電人少女まみり  第16回 | 芸能界のちょっとだけ、知っていることについて

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第16回
「ど阿呆、お前はどういうつもりなり、お前のしているのはまみりの腕時計なり」
「まみり、平気、平気、隣にはゴジラ松井くんもいるからね。松井くんに頼んでいるのよ。まみりを助けて下さいって。
ゴジラ松井くんと代わろうか」
「そんなことはいいなり。緊急を要しているなり。チャーミーの馬鹿でもいいなり。その場で、こう言うのよ。
ご主人様が大変なり、スーパーロボ矢口まみり二号、発進って」
「おい、携帯で何をごちゃごちゃ言っているんだよ。きなこ飴ごろごろ攻撃にも屈しないのかよ。
お前は。じゃあ、次の手だ。小川、来るんだよ」
すると白い洗いさらした柔道着を着た小川が前に出て来た。小川は女のくせに柔道着の下には何もつけていないようだった。
「小川はね。不良グループに入る前には柔道部に入っていたんだよ。
はるばるロシアまで行ってイゴール・ボブチャンチンの下で六ヶ月間、総合格闘技の修行を積んできたんだからね。
小川、必殺のあの技をまみりにかけておしまい」
飯田が興奮して叫んだ。ああ、このいじめはどこまでエスカレートするのであろうか。
やはり、落ちこぼればかり集めた馬鹿学校であった。ハロハロ学園は。こんな問題児ばかりを集めているのだから。
「かおりお姉さま、やっていいんですか。あの技を」
「いいよ。やっておしまい。こんな女、死んだって構わないよ」
小川の湯上がりのような湿った黒髪がゆらりと揺れた。小川は柔道の構えをした。
「必殺、雪見大福」
小川はそう叫ぶと、何と、何と、柔道着の前をばっとはだけたのである。するとその場に雪国のスキー場のような光が広がった。
雪国特有の白いもち肌に包まれた、ぷりんぷりんとしたふたつの乳房があらわれたのである。
そして助走をつけて飛び上がるとまみりの上に落下していった。ダイビングボディプレス。
小川の乳房はちょうどまみりの顔面の上に落下した。その柔らかさからまみりは最初の衝撃はあまりなかったが、
これがおそろしい結末を待っているということがやがてまみりにもわかった。まみりの顔面全体を覆い尽くす小川の乳房。
「雪見大福、変形縦四方固め」
小川がまみりの顔に乳房を押しつけながらわきを固めてきた。まみりは少しも動くことが出来ない。
「うっ、うっ、うううう」
「まみり、聞こえる。聞こえる。どうしちゃったのまみり」
携帯に必死になって話しかけている石川の姿を見ながら、ゴジラ松井くんがはじめて言葉を発した。
「あれ、あれ」
ゴジラ松井くんの指さす方にはまみりが柔道着の下でばたばたと足をもがいている姿が見える。
「死んじゃう、死んじゃうわ。まみりが死んじゃう。松井くん、助けてあげて。助けてあげて。
まみりは松井くんに憧れているのよ。それだけじゃない。松井くんはハロハロ学園のヒーローでしょう」
石川は松井くんの胸のあたりに顔を押しつけて泣き崩れた。
そして銅像のように動かないゴジラ松井くんの胸をその非力な両手でどんどんと叩いた。
 どういう具合だかわからないが小川の乳房を密着させられていて呼吸困難に陥っていたまみりだったが片手が
自由になって携帯に話しかけることが出来た。
「石川、何をやっているなり。げほ、ごほ」
「まみり、平気、今、松井くんに頼んでいるの。あなたの憧れの松井くんの目の前で死ねればあなたも本望でしょう」
「石川、げほ、ごほ、馬鹿丸出し。げほ、ごほ、スーパーロボを呼ぶなり。げほ、ごほ」
「まみりがそんなに言うなら呼ぶわよ。せっかくまみりと松井くんが仲良くなれるチャンスだと思ったのに」
「げほ、ごほ、そんなこと言っている場合じゃないなり、早く、スーパーロボ矢口まみり二号発進と叫ぶなり。
十五メートルバージョンとつけくわえることも忘れないで欲しいなり。げほ、ごほ」
「まみりがそう言うなら、そうするわ。スーパーロボ矢口まみり二号、発進、十五メートルバージョン~~~~~ン」
石川りかは天井の宇宙の中心にでも叫ぶようにその叫びを発した。すると頭上に広がる青空の一角に灰色の点のようなものが見えた。
その点はみるみる大きくなって有名な菓子やの前に立っている人形みたいなものが空からやって来た。
そして地上に降り立ったのである。その怪物はカラオケやのウインドーの前とやじうまの前に降り立った。
その怪物はやはり秘密パーティで貴婦人がするような仮面をかけている。
そして巨大な腕を動かすとカラオケやのショーウインドーをぶち破り、その手で藤本や飯田たちを鷲掴みにした。
その様子はまるで大魔人のようであった。
解放されたまみりはチャーミー石川が立っているやじうまの中に走って行った。
「この間抜け、なんで早くスーパーロボを呼ばないなり、それよりもなんで矢口くんの時計をしているなり」
「不良たちはどうしたの」
「今頃は足利の畑の中の肥溜めの中に浸かっているなりよ」
「本当、まみりをいじめた罰よ」
ふたりの会話をゴジラ松井くんがじっと見ている。
「松井くん」
まみりは石川の隣にゴジラ松井くんが立っているのを改めて気づいた。松井くんの姿を見るとまみりはなぜだか、涙があふれてきた。
小学校のとき大好きな先生に叱られて頭をこつんとやられたときと同じ気持ちだった。
「まみり、まみりの言いたいことはわかるわ。なんで、助けてくれないのって気持でしょう。
わたしは松井くんのことが大好きなのにってことよね」
まみりは涙目になりながら石川の横腹を肘でこづいた。石川は平気な顔をしている。するとゴジラ松井くんは
「きみは本当は強いんだろう。それに僕はハレンチ学園に入ったんじゃない」
そう言うとすたすたと歩いて行ってしまった。