・・・部屋に入って、まず眼を奪われた「榊莫山」さんについて、少しふれておきましょう。
《NEWS》2010.10.5
榊莫山さんが死去/自由な書風、独自の芸術追求
ひょうひょうとした自由な書風で親しまれ、詩書画一体の芸術を追求した現代書家の榊莫山(本名斉=はじむ)さんが3日午前4時13分、急性心不全のため奈良県天理市の病院で死去した。84歳。三重県出身。自宅は三重県伊賀市菖蒲池1282。葬儀・告別式は近親者で済ませた。喪主は妻美代子さん。旧制中学時代から書や油絵を学び、京都大で美学を学んだ。戦後、日本書芸院展や奎星会展で受賞を重ねたが、書壇の権威主義を嫌って離れ、30代で個展中心の活動に。「芸術のありようが権威権力に対して、卑屈になっている」として「莫山美学」「書百話」などの著書で感じるままにつづった絵と書を世に送り出した。詩書画には、絵に日々の思いを込めた短詩を添えた。大阪で長く生活、飾らない語り口でファンをひきつけた。1981年、伊賀市に戻った。仙人のような風ぼうから、愛称は「莫山先生」。陶芸のほか、焼酎「よかいち」のラベルや、NHK連続テレビ小説「甘辛しゃん」の題字も手掛け、活動は多岐にわたった。93年には、奈良・東大寺の仁王像頭部に写経巻物を納めた。古寺や仏像に造詣が深く、書画や著書多数。
【榊莫山】(1926~2010)
本名齊=はじむ。1926三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。2010年10月3日死去。84歳。京都大学文学部卒。書家の辻本史邑に師事。日本書芸院展や前衛書道の奎星会展で最高賞を受賞。書壇で活躍したが、58年に書道展の審査員を辞め、以後は無所属を通し、書道界の異端児といわれた。「土」「女」「樹」などの文字に大地と生命のイメージを重ねた書を得意とした。50歳ごろから「寒山拾得」などをテーマに、素朴な言葉を添えた水墨による文人画を好んで描いた。81年に大阪から郷里に戻り、93~96年には焼酎のテレビCMにも登場、「莫山先生」の愛称で親しまれた。92年には奈良・東大寺の国宝仁王像の阿形像の頭部に、写経をおさめた。2010年1月には、奈良県桜井市の安倍文殊院に建立された石碑の文字を記した。「野の書」「文房四宝」「空海書韻」「漢詩と歩く」「書百話」など著書多数。
★呉竹の技術の結晶とも言える「千寿墨」180点
http://www.kuretake.co.jp/create/calligraphy/museum.html
古来より、文房四宝のひとつとして親しまれ貴ばれてきた墨は、消磨されながらはじめて不滅の光彩を放つという宿命をもっています。墨の色は、煤煙の質や造墨の技術によりまた使う人の技量により千変万化し、新鮮に、枯淡に、あでやかに、深淵にと自らの姿態を呈します。一方、墨そのもののもつ美しさ故に、文房清玩のひとつとして愛墨家に収蔵されております。中国から造墨の技が伝えられて一千数百年。その技術は時の流れの中で育まれ、さらにじっくりと磨き上げられて我国独自の造墨法として完成されてまいりました。千寿墨は、このような墨造りの悠久の歴史を背景に、呉竹今日の粋を記録に留めたいという願いをこめて練り上げた墨匠畢生の作でございます。
呉竹墨1986干し鰈(ほしがれい)NO.90
呉竹墨1986母情(ぼじょう)NO.91
呉竹墨1986山魚女(やまめ)NO.92
呉竹墨1990胡蝶蘭(こちょうらん)NO.106
呉竹墨1990夢(ゆめ)NO.108
呉竹墨2010仿古「千寿墨」NO.108「夢」
呉竹墨2011仿古「千寿墨」NO.91「母情」
★2010年10月3日に榊莫山先生が逝去されました。先生と深い親交があった呉竹精昇堂が、先生ゆかりの墨を一人でも多くの方に見て頂き後世に残したいという思いから仿古「千寿墨」として復刻したものです。
「書家で才能のあるようなやつ、すくないで。群れる才能はすごいけど。仲間内で展覧会やって、典雅ですな、優雅ですな、くらいしか評する言葉を持たん同士が褒め合うてる。むつかしい漢字を続け字で書いて、そんなん誰も読めへんやろ。かしこい言葉を書くほど人は離れていく。だから僕はみんなが読めてにこにこしたり、エエなあと思うてくれる字を書くねん。他は誰もせんけどな。(莫山)」莫山先生は、★野口英世の母・シカの手紙、お地蔵様の前掛けのマジック書きなどを、魅力的な字として挙げておられます。
《参考》野口英世記念館
969-3284福島県耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字前田81(三城潟)/0242-85-7867
http://www.noguchihideyo.or.jp/
・・・「にぎり墨」もさせていただきました。今、私の机の中でゆっくりと乾燥させているところです。引き出しをあけるたびに、とても良い墨の薫りが漂ってきます。
「ほっとくと足腰弱る。でも運動したりは、ようせんねん(笑い)。だから畑をやる。お百姓さんは凄いわ。種は今蒔かんとダメ言うたらその通りになる。1人の人間の知恵には限りがあるけど、土地に蓄積された智恵やから。(莫山)」
ネクタイの所有数は0。その理由は「ただでさえ女房に首締められとるのにネクタイまですることない(笑い)身長は昔176センチ、今174センチ。体重も女房に甘いもんを配給制にされて69キロに減った。(莫山)」
「今の人はパソコンや携帯の普及で、字を書く機会があまりないらしいけどな。字を記号や文字として使う、もちろん字はそういうもんや。ただ、字そのものにも力みたいなもんがあってな。例えばわしは『土』いう字が好きで、何十年書いても飽きることがない。この字は横2画が地中と地表を表わし、中央に真っ直ぐ1本、植物が天に向かって生えておる。そういう生命力が土という字には宿っていて、書き順も昔は下から上に生えるように書いたはずやねん。それがそう書くとテストではバッテンになる。わしなんかはよく書を左手で書いたもんや。右手には学校で昔習ったことが染みついているからなあ・・・。(莫山)」
・・・絵も同じだなあと、つくづく思います。