Sea Chanteys And Forecastle Songs | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。


令和2年8月18日(火)
Sea Chanteys And Forecastle Songs At Mystic Seaport(★★★★★)


Side 1 

1.Hanging Johnny    
2.John Kanaka    
3.Reuben Ranzo    
4.The Wild Goose    
5.Roll The Cotton Down    

6.Blood Red Roses    
7.A Hundred Years Ago    
8.Tommy's Gone To Hilo    
9.Haul Away For Rosie-O    
10.Billy Riley/Sally Racket    
11.Good-Bye, Fare Ye Well    
12.Shenandoah    
13.Santa Anna    
14.Can't Ye Dance The Polka?    
15.Sally Brown    
16.One More Day    
17.Paddy On The Railway

Side 2
1.The Weary Whaling Grounds    
2.The Balaena    
3.The Handsome Cabin Boy    
4.Liverpool Ladies    
5.Paddy And The Whale    
6.Traditional Reel    
7.Mystic River Hornpipe    
8.Traditional Jig    
9.The Bold Harpooner    
10.The Coast Of Peru    
11.Blow Ye Winds Westerly    
12.Maid Of Amsterdam    
13.The Greenland Fishery    
14.The Ten-Penny Bit    
15.The Belfast Hornpipe    
16.The Forester    
17.The Bold Benjamin    

Ellen Cohn(concertina, tin-whistle, ocarina), Stuart Gillespie(vo, consertina), Stuart Frank(vo, consertina, accordion), David Cruthers, Andrew German, Donald Treworgy, Douglas Stein, Howard Willett (2), Richard Malley, Robert Farwell, Robert Morse, Stuart Parnes, Andrew German, Carl Andersen, Christopher Keener, Talitha Claypoole(crew)

Recorded 1978 aboard the historic ships Charles W. Morgan and Joseph Conrad.
Released by Folkways Records ‎– FTS 37300 / nihonn koromubia  YS-7014-FW

今朝は北風が吹いて散水をしていても気持ちがよかった。
相変わらずの強い陽光が照りつけてくる。
道路に散水してもすぐに乾いてしまうが
ほんのいっときだけの涼感を味わう。

78年録音の船乗りの歌。
オリジナルはフォークウェイ、これは日本コロムビアの79年盤。
“世界音楽探検”シリーズの第14巻である。
この全15巻のシリーズはなかなか充実したドキュメンタリ録音だ。

19世紀の帆船航海時代に水夫達に歌われていた唄が収められている。
表面は水夫達が働きながら歌った労働歌、
裏面には仕事を終えて仲間で集い踊る歌が収められている。
このアルバムはコネティカットの博物館の古い帆船上で録音された。

“チャールズ・M・モーガン”号と“”ジョセフ・コンラッド  号の
甲板に19世紀に使われていた楽器を持ち込んで
19世紀の労働歌を研究しているメンバーが歌ったものである。
帆船には“シャンティマン”と呼ばれるリーダーが乗船していた。

彼らは労働歌を歌うことで過酷で単調な船仕事が
ばらばらにならずに皆が一致して正確に進むようにしていた。
シャンティマンには人並み以上の声量と体力が求められた。
嵐の中でも水夫達に確実に下命し、鼓舞する能力が必要だった。

どの歌も短いものばかりである。
労働歌は単純な仕事が乱れることなく一斉に進むように歌われる。
旋律があるようでない曲もあれば和声で歌うものもある。
コール・アンド・レスポンスでリーダーに従う演奏もある。

表面の労働歌では楽器の音は入っていない。
アカペラで力強く歌われている。
この“シャンティマン”たちは帆船労働歌保存会のような
メンバーであって職業歌手ではない。

荒々しく雄々しい歌声である。
ここには優男の出る幕はない。
どんな状況でもリーダーのシャンティマンが瞬時に判断を下し、
節の付いた短い指令を出していくのだ。

“帆を巻け”“櫂を漕げ”“碇を上げろ”などといった
短い指示が即興的に出されていく。
収められた歌は短いものだが、
実際には何時間も繰り返して歌われるものだ。

裏面は仕事を終えた船乗り達が甲板に集い
歌ったり踊ったりする演奏が収められている。
コンセルティーナの旋律に合わせて歌う演奏が収められている。
手風琴のようなコンセルティーナの音色は素朴である。

踊りの伴奏だから和声も単純でリズミックな曲が多い。
旋律をオカリナで吹いている曲もある。
素朴な音色ながらもテンポの速いオカリナの演奏は見事なものだ。
大勢で合唱することはなく、独唱と独奏が殆どである。

中世の世俗曲のような旋律には
無調になる部分もあっておもしろい。
歌詞一覧表が付いているが、ほとんどの曲は
その場で即興的に歌われたもので歌詞は一例に過ぎない。

帆船というと“カティ・サーク”をおもいだす。
中国から紅茶を英国に運ぶのは帆船が用いられた。
蒸気船のように石炭を積む必要がないので
帆船には大量に荷を積むことが出来た。

スエズ運河の完成で帆船貿易は一挙に衰えたが
米国では東海岸から西海岸へ南米のホーン岬経由で
クリッパー船が三ヶ月掛けて大量の物資を運んでいた。
やがて大陸横断鉄道が完成して米国の帆船文化は衰えた。

細長い船体に高い三本マストを立てる帆船の姿は美しい。
現在でも帆船は世界各国で訓練船として使われている。
今、世界で一番新しい帆船は2017年にインドネシア海軍が竣工させた
Bima Suci(ビマ・スチ号)である。

(画像提供Jawa Pos)
アタシが駐在した東部ジャワのスラバヤ市には海軍の軍港がある。
ビマ・スチ号は東部艦隊司令部に所属し、海軍の練習船として活用されている。
三本マストの帆船だが、艦橋には最新デジタル機器が並んでいるのである。
昨年には神戸港に寄港したのに、アタシが見損ねたのはまことに残念だった。