今回はレベル9の紹介、そして私の考えを書きたいと思いますが・・・
その前に、カリフォルニア音楽指導者協会についてご紹介しますね。
- 1897年に始まり、123年の歴史を持つ。
- 現在、約4700人の指導者がメンバー。
- グレード試験の他に、マスタークラス、大人の発表会などを支部ごとに開催
- 支部ごと、州規模のコンクールの開催
- メンバーの勉強会、定期ミーティングがある
- メンバー対象のコンベンションが年一回行われる
では、レベル9 のご紹介です。
レベル9はプレップ・レベルから数えると10段階目で、その上に特級があります。
ここまで来ると、大学で音楽を専攻した際に、1年生の音楽理論のクラスは余裕を持って受けられる、あるいは入学時のクラス分け試験をパスして、免除になる場合があります。
1. ピアノ演奏
- 4曲
- うち2曲は暗譜、2曲は楽譜可
- 1曲は指定曲から選ぶ
- 全ての曲は違う時代から、また違う特徴の曲を選ぶ
指定曲の例〜
- バッハ「イギリス組曲」「フランス組曲」「イタリア協奏曲」「パルティータ」から一楽章、「平均律1巻、2巻」
- ベートーベン「バガテル」「6つの変奏曲、ト長調」「作品49を除くソナタ」
- モーツァルト「K.545を除くソナタ」「ロンド」
- ショパン「即興曲」「マズルカ」「ノクターン」「ワルツ」
- ブラームス 作品 76, 79, 10, 116, 118, 119
- ドビュッシー 「アラベスク」「マズルカ」「プレリュード一巻」「ベルガマスク組曲」
2. テクニック
- 以下の全てを、両手一緒に5分以内で弾く。
- 片手ずつは無効。
(A)スケール
- ホ長調6度のスケールを右手はミから、左手はソ#から初める。4オクターブ。
- 変イ長調、変イ長調、変ホ長調。4オクターブ。
- 嬰ヘ短調、嬰ハ短調、旋律短音階。4オクターブ。
- ホ長調のオクターブ・スケール。2オクターブ。
- ミクソリディア旋法をレから始める。2オクターブ。
- ロクリア旋法をミから始める。2オクターブ。
- 全音階をドから始める。2オクターブ。
(B)終止形
- 二つの終止形を、間に次の調のV7を入れて転調して、つなげる。
- 変イ町長から変ホ長調
- 変ホ長調から変ロ長調
- 変ロ長調からヘ長調
(C)アルぺジオ
- 属7:変イ、変ホ。4オクターブ。
- 減7:変イ、変ホ。4オクターブ。
(D)ポリ・リズム
- 2対3
- 変イ長調のスケールで。
- 右手は八分音符2つ、左手は八分音符の三連符を弾く
3. イヤー・トレーニング
- 音程の判別(2音でできる2度から8度の全て)
- 三和音の判別(長三和音、短三、増三、減三)
- 短音階の判別(自然短音階、和声、旋律)
- 拍子の判別(2/4, 3/4, 4/4, 5/4, 6/8)
- 和音の判別(2つの調のカデンツァと転調の和声進行を書ける。)
- 7の和音の判別(長7、短7、増7、減7、属7)
- バロック組曲内のダンスの判別(アルマンド、クーラント、コレンテ、サラバンド、ジーグ)
- 古典派と近・現代曲の違いを判別
- バロックのフーガと古典派のソナタの判別
- 多声音楽と和声音楽の判別
4. 初見視奏
- レベル7の曲
- 全ての時代の曲が含まれる
- 三連符、メロディーのト音記号とヘ音記号間の移行、フィンガー・ペダルが含まれる。
- 45秒、見る時間が与えられる。
5. 音楽理論(筆記試験)
(A)音、和音を読む
スケールと調号
- 全長調、短調(自然短音階、和声、旋律)
- 五度圏
- 半音階
- 全音階
- 旋法(イオニア、ドリアン、フリギア、リディア、ミクソリディア、エオリア、ロクリア)
音程
- 完全、長、短、増、減、
和音
- 三和音(長、短、増、減、基本形、第一展開形)
- 各調の和音名を判別と記述。展開形も含む。(I, ii, iii...)
- 7の和音の判別と記述。展開形も含む。(長7、短7、増7、減7、属7)
- 終止形の判別(完全終止、半終止、偽終止、アーメン終止)
- セカンダリー・ドミナントとそれを使った転調の判別
拍子記号の判別
(B)楽語
- フーガ
- バロック・ダンスの名前一式
- ヘミオラ
- ルバート
- smorzando
- sotto voce
- トッカータ
- 対位法
(C)音楽史
- メジャーな作曲家がどの時代に属するか判別できる
- 各時代の特徴を記述できる












以上ですが、グレード試験について訳しながら考えた事を少し書きたいと思います。
ここまでのレベルになると、指導者もかなり勉強が必要になってきますが、それゆえに「音楽指導者」という職業のイメージ、「ピアノのレッスン」のイメージが日本とは少し違う気がします。
私は日本の音大生の演奏をライブで聞かせて頂く機会が何回かあり、最近ではオンラインでもたくさん聞く事ができます。皆さん、本当にとてもよく弾けることに関心します。テクニック的には日本の学生さん達は皆、大変高いレベルだと思います!
と同時に、殆どの場合「美しいのだけれども、さ〜っと流れていってしまう」という印象を受け、それが何故なのかずっと謎でした。
最近、日米を比較する機会を通して、もしかしたら音楽理論が演奏の裏打ちとして、あるいは曲の骨組みとして、あまり利用されていないから?という気がしています。間違っているかも知れませんが・・・
カリフォルニアのグレード試験は演奏より勉強が重視されている感じがし、理想形だとは思いませんが、生徒さんがレッスンを続ける理由の一つにはなっているようです。
日本でもこのようなグレード試験があったら、生徒さんの継続率が向上し、演奏の更なる向上の一助にもなる、という可能性はないでしょうか?
このような情報が日本のピアノ業界のお役に立つ事を願いつつ書いてみました。
前回、前々回のグレード試験の記事は以下からどうぞ。