枕営業なるものがあるらしい | 日本語あれこれ研究室

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 今年3月に週刊文春が「女優4人が覚悟の告白『人気映画監督に性行為を強要された』」という記事で榊英雄氏のことを取り上げた。掲載は数回に亘り、是枝監督らがこの件について声明を出すなどかなりの話題になっている。

 時同じくして週刊女性に「園子温の性加害を主演女優らが告発!」が掲載され、それに関してヤマカン氏が、

  「主演どころか誰にも手を出せません!

   所詮アニメ監督悲しひ(;;)」

とツイートし、その後もヤマカン氏は、有体に言って「頭おかしい」としか思えない発言を繰り返して炎上するというオマケもついています。

 

 ここからは個人的な経験だが、もう十数年前のこと、飲みの席でとある女性脚本家と話をしていた。おれと概ね同世代で、主に実写の映画やドラマの脚本を書いている人だ。

 その人によると、実写の世界では女優によるいわゆる枕営業が当然のようにあると言い、「望月さんも、声優さんの事務所からそういう話とかあるんでしょう?」とおれに尋ねたのだ。

 残念ながら(?)そんな話はただの一度もない。

 大きな理由は、アニメの監督には主演声優を一存で選べるような権限などないこと。まあ、気に入りの声優をオーディションに呼んだり、オーディションを受けた中で良かった人を強く推すくらいのことはできるが。

 

 もう一つの理由は、声優は各人のランクが決まっていること。新人だったらいくら体を捧げて主役を勝ち取ったところで30分のテレビアニメならギャラは1話につき1万5千円だ。その後の仕事が引き続き来る保証もない。

(一般の人が大抵知らないのは、アニメ声優は同ランクなら主人公だろうがモブの一人だろうがギャラは同じなこと。それに対してノーランクの大御所なら、たとえセリフが一つだけでも新人の何倍ものギャラをもらう)

 従って、監督なりプロデューサーなりにいくら枕営業をしても、それに見合う特典が彼女たちには何もない。

 

 ということを先の女性脚本家に説明したら、実写との大きな違いに驚いていた(その意味では、ヤマカン氏が所詮アニメ監督悲しひ」と言ってるのはあながち間違いではない)。

 その時、おれの隣にいた制作の人が、「何々監督なんか、打ち上げでヒロイン役の誰々さんと一緒に写真撮っただけで大喜びしてましたから」などとおれの説明をフォローしてくれて、おれも少しだけ「悲しひ」気持ちになったが。

 このくらい、アニメ業界はまだ健全なようだ。

 

 但し、声優ではなく一般の俳優が出演する劇場アニメが近年多いが、あれは出演料に関して通常のアニメとは全く異なるので、おれには分からない世界だ。必ず興収何十億が見込めるような一部の監督作品ではおれの知らないことが行われている可能性はあるかも知れない(必ずあると言っている訳ではないので誤解なきよう)。

 

 

※本文に関係ない追記※

 これも十数年前、おれの作品でヤマカン氏にコンテを依頼したことがあったのだが、結局は「全修正」することになった。つまり元のコンテは全く残さず全部おれが書き直したということ。

 ヤマカン氏のコンテは内容もさることながら、内容と関係のない落書きのようなコメントが余白に細かい字でいろいろ書かれていて、それがウザくて仕方なかったのであった。