迷宮 | すくらんぶるアートヴィレッジ

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《東山キューブ》

2020年3月21日にリニューアルオープンし、美術界のみならず建築ファンからも熱い注目を集めている美術館「京都市京セラ美術館」。リノベーションを手掛けたのは、建築家・青木淳と西澤徹夫だ。さらに青木淳は、館長も務めるという異例の就任に世間を驚かせたことでも話題を集めた。

青木淳と西澤徹夫による今回の設計では、建造物自体のポテンシャルを活かしながら「建物の周辺エリアとの融合」を図る。鑑賞を目的にしていない人々も自由に通り抜ける環境にすることで、街へと大きく開かれた美術館へと進化した。

美術館前から外観を眺めると、まず目を奪われるのは、地面に沿うように左右に伸びる窓ガラスのファザード。まるで面に美しいスリットが入ったようなその様は、重厚なレンガ建築とは対照的な、開放的な明るい雰囲気が印象的だ。併設された新しいアートギャラリー「東山キューブ」は現代アートに対応し、クラシカルな本館とは対照的なホワイトキューブのアートスペースだ。日本の伝統だけでなく、海外からの注目も高い「京都」という地域性に相応しく、重厚感と近代感を持ち合わせた外観が印象的である。

★「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」京都市京セラ美術館開館1周年記念展

2022年3月12日(土)~6月5日(日)新館:東山キューブ

https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20220312-0605

本展では、これまで発表されてこなかった秘蔵のインスタント写真約800枚や最新の映像作品などを紹介。現代アートを紹介する展示室として新設された新館「東山キューブ」で、森村が鑑賞者を迷宮世界へと誘います。

本展のテーマは「ワタシとは何か」。内覧会に出席した森村は「ワタシという人間の中には、たくさんの秘められたワタシがいる。たくさんのワタシが複雑に絡み合ったり、裏と表の背中合わせになったりして、いろんな風景を織りなす」と語ります。そんな”ワタシの中の迷宮世界”を表現した会場は、まさに迷路のようです。迷路を構成している回廊(M式写真回廊)には、1984年以降に撮りためてきた秘蔵のインスタント写真を約800枚展示しています。作品の中には、森村が制作のためのテストとして撮影したものや、「ひとり遊び」の一環で撮影したものも。多様な様相の森村を見ているうちに、自分自身が森村の内面に入り込み、複雑に絡み合う森村を目の当たりにしているような気持ちになりました。

会場には動線がありません。鑑賞の順序は見る人に委ねられています。作品を眺めているうちに自分がどこにいるのかわからなくなり、迷路の中で迷っているような感覚に陥ります。これこそ森村の狙会場の出入り口は、一つではありません。鑑賞者は、「空装門」「鏡影門」などの5つの門から出入りする門を選ぶことができます。選んだ門によって鑑賞体験が異なるという心憎い演出です。心惹かれるままにぶらりぶらりと、街歩きをする感覚で会場を彷徨ってみてください。「ワタシは一つではない」ということを体感できるでしょう。また本展で繰り広げられるのは、森村バージョンの「ワタシの迷宮劇場」です。では、自分の中にはどんな迷宮が広がっているのでしょうか。本展は、改めて自分自身を見つめなおすきっかけとなるかもしれません。「彷徨さまようことを楽しみ、ワタシの中の迷宮世界を体感してほしい」と森村は語ります。

・・・「迷宮」、また北加賀屋にもどらなあかんなあと思うのです。