雪の日の郵便配達 | 満願寺窯 北川八郎

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九州、熊本は阿蘇山の麓、小国町、満願寺窯からお送りするブログです。
北川八郎の日々の想いや情報を発信してまいります。

「光る足」

1999年2月から2000年12月まで百回にわたって毎週火曜日 熊本日日新聞のコラム「ワラブギ談義」の原本を10年ぶりに開きました。当時53才~55才。当時から伝えていることは変わりなく その心を読み返したく連載します。


2000・3・3 no57



昨年末に寒い日が続いた。雪と霜であたりが真っ白な朝 郵便屋さんが赤っぽい顔でバイクから降り手紙の束を渡してくれた。その日の昼過ぎに 南小国の郵便局に用があり訪ねた。数人の配達から帰ったばかりの方々と目が合い挨拶を交わしたが 誰か全くわからなかった。私は最初混乱した。内勤の人たちと配達の人たちの顔の様子が全く違っていたのだ。


私の目が「?」マークのまま配達の人たちを追い続けて「あっ!」と胸が熱くなった。配達の人たちは全員赤い仮面をつけているようだった。バイクで寒風の中 配達するため 外気に当たる顔の前面だけが赤く 雪焼け状態になり 風防のある額の上と あごから首にかけて白い肌が残っていた。まるで歌舞伎役者の舞台化粧のようだった。雪の舞う朝 バイクで各戸を巡るつらさが一瞬に私に乗り移った。小国は二月の末になっても雪の舞う朝が多い。村の中でこのことに気づかなかったのは私だけなのだろう。感謝しています。


また 十年ほど前 初めての田仕事で慣れない耕運機を山奥の泥田に沈めて一人で力んでいた。その時バイクで通りかかった郵便屋さんが一時間近くも 泥んこになりながら手伝ってくれ やっと耕運機を田から上げた。あの時の嬉しさと感謝は決して忘れていない。配達には小回りのきくバイクが一番だろうが 雨と雪の朝は本当に大変だ。ありがとうございます。

二月末になっても家の陰は雪が消えない。今年は雪の日が多い。都会に住んでいたころは 郵便屋さんの顔は遠い存在だった。南小国に住み始めて配達してくれる人たちの顔が近くになった。