天ぷらなど食べながら | 日本語あれこれ研究室

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日常生活の日本語やメディアなどで接する日本語に関して、感じることを気ままに書いていきます

 

 天ぷら屋で、天丼のランチを妻と食べていた。

 2人して、そういえばアインシュタインは天ぷらが大好きだったんだよね、といつか新聞で読んだエピソードを思い出していた。

 来日した時に天ぷらを食べて気に入り、日本には庶民でも食べられる値段でこんなに美味いものがあるのか、と感激したらしい。日本滞在中は天ぷら屋に毎日通っていたそうだ(調べたてみたら1922年のことだって。100年経っている)。

 

 アインシュタインといえば、80年代に『マリリンとアインシュタイン』という映画を見たんだけどね、とおれが言い出す。ニコラス・ローグ監督だった。

 マリリンて、マリリン・モンロー? と妻。

 そう。アメリカを訪れたアインシュタインが泊まっていたホテルの部屋に、マリリン・モンローが訪ねてきて、他にも誰か来て、ほんの数人の人たちの会話劇だったな、確か。

 

 で、おれはさらに話題を転換させるのであった。

 『トワイライトQ』を作ったときに、『マリリンとアインシュタイン』のエンディングを真似したなあ、もとい、インスパイアされたなあ。と、初めて打ち明けるのであった。

 

 『トワイライトQ』のラストシーンは船の甲板で、主人公の少女が風に髪を揺らしている横顔、それをしばし見せたあとでパッとストップモーションになる。その画面にクレジットが流れて、クレジットが終わった瞬間に止まっていた少女がふっと動き出して、カメラに顔を向けて笑う。それでエンド。

 

 そんなんだったっけ、全っ然覚えてない、と妻。

 妻は『トワイライトQ』の作監をやった人なんだけど、まあ昔のことなので、覚えてるだろうとは全く期待していなかったさ。

 

 で『マリリン』のほうのラストは、マリリンがホテルの部屋から出ていくシーンなんだ。ドアから体は外に出て、パーイと動かしていた腕だけが画面に残っている瞬間にストップモーションになる。そしてクレジットが流れて、それが終わったところで映像がほんのちょっと動き、マリリンの手がドアの外へ完全にアウトして、エンド。

 

 この終わり方がすごく印象に残ったので、おれも自分の作品でパクった、もとい、オマージュしたというわけ。ストップしている時間を何秒くらい撮影すればいいか、つまり標準の速さで引いたときにクレジットがどのくらいの時間で流れ切るのか、ということをラボの人と相談したりしたんだよ。

 

 あれから何十年も経ったけど、この2作品のエンディングの類似って、誰からも指摘されたことがないんだよね。まあ、そんな細かいところまで見ている人もいないってことだと思うけど。

 そんなところでちょうど、食後のお茶も飲み終わったのだった。