Priestess / Gil Evans | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。


令和6年3月10日(日)
Priestess / Gil Evans(★★★★★)
ノスタルジ度(★★☆☆☆)
ジャンル:Big Band, Fusion, Post Bop


Side 1 
1.Priestess 19:44

Side 2
1.Short Visit 12:07
2.Lunar Eclipse 4:24
3.Orange Was The Color Of Her Dress Then Silk Blue 4:41

Gil Evans(p, cond), Arthur Blythe, David Sanborn(as), George Adams(ts), Jimmy Knepper(tb), Ernie Royal, Marvin "Hannibal" Peterson(tp), Lew Soloff(p-tp), Robert Stewart, Howard Johnson(tuba), John Clark(fhn), Pete Levin(synth, clv), Keith Loving(g), Steve Neil(b), Susan Evans(ds)

Recorded May 13, 1977.  Live at St. George Church, NYC
Released by Antilles – AN 1010(stereo) / ポリスター株式会社 – 25S-3008(stereo)

今日から七十二候は“桃始笑(ももはじめてさく)”。
桃の花と聞くと山奥に住む鬼婆の話をおもいだす。
昨日の日の入りは17時59分だった。
今朝の日の出は6時14分だ。

ギル・エバンスの77年ライブ録音。
オリジナルはアンティリス、これはポリスターの同時発売盤。
大きくGILと書かれたシンプルなジャケット。
裏面には蝙蝠傘を放り投げるギルの小さな写真があるだけだ。

これはギルの65歳の誕生日に録音されたライブ盤である。
デビッド・サンボーンのアルトがおそろしいエネルギイで疾走する。
ルー・ソロフのピッコロ・ペットが戦闘機のように駆け抜けていく。
サンボーンはフュージョン系に向かっていたのでしばらく聴くことはなかった。

ここではフュージョンの名残はあるものの
それはワウ・ギターなんぞが加わったせいでもある。
久しぶりに聴いたサンボーンの演奏はエネルギイに満ちていて圧倒的だ。
ギルはメンバに魔法の粉を振りかけ、とてつもないエネルギイを噴出させる。

ギルの描く世界はまさに力の噴出そのものだ。
“魔法の粉”はサン・ラ大先生の十八番だが
大先生はメンバをほったらかして独り先頭に立って
その後ろから慌ててメンバが追いかけるのが流儀である。

ギルはそんなことはしない。
メンバ全員を火の玉に圧縮させていく。
その火の玉は内側に圧縮され、圧力がどんどん高まっていく。
これがギル楽団の凄さというものだ。

ギルはおどろおどろしい要素を振りかけはするが
“民族の血”のような様相は匂わせぬ。
そこをアタシは好きだ。
ところどころにカーラ・ブレイにも似た和声の動きがあるのも好きだ。