旧天王貯水池は、地勢上井戸水に塩分が多い水質事情から強くその整備が望まれ、1910年(明治43)に計画給水人口6万人の規模の上水道配水池として建設され、昭和37年まで約50年間にわたり、その役割を担ってきました。明治43年の水道施設の建設は、大阪府下では大阪市(明治28年建設)に続くもので、市民の大きな期待が寄せられたものでした。建設にあたっては、出入口を初めとして全体を、その当時の最新の建材であった煉瓦で造っています。正面入口には水道施設の先進地であるヨーロッパで用いられていた建築の古典様式にならい「凱旋門」風のデザインが採用されました。建物内部では、点検用の通路を中央に通し、両側に貯水槽が造られています。それぞれの貯水槽は5つに区切られ、内部は半円筒の★ヴォールト架構になっています。また外部は、貯水槽の周囲に土を盛り上げて、直射日光などをさえぎることで細菌の繁殖を防ぎ、水質の安全をはかってきました。このように、旧天王貯水池はそのデザインと施工技術の優秀さの面で建築的にきわめて価値が高く、また堺における上水道の歴史の一端を知る上で貴重な建物であるといえます。平成13年、国指定登録有形文化財。
★ヴォールト架構:アーチをもととした曲面天井の総称。古代から近代に到るまで、組積構造における基本的な建築工法であり、空間や形態の特性を決定する重要な要素となっています。
《けやき通りまちづくりの会》代表:竹内魁成
590-0022堺市堺区中三国ヶ丘町3-3-16
設立:2001年7月。けやき通りは、長尾街道、熊野街道、竹内街道、西高野街道に囲まれた約900m ほどの並木道で、周辺には御陵・建造物・古道・寺社などが多く点在し、それら地域の歴史遺産を活かし、教育、文化の向上を目指したまちづくり活動を進めています。2000年(平成12)に堺市が「けやき通り(榎・三国ヶ丘地域)の景観を活かしたまちづくり」と題して「まちづくり塾」を開催しました。塾に参加した近隣の人たちが中心となり、翌年の2001年(平成13)に「けやき通りまちづくりの会」が発足し、同会は、堺市まちづくり市民組織認定★第一号となりました。
けやき通りまちづくりの会の役員は、会長・事務局長・会計・相談役で構成されており、「花づくり・人に優しい道づくり委員会」、「地域交流委員会」、「歴史遺産活用委員会」の3部門にわかれ活動しています。「花づくり・人に優しい道づくり委員会」では、定期的なまちの清掃・路上簡易広告物除去、けやきの根元に花を植えるなど美しいまちづくりの活動を行っています。「地域交流委員会」では、地元中学生から歌詞を公募し「けやき通りのうた」を作曲し、店舗活性化を図る特典つきショップパスポートを発行しました。そして「歴史遺産活用委員会」では、歴史遺産を通じて勉強会やイベントを開催し、参加者である地元住民の皆さんとの交流、まちの活性化を図っています。また、けやき通り周辺マップや歴史道散策コース『三国の丘の文化遺産12 史跡めぐり』を作成、JR 西日本が発行する『JR ふれあいハイキング』に掲載し、地域外から訪れる方々にもアプローチしています。これらの活動費や経費は、会費、寄付および助成金で賄われています。
旧天王貯水池は、明治43(1910)年に建設された水道施設で、昭和39(1964)年まで約50 年にわたり使用されました。建材には煉瓦が用いられ、当時、水道施設の先進地であったヨーロッパの凱旋門をイメージしたデザインが採用されました。また、直射日光をさえぎるために土を盛り上げるなど、水質の安全のための工夫が施されており、デザインと施工技術は建築的にきわめて価値が高いものです。堺における上水道の歴史の一端を知るうえで貴重な構造物です。また、けやき通りのランドマークにもなっており、旧天王貯水池の一般公開やライトアップなどを行って地域の活性化にも活用されています。けやき通りの歴史遺産の存在を知らない地域の方に、それらが身近にあることに気づいてもらい、★興味をもってもらうことが継承につながる第一歩となり、まちづくりの大きな力にもなります。
本会では、旧天王貯水池の利活用として、アーティストを招いてのアートギャラリーや地域の幼稚園児・小学生・高校生・高齢者の4世代が参加するダンス・音楽祭等を毎年開催し、出演者含め約2,500 人の参加を得ています。また、他団体と協力しあった観桜会やお茶会を貯水池の周辺で開催しています。同じく登録有形文化財である★旧三丘会館などで、建築家や神社の宮司、大学教授を講師に招き、周辺の歴史遺産についての勉強会を年に2~3回開催しています。こういったイベントや勉強会は地域の交流の場となり、地域周辺の活性化にもつながります。そして歴史遺産を身近なものとして感じ、歴史遺産に対する造詣を深めてもらうことにもつながっています。本会は発足から大々的な会員の勧誘はしていなかったこともあり、設立当初からほぼ同じメンバーで活動しています。引退される方もいるため、★会員数は減りつつあるため、現在はイベントの参加者に入会いただけるよう声をかけています。上記のイベントや勉強会は、地域密着型だからこそ開催できるものです。今後も本会が地域の文化財の保存活用を継続していけるよう新たな会員を獲得することが課題の一つです。また、旧天王貯水池は建設されてからまもなく100 年になりますが、傷みが激しく天井からは雨漏りもみられます。今後は保存に向けた★有効利活用を進めていきたいと考えています。今後★「まちづくりはひとづくり」ということに目を向け、「ひとづくり」という新たな部門へと発展させていきたいと思います。
・・・ご苦労なさっていることがヒシヒシと伝わってきます。まずは、興味をもって参加することしかできませんが、かげながら応援していきたいと思います。ありがとうございました。