【1984国立文楽劇場】設計:黒川紀章
542-0073大阪市中央区日本橋1-12-10/06-6212-2531
http://www.ntj.jac.go.jp/index.html
4番目の国立劇場として1984年に開館、大小2つの劇場と展示室などからなる。大ホールではユネスコ無形文化遺産の「代表一覧表」に記載されている人形浄瑠璃・文楽の公演を中心に演劇や舞踊などが行われる。小ホールでは奇数月に落語・漫才・浪曲などの興行「上方演芸特選会」が開かれ、東京の国立劇場における国立演芸場的役割も担う。独立行政法人日本芸術文化振興会による運営。この場所は★大阪市立高津小学校の旧跡地で、しばらくはフェンスに囲まれた更地となっていた。
《大阪市立高津小学校》
http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/chuo/0000187931.html
明治時代初期に設置された小学校を起源とする。太平洋戦争の戦災で校舎を焼失したため、終戦直後の一時期には大阪市立大宝小学校(現・大阪市立南小学校)に統合されて一時休校となっていたが、1952年に再開校している。その後1970年に現在地に移転した。移転前の旧敷地跡には★国立文楽劇場が建設されている。校区に国立文楽劇場や黒門市場があることから、文楽の学習や黒門市場での体験学習などを取り入れている。
《NEWS》2014.8.7読売オンラインより
「もう1回!」「はい!」ぴんと伸びた背中。固く閉じた両ひざ。張りつめた空気のなか、正座姿の子供たちが、厳しい指導に食らいついていた。国立文楽劇場に近い高津小には、全国でも珍しい文楽の授業がある。プロの演者を招き、10か月で作品を上演できる技量を身につける。現在、6年生が11月の本番に向け、「太夫」「人形遣い」「三味線」に分かれ、特訓中だ。手ぬるい稽古ではない。「ゆらり、ゆらりと、いでたる有り様~」あらすじを語る太夫の稽古。児童が声を上げると、「弁慶の勇ましく、ゆったりとした様子を意識して!」と講師の豊竹咲甫大夫さんから鋭い声が飛んでいた。特別授業は、住民が「地域の伝統文化を子供たちに伝えたい」と提案し、2001年に始まった。
《NEWS》2015.2.12産経WESTより
橋下徹大阪市長による補助金見直し問題で揺れ続ける文楽だが、平成26年度の観客動員数は11万7672人と、昭和59年に同劇場が開場して以来3位の記録を達成するなど好調だ。しかし橋下改革のベクトルは変わらず、市による文楽協会への現行の補助制度は今年度で廃止、27年度からは事業ごとの申請など新たな助成方法に転換する。そんななか、地元大阪のテレビ局が文楽公演を主催するなど民間から手を差し伸べる動きが活発化している。そもそも、文楽の補助金問題は、24年、橋下市長が市から文楽協会への補助金の見直しを指示したことに始まる。伝統芸能というだけで文楽だけ特別扱いしない、集客の努力に応じて支給すべき、というのが理由だった。
《NEWS2》2015.10.28朝日新聞デジタルより
補助金激減・手探りの文楽
12月の大阪市長の任期満了で政界からの引退を表明している橋下市長は、府知事・市長時代を通じて大阪の文化・芸術行政のあり方も大きく変えた。創造の現場はどう対応し、どんな課題が残されたのか。今月中旬、大阪城からほど近い難波宮跡公園に、奈良・吉野産のヒノキなどでつくられた組み立て式舞台が登場した。年2回のペースで各地を巡る野外公演「にっぽん文楽」だ。秋晴れの下、多くの人々が地元発祥の伝統芸能を楽しんだ。2月のグランフロント大阪での公演「うめだ文楽」、7月には阪急うめだ本店で「文楽の世界展」。今年は例年よりも、大阪の街のあちこちで文楽を目にする機会が増えた。いずれも民間企業や団体が企画したものだが、背景には、300年の歴史を誇る文楽の未来への危機感がある。2011年に大阪市長に就任した橋下徹氏は、厳しい市財政の改革に着手。それまであまり対象とならなかった文化・芸術活動の予算や助成金も例外なく見直した。演者のマネジメントなどを担う文楽協会への補助金は、11年度には年間5200万円あったが、段階的に削減され、今年度はとうとうゼロになった。「にっぽん文楽」や「うめだ文楽」は、そんな苦境を打開しようと周囲から企画の声が上がった試みだ。「約2億9千万円ある基金を取り崩せばしばらくはしのげるが、それもいつまでも続かない」。協会の三田進一事務局長は現状を憂う。協会は、松竹が文楽の興行を手放したのを受け、1963年に国・大阪府・大阪市などが出資して設立された。公演収入はほとんど演者の出演料などに回り、協会の運営費は国・府・市の補助金でまかなうのが大まかな収支構造となっている。その「三本柱」の一つが消えた形だ。橋下氏はこのあり方自体を「構造的な欠陥」とし、「マネジメントの対価として、公演収入など売り上げの中から一定の手数料を(協会が)もらう仕組みに変える」よう訴えた。市もその方針に沿い、協会側に提案している。
ある協会関係者はこう危惧する。「技芸員(演者)の収入に直結すること。ぎりぎりのところで生活している若手もいる。世襲制でもない文楽でそんなことをすれば、やりたいと思う人がいなくなってしまうのでは」ユネスコの無形文化遺産にも登録されている文楽は、長い時間をかけて芸を磨くことが必須とされる芸術だ。人形遣いは「足10年、左15年」とも言われる修業を経て、首(かしら)と右手を操る「主遣い」となる。様々な登場人物を一人で語り分ける太夫も同じ。昨年引退した人間国宝の竹本住大夫(91)は「情を伝えられるようになるのに40~50年かかった」と語っている。このため、文楽は比較的手厚い公的資金の恩恵を受けてきたが、橋下氏はこれを問題視。2月に市のホームページに発表した文化行政に関する文章で、「毎年の助成はなかば既得権化し、新たな観客や支持者を呼び込むための創意工夫が弱い」「文楽とは過去の遺産として保護される対象などではない」と指摘。運営資金を削る一方で、市が年間3500万円を支出して「中之島文楽」「まちなか文楽展」などの振興策を打ち出し、ファンや有志らのふるさと寄付金も呼びかけている。
国内外の文化政策に詳しい静岡文化芸術大学の片山泰輔教授は「文楽が国の重要無形文化財に指定されている以上、エンターテインメントビジネスの側面ばかりではだめで、後世にどう伝えていくかという視点が重要」と語る。その上で、「橋下氏が『天下り機関になっている』と協会を批判したことは評価できるが、文化財として、大阪の誇りとしての費用負担をどうするかという視点が欠けていた」と指摘する。一方、公益財団法人である文楽協会に対しても、「理事長ら役員が、海外の公的な芸術団体のトップのように、文楽の必要性を前面に立って訴えるべきだ」と注文する。ある演者は話す。「橋下さんのおかげで皮肉にも文楽に再び注目が集まって、初めて見てくれる方も増えた。でも、傷ついた根本は揺らいだままで、芸に集中できる状況とは言えません」橋下氏が投じた一石は、今なお波紋を広げている。
・・・これまで無関心だった私たちにも責任があるのでは、と思う。日本の伝統文化について、機会を見つけて学ぶ努力をしていきたいものです。