生徒さん達にレッスンを続けてもらうために、指導者の皆さんが様々な工夫をされているのは、聞くたびに頭が下がります。
米国ではグレード試験がその一端を担っているようです。
グレード試験の利点を考えてみました。
- コンクールと違い、どのレベルの生徒でも参加できる。
- 目に見える数字(レベル)により、達成感を味わえる。
- 毎年一回の試験に向けて、計画的に練習できる。
- 数年先にどの様な演奏ができるのか、生徒や保護者にイメージが湧く。
日本でもこの様な仕組みがあったら、ピアノのレッスンを続ける助けになるでしょうか?
前回はカリフォルニアで一番普及し、毎年約3万人が参加するグレード試験、Certificate of Merit Evaluation の概要を紹介しました。
今日は、Certificate of Merit Evaluation のプレップ・レベル(準備レベル)の内容をご紹介します。
5歳から受ける事ができます。
このレベルを小学校3年までに始めれば、高3でレベル9(特級の前)までいけます。
1. ピアノ演奏
- 2曲
- 両方とも暗譜
- 1曲は指定曲の中から、もう1曲は自由に選ぶ。
- バルトーク「ミクロコスモス一巻1〜16番」
- バスティン「ピアノ・リサイタル・ソロ1巻」
- フェイバー「ピアノ・アドベンチャーズ1巻、2巻A」
- カバレフスキー「24の小曲集」
- ギロック「子供のためのアルバム1巻」
2. テクニック
以下の全てを4分以内で弾く。
(A)5指ポジションと主和音
- ドレミファソファミレドミソミド〜ドミソの和音
- ハ長調、短調、ト長調、短調、ヘ長調、短調、ニ長調、短調、イ長調、短調、ホ長調、短調
- 両手で。
(B)スケール
- 1オクターブ上下
- ハ長調、ト長調
- 両手か片手。
(C)終止形
- IーVーI
- ハ長調、ト長調
- 両手で。
3. イヤー・トレーニング
- 以下から5問出題
- 5指ポジションの演奏を聞いて、長調、短調を判別
- スケールの音の上行下行を判別
- 2小節のリズムを聞いて、2つの選択肢から選ぶ
- 2小節のメロディーを聞いて、2つの選択肢から選ぶ
- レガートとスッタカートの判別
- フォルテとピアノの判別
4. 初見視奏
- 全音符、二分音譜、四分音符、休符からなる曲
- 弾く前に、30秒見る事ができる
5. 音楽理論(筆記試験)
(A)音を読む
- 5線上の音の判別
- 鍵盤上の半音と全音の判別
- 音程の判別(2度、3度、4度、5度)
- 5指ポジションの判別(ハ長調、短調、ト長調、短調、ニ長調、短調、ヘ長調、短調)
- 主和音、長調、短調の判別(ハ長調、短調、ト長調、短調、ニ長調、短調、ヘ長調、短調)
- スケールと調合の判別(ハ長調、ト長調、ヘ長調)
(B)リズムを読む
- 全音符、付点二分音符、二分音符、四分音符、八分音符、と各休符
- 音符と休符の名前を書ける
- 各音符と休符の長さを書ける
- 4分の2拍子、4分の3拍子、4分の4拍子の判別
- ピアノ
- フォルテ
- アクセント
- スラー・レガート
- スタッカート
- タイ
- フェルマータ
- 繰り返し
以上です。
私、個人的には、演奏用のレパートリーのレベルに比べてその他の項目のレベルが高い、また量的にも多いという印象を受けます。しかし、これがアメリカ人の指導者達の感覚ではバランスが取れた状態、ということの様です。
指導者は、夏休みに入る前に次の年のグレード試験の曲を決め、新学期(9月)になったら新しい曲を教え、12月のクリスマス発表会ではその様な曲を弾ける様にし、1月にはその他の訓練を本格的にして、3月頃のグレード試験を迎える、というパターンのレッスンをする様です。
グレード試験を始めると、レッスン時間は45分は必要になってくる様です。
試験前に、音楽理論中心の特別グループ・レッスンをする指導者もいます。
音楽理論について、上級生が下級生を教える、というシステムを作っている指導者もいます。
以上、皆さんのご指導の参考になれば嬉しいです。