※2022年11月に記事を書き直しました。下記リンクをご覧下さい。

 

 

◆砲台名:三高山堡塁

◆起工:明治32年3月9日

◆竣工:明治34年3月7日

◆廃止:大正10年9月

◆備砲:28㎝榴弾砲 6門、9㎝臼砲 4門、9㎝速射加農砲4門

◆設置標高:385m/386m/385m

 

◆広島湾要塞の概略はこちら→→→

 

広島湾要塞においては、広島湾・呉軍港への敵艦侵入を防ぐべく4つの水路を堡塁砲台で封鎖しましたが、中でも大型艦艇の航行が容易な那沙美瀬戸には、4つの砲台と2つの堡塁を築いて強固な防御体制を取りました。「三高山堡塁」はその内の一つであり、那沙美瀬戸を望む能美島北部の三高山(現在の国土地理院表記では砲台山 標高401.8m)に築城されました。

 

那沙美瀬戸周辺の地図に堡塁砲台の位置をマークしました。

矢印は配備された火砲の首線を示しています。

 

地図の場所の写真です。三高山堡塁から那沙美瀬戸を見下ろしています。

 

なお三高山堡塁の跡地は、遺構を残しつつ「創造の森森林公園」として整備されています。遺構の状態もよく見応えがありますが、近年の豪雨で道路に被害が出ている箇所がありますので、訪問する際には注意が必要です。

 

現地にある案内図です。

 

「三高山堡塁」は広島湾要塞の中では一番多くの火砲を持っており、「北部砲台」に28cm榴弾砲6門、「南部砲台」に9㎝臼砲と9㎝速射加農砲が各4門、合計14門が配備されていました。

北部・南部と当時から区分けされて呼ばれていたかは分かりませんが、現地を訪問してみて、北部は定期的に清掃されて綺麗に保たれているなと言う印象を持ったのに対し、南部は草木もボーボーで若干荒れてる感がありました。

 

それでは遺構を見ていきますが、上の案内図があれば施設の略図はいらないかなと思いましたが、とりあえず作ってみました。なんやかや言って作るのも楽しいので(笑)

まずは「北部砲台」に向かいます。

 

南から北に遺構を見ていきます。

ここの砲台は、3つの砲座を挟む形で観測所が1つずつ配備されています。

 

まずは左翼観測所から。

右に写る部屋は前面の壁が壊れていますが指令室。階段の上が観測所となります。

 

左翼観測所を前から。

中央に測遠機を置いた円形台座があります。内部の壁には下の指令室に繋がる伝声管が見えます。

 

違う角度から。

 

観測所の右隣りに砲側庫があります。

 

そして南側砲座です。

1砲座につき28㎝榴弾砲が2門ずつです。

思えば三高山の砲座は前面の胸墻が高くないですね。他の砲台では、石造りの壁の上に土塁やコンクリを設けてさらに高くしている所が多いですが。

 

続いて2つ目。真ん中の砲座です。

胸墻の石壁部分に丸い穴が2つ開いていますが、これは伝声管でそれぞれ隣の砲座に続いています。

 

砲床部分をアップで。

 

この砲座の前から右側(北)を見ています。

砲座→砲側庫→砲座、、、よくある横並びの配置です。

 

真ん中の砲座右側に付設の砲側庫(弾薬庫)です。

 

入口には木製の梁が残っています。

 

内部。

 

北側の砲座です。

3つの砲座とも同型ですが、ココに案内板と榴弾砲の写真があります。

 

28㎝榴弾砲。こんな感じで配備されていたんだとよく分かりますね。

 

北側の砲座の右側を見ています。

手前の砲側庫と並んでもう1つ部屋があります。

 

この部屋の前面はレンガ積みです。

内部も砲側庫と若干異なります。

最初に見た左翼観測所と同じく、ココは右翼観測所の指令室でしょう。

 

この部屋の右脇にある階段を上がると右翼観測所です。

階段踊り場の両側に兵員の待機スペースがあります。

 

右側の待機スペース。左より奥行があります。

 

右翼観測所です。

 

内部を上方より。

丸い台座の上には「武(ブラッチャリーニ)式測遠機」が設置されました。

他の砲台の観測所では、この丸い台座とその周囲に3本の石柱が三角形状に立っているのをよく見かけます。石柱の方は「応式測遠機」の支柱ですが、三高山堡塁では「応式」を使う機会はなかったってことなのでしょうか。

 

別角度から。

内部には伝声管の穴も見えますが、左翼観測所にはなかったレンガ積みの脇道が見えます。

 

脇道の奥。

階段?それとも踏み台かな?小隊長(砲台長?)位置って感じですね。

 

観測所を前方より。

 

以上で横並びの砲台遺構は終了です。

次回は階段を下りて兵舎跡に向かいます。

 

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[参考資料]

「現代本邦築城史」第二部 第十九巻 広島湾要塞築城史(国立国会図書館デジタルコレクション所蔵)

「呉・江田島・広島戦争遺跡ガイドブック〔増補改訂版〕」(奥本 剛、潮書房光人新社)