砲塔の解体作業時の写真が飾ってあります。
砲台施設のやや後方に、貯水池やポンプ所の跡があります。
現役?のようですので、だいぶ手が加えられていると思われます。
砲塔を動かすのは水圧駆動でしたので大量の水が使われたでしょうね。
『日本築城史』から引用すると、「主動力機室には、操砲用の100馬力ディーゼルエンジン1基と75水馬力水圧ポンプ1基を据付け、蓄力機を可動し、砲塔の旋回、俯仰など、すべて蓄力機による水圧コック開閉によって行われた。」と書かれています。
弾薬庫など他の遺構が残っていないかウロウロしていたら、山の斜面に2つのコンクリート角柱がありました。
奥にもう1本あります。
迷彩塗装されているようにも見えますが、、、なんでしょうね?
以上、砲座周辺の遺構でした。
次回は観測所を見ていきます。
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[参考文献]
「現代本邦築城史」第二部 第十七巻 壱岐要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)
「日本築城史-近代の沿岸築城と要塞」(浄法寺朝美著、原書房)
「壱岐要塞 黒崎砲台設計図 (築城部送付)」(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)
「国土地理院地図(電子国土WEB)」