風のかたち(4) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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《映画『芹沢銈介の美の世界』》「流れの美」を描いた染色家/文:大友真希(染織文化研究家)

https://polaculture.weblogs.jp/blog/2018/02/moviek02.html

《風の字》は、芹沢銈介(1895-1984)の代表作の一つである。「風」を筆の勢いで書いたままに見えながら、丸みを帯びるそのかたちが、★月夜の空を吹きぬける「風」そのものをあらわしているようにも見えないだろうか。実体がなく目に見えない風の流れは、芹沢の目、耳、鼻、皮膚に伝わり★一度内面化されたのちに、「型絵染」によってあたらしい命が吹き込まれている。《風の字》が生み出された経過を、そんな★風に考えてから再び《風の字》と向き合うと、今度はあたかもポーズを決めた「風」がスポットライトをあびる姿に見えてきて愛くるしささえ感じた。この《風の字》は「のれん」の模様としても親しまれている。芹沢は、あらゆるものを題材にして模様を描いた。植物、動物、★風物、諸像、暮らし、仕事、道具、物語、文字、具象、抽象…森羅万象がモチーフだったと言っても過言ではない。そのなかに、「春夏秋冬」という文字をデザインし四季の★変化をあらわした《布文字春夏秋冬二曲屏風》がある。「春夏秋冬」の文字と季節ごとの動植物模様が周りを囲む。《風の字》と同じ文字絵であるが、その文字は流動する帯状の布によってあらわされている。芹沢はこれを「布文字」と呼び、多くの作品を生み出した。《天の字のれん》もその一つだが、これについては「天」という文字よりも、★動いている布そのものが主題であるかのようだ。さらに★布が布に型染されているという多層的な趣向が、不思議な感覚をあたえている。芹沢にとって★文字を書く筆の流れは、天に舞う布の流れも内包していた。本映画では、88歳を迎える芹沢がなお旺盛に創作する姿が映し出され、その生涯を振り返りつつ、作品に見る「美の世界」が描かれている。芹沢は自らの溢れる創作性を、ただ「描く」だけでなく、型紙彫り、糊置き、色差しといった★「行為の重なり」によって最大限に成就させた。下絵どおりの、または頭にイメージした完成形に向かう制作を好まず、★「行為の過程を愉しんだ集積」によって作品を生み出していたのだ。伝統染色である型染は、古くから職人の分業によって制作されてきたものだが、芹沢はすべての工程を自らの手でおこなった。その一貫した仕事は、独自の芸術性を創出し、あらたに「型絵染」と呼ばれるに至った。映画のなかでは、芹沢がこれまでの仕事を顧みて、「なんで今までやってきたのか分からない。自分でこうやろうと思っていたのではなく、★いつの間にかこうなった」と冗談めかして話したというのが印象的だった。また、「家出をして、ほうぼうを旅してまわりたい」と★「流浪」への憧れをよく口にしていたのを知り、芹沢の眼差しとその先にあったものの正体を掴むことができた気がしている。芹沢は★「流れの美」をこの世界に見いだしていたにちがいない。

 

 

◆【静岡市立芹沢銈介美術館】◆

422-8033静岡県静岡市駿河区登呂五丁目10-5/054-282-5522

https://www.seribi.jp/index.html

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年4月18日(土)~2020年5月7日(木)まで臨時休館とさせていただきます。ミュージアムショップも含め、全館休館いたします。何とぞご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

★「芹沢銈介の風」

http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/280400/p017409.html

「風」という文字を使って風を表したデザイン。白く抜かれた円の中に風を受けているかのような風の字を藍の濃淡で染めている。1976年、パリ、国立グラン・パレ美術館で開催された芹沢銈介展で、フランス側がポスターに選んでいる。「風」の絵文字を大胆にアレンジ。こうした絵文字は「芹沢文字」と呼ばれ、氏の創作物における代表的な特徴。この「風の字のれん」のオリジナルは広島県立美術館に所蔵されています。

 

 

【柚木沙弥郎】(1922~)

https://www.samiro.net/index1.html

1946大原美術館に勤務。そこで芹沢銈介の和紙に大胆な民藝模様を型染めした暦に出会う。民藝に魅せられ民藝運動のリーダーである柳宗悦の著書を読み、工芸に関心が深まる。

1947大学での研究と仕事を捨て、★沢銈介のもとに弟子入りする。修行の一環として静岡県由比町の正雪紺屋に住み込み、型から染めまでの染色の技法を学ぶ。

 

 

★2016《宮沢賢治の絵本 雨ニモマケズ》作:宮沢賢治/絵:柚木沙弥郎/出版:三起商行(ミキハウス)

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=279

94歳にして、新作絵本『雨ニモマケズ』(ミキハウス)を出版された柚木沙弥郎さん。柚木さんは、戦後すぐの頃に、美術家であり思想家である柳宗悦(やなぎむねよし)を通じて「民藝」と出会い、のちに人間国宝となる染色工芸家、芹沢銈介(せりざわけいすけ)に師事。現在にいたるまで、型染の第一人者として長年作品を作りつづけてこられました。はじめて手がけた絵本は、1994年に刊行された『魔法のことば』(エスキモーの伝承詩 金関寿夫/訳 クラフトスペースわ刊 後に福音館書店より刊)。この作品で「子どもの宇宙国際図書賞」を受賞したのを皮切りに、何冊もの絵本を制作されています。編集者である松田素子さんとのタッグは、この『魔法のことば』からはじまり、まど・みちおさんの詩を絵本にした『せんねん まんねん』(理論社、2008年刊)につづき、『雨ニモマケズ』が3作目です。

 

 

★《柚木沙弥郎のいま》於:松本市美術館

2020年4月18日(土)~6月7日(日)

http://matsumoto-artmuse.jp/

現在、臨時休館中のため企画展の開催を見合わせております。

「一生懸命だった第一作とは対照的に、歳を重ねると★「なんでもないもの」が作りたくなる。気力と体力が大変だからね(笑)。★いろんなものが削ぎ落とされて、エッセンスだけが残った結果と言えます」by SAMIRO YUNOKI

 

・・・「いろんなものが削ぎ落とされて」には、まだまだ遠い道のりですね。

 

 

《参考》

●「型絵染」の人間国宝・芹沢銈介と、伝統美を愛する白洲正子との交流/文芸春秋より

https://books.bunshun.jp/articles/-/3625

正子はのちに、雑誌の取材で芹沢邸を訪れ、蒐集品の確かさはもとより、「世間の評価がどうでも、作者も時代も分からずとも、★良いものは良い」という見事な態度に感じ入り、人物に魅了される。

●染色家・柚木沙弥郎さんが彫刻家・安田侃(かん)を紹介/ほぼ日より

https://www.1101.com/n/s/yasuda_yunoki/2019-11-21.html

★風にそよぐ布、微動だにしない石。あつかうものは対照的でも、おふたりの気持ちは、芸術の一点で強く結ばれていました。

★hanaホームメイドのお菓子のお店

272-0826千葉県市川市真間2-19-1/047-727-9157

http://www.hanahomemade.com/hana/

hanaは小さなホームメイドのお菓子屋さん。母と娘姉妹3人で、自分たちが食べたいお菓子や祖父★柚木沙弥郎がデザインしたクッキーを小さなキッチンショップで焼いています。毎日のおやつに、プレゼントに、たくさんの笑顔が見られますように。

 

・・・何度も書いていますが、大好きな人たちが次から次へとつながっていく。ついていくのがたいへんです、はあはあはあ。これ以上離されないように、置いてけ堀にならないように、風のように?