Angel In The Absinthe House/La Vergne Smith | 風景の音楽

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“のすたるジジイ”が30~50年代を中心にいいかげんなタワゴトを書いております。ノスタルジ万歳、好き勝手道を邁進します。

令和2年8月12日(水)
Angel In The Absinthe House/La Vergne Smith ‎(★★★★★)


Side 1 

1.One Scotch, One Bourbon, One Beer
2.Lover Man    
3.Hurry On Down To My House    
4.Blues In The Night    
5.Straighten Up & Fly Right
6.One For The Road

Side 2
1.I Like That Kind Of Carryin' On

2.Moonlight In Vermont    
3.That Old Black Magic    
4.Hey There    
5.You'd Better Go Now    

La Vergne Smith(vo, p)

Recorded 1955 at The Old Absinthe House
Released by Cook ‎– 1081

今日から七十二候は“寒蝉鳴(かんせんなく)”。
寒蝉とはヒグラシのことだ。
アタシはヒグラシの声がキライだ。
カナカナカナと鳴くヒグラシの声を聴くと言いようのない寂寥感に包まれる。

ヒグラシの声は夏の終わりが近づいている印だ。
それは“夏休みの終了”を意味する。
アタシは幼稚園から高校までずっとそのおもいで過ごしてきたのだ。
それはリタイアしてなんのしがらみのない今でも続く。

昨日はとんでもない猛暑だった。
今日もすでに室内で29度まで上がっている。
我慢出来るところまで扇風機でしのぐつもりだ。
予報では午後に夕立がくるかもと言うている。

ラヴァーン・スミスの54年録音。
オリジナルはクック、これは年代不詳の再発盤。
ペラジャケからみて比較的新しい年代の再発だとおもわれる。
モノクロームのジャケットがまことにいいデザインだ。

ニューオーリンズのクラブ“オールド・アブサン・ハウス”での
ピアノ弾き歌いである。
このクラブはもともとは食料品倉庫とかだったビルの一角で
禁酒法前はバーボン倉庫として使われていたようだ。

現在もここは観光名所になっているそうで
一度は行ってみたいところだ。
一曲目が"One Scotch, One Bourbon, One Beer"。
吉田類が歌ってCDまで作っちまった曲から始まる。

ラヴァーンは弾むアップテンポのリズムに乗せて
囁くように歌っている。
歌詞をぼそぼそと呟くような歌い方が何ともいいねえ。
続く“Lover Man”もまた、味わい深い歌唱だ。

声を張り上げずにぼそぼそと呟く歌い方は
ニューオーリンズのブルースにぴったりである。
老人が古いギターを抱えてぼそぼそと歌う雰囲気だ。
ラヴァーンの歌唱にもピアニズムにも派手さを抑えた渋さがある。

アタシの持っている女性ピアニストが総じて豪快なピアニズムなのに
ラヴァーンはジャケット写真の印象とはずいぶんとちがって穏やかな演奏だ。
まるで年老いたブルースマンが皺だらけの手で
ピアノを奏でているような雰囲気がある。

裏面の“Moonlight In Vermont”では
遠くで物音がしたり、自動車のクラクションが鳴ったりしている。
ライブ録音ではないのだろうが
その雑音がとても佳い効果を出している。

ピアノはかなり年代物のようで
ハンマのフェルトが硬くなっていて
金属的な音がするのもまた“Absinthe House”の雰囲気を伝えてくる。
クックの素朴な録音がまことにいい味を出している。

ラヴァーンというピアニストを初めて聴いたが
彼女の魅力にすっかり引き込まれてしまった。
これは今年に手に入れたVINYLの中でも断トツ一位のアルバムだ。
彼女は4枚しか出して居ないが、ぜひ他のVINYLも手に入れたい。