・・・雨にも負けず風にも負けず、雪にも冬の寒い時期にもおすすめの「ミュージアム」と言えば、久しぶりの「伊丹」です。もちろん年老いた母もいっしょ。さて、目的はもちろん「ルオー」ですが、それ以外にもいろいろあるのです。
・・・地下駐車場からすぐに美術館入口です。
◆【伊丹市立美術館】◆
664-0895兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20/072-772-7447
兵庫県の南東部に位置する伊丹市は、神戸市から約20km、大阪市から約10kmの圏域にあって、江戸時代には「酒の町」として繁栄し、文人墨客が訪れる文化の香り高い町として喧伝されてきました。その伊丹の街に美術館をという市民の声によって、かつての「酒の町」の中心地に1987(昭和62)年11月、伊丹市立美術館はオープンしました。館蔵品の大きな柱は、19世紀フランス美術を代表する作家の一人、オノレ・ドーミエの2,000点をこえる諷刺版画、49点の彫刻、4点の油絵などで、このコレクションは日本国内ではもちろん、世界的にも有数の規模を誇っています。これを核に「諷刺とユーモア」というコンセプトのもと、18世紀イギリスから現在へといたる国内外の近代諷刺画を主に蒐集し、アーカイヴ含め約9,000点を収蔵しています。また年間5回ほどの展覧会を企画、講演会やワークショップなども積極的に開催し、展示・普及活動にも取り組んでいます。
・・・先日紹介した儒学者「頼山陽」ゆかりの「台柿」が、ここの庭園にあるのです。しかも、その庭園は「重森三玲」さんの息子さん・お孫さんによるものなのです。
・・・受付カウターにも「台柿」が置かれていました。
◆公益財団法人柿衞文庫 http://www.kakimori.jp/
酒造りで栄えた江戸時代の伊丹は、俳諧文化が華開き、全国の文人墨客も酒に誘われて往来が頻繁でした。その時代の俳諧文化を研究をされていた岡田家当主の故岡田利兵衛氏(俳号=柿衞)の収集された文化遺産とともに、昭和59年(1984)11月に発足したのが柿衞文庫です。柿衞(かきもり)という名は、美酒にひかれて伊丹を訪れた頼山陽が愛した柿を衞るというところから、付けられたものです。現在の柿は、正面を入ったところの中庭に、2代目が植えられています。へたの周りが盛り上がっている台柿の渋柿ですが、ほどよく熟した柿を★頼山陽の酒宴のデザートとして出したところ、いたく気に入られたとの逸話が残っており、同行した南画家の田能村竹田筆による「柿記」や、高橋草坪筆による「台柿図」が、柿衞文庫に所蔵されています。その収蔵品は、東大図書館「洒竹・竹冷文庫」、天理大学図書館「綿屋文庫」と並ぶ日本三大俳諧コレクションと称されています。また、伊丹に住み着いた池田宋旦が開いた「也雲軒」(やうんけん)を現代に蘇らせて、俳句塾も開いています。也雲軒に学んだこともある、伊丹が排出した上島鬼貫(おにつら)の句も展示されています。旧岡田家酒蔵の解体・復元、旧石橋家住宅の解体・復元・移築と併せ、伊丹市立美術館、伊丹市立工芸センターとともに、平成13年(2001)6月に「みやのまえ文化の郷(さと)」の一施設として公開されています。
※参考【台柿】
http://aranishi.hobby-web.net/3web_ara/saihakken63.htm
伊丹市立美術館と同じ建物内で柿衞文庫が併設されており、その日本庭園(枯山水)もすばらしく、庭園内には、毎年みごとに実をつける柿木が庭園の東西方向に3本あります。この柿木3本のうち真ん中にある1本がこの柿衞文庫の名前の由来となった台柿(だがき)で他所ではあまりみかけない珍しい品種でありその種類は菊平(きくひら)といわれています。この渋柿は大きな赤い実のへたの下あたりがまるで台(うてな)のように盛り上がっているのが特徴です。もちろん渋柿ですから渋抜き処理をするか、実が熟すまで食べられません。そして柿が熟すとまるでゼリーのように甘くおいしいものです。この柿が「頼山陽遺愛の柿」といわれています。学者として有名であった幕末の儒学者頼山陽、彼は教科書にも登場しますが日本初の正統的歴史書である「日本外史」の著者で有名です。「日本外史」は源平より徳川までの 盛衰興亡を流暢な漢文体で著し、その情熱的な文章は幕末勤王思想に大きな影響を与えたといわれています。文政12年(1829)10月22日、彼が広島に帰る母を伊丹まで送ってきた際に、他の一流の文人や画家を多数引き連れて来伊したそうです。翌23日に剣菱の醸造元坂本桐陰の家で酒宴が催され、宴たけなわの際にお口直しのデザートとして供されたのが今も残る台柿(今の木は2代目)であります。当時は冷蔵庫もなくおそらく酔い醒ましにこのような熟し柿はデザートとして口当たりもよく、冷たくてシャーベットのように美味であったことでしょう。伝えられるところによると頼山陽は、この柿を絶賛し、もう一つと所望したそうですが、岡田家に一本あるだけの柿なのであきらめてほしいと言われ、その心境を歌に残しました。以来岡田家の当主は柿にちなんだ雅号を持ちますが、第二十二代目の岡田利兵衞は「柿衞」と称し、その文庫の名前としました。植物学の牧野富太郎博士によると、もとの岡田邸内の柿の木は樹齢300年とのことでした。柿衞文庫の衞(もり)という字ですが、よく書き間違いをします。よく使う「衛」ではありません。「衞」は漢字コードで決められているのでパソコンでも正しく変換ができます。ちなみに「柿衞」とは「柿の木を守る」という意味です。柿衞翁はこの柿がたわわに実る時節には「鑑柿会」(かんしかい)として柿を愛でる茶席を設けて、愛蔵の名品の数々で参会の人々をもてなしたといわれています。
★パナソニック汐留ミュージアム所蔵「魂の画家・ジョルジュ・ルオー」展
2014年11月8日(土)~12月23日(火・祝)
この度、伊丹市立美術館では「パナソニック汐留ミュージアム所蔵 魂の画家 ジョルジュ・ルオー展」を開催いたします。20世紀を代表する画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)は、生きることの苦悩や希望など人間の深い本性を鋭く洞察し、重厚なマチエールと太い輪郭線、暗く輝く色彩で描きました。パリに生まれたルオーは、ステンドグラス職人として修行したのち、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローに師事しました。敬虔なカトリック信者として、宗教的な倫理感を根底に社会的なテーマを追い求めたルオーの作品には、キリストの受難や聖書の場面をはじめ、道化師やサーカスの人物たち、娼婦、裁判官、労働者などが繰り返し登場します。題材のひとつひとつに光をあてた表現は、人間への深い愛と共感に満ちています。本展は、国内屈指のコレクションを誇るパナソニック汐留ミュージアム所蔵のルオー作品のなかから、初期から晩年までの油彩画約50点をはじめ、版画集『ミセレーレ』『流れる星のサーカス』などの版画連作をあわせた計約100点をご紹介します。同館のコレクションを一堂に展覧するのは関西で初めてとなり、ルオー芸術の新たな発見の機会となるでしょう。
【参考】パナソニック汐留ミュージアム
105-8301東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4階/03-5777-8600
http://panasonic.co.jp/es/museum/
当ミュージアムは、松下電工(当時)が1990年代末より社会貢献の一環として収集・所蔵してきた20世紀フランスを代表する画家ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の油彩・版画作品を広く人々にご鑑賞いただくことを目的に、2003年4月東京本社ビルの建設を機に本ビル4階に開館いたしました。初期から晩年までの油彩画や代表的版画作品などを含むルオー・コレクションは現在約230点で、これらの作品を館内「ルオー・ギャラリー」で常設展示するほか、ルオーに関連する企画展も随時開催しています。また、パナソニックの事業と関わりの深い「建築・住まい」「工芸・デザイン」をテーマとする企画展も開催し、私たちの暮らしを豊かにする「人と空間」「人と"もの"」との新しい関係を探り、ご提案します。パナソニック 汐留ミュージアムは、さまざまな文化活動を通し、皆様に感動と安らぎを提供する「都会のオアシス」として、21世紀型都市「汐留」というロケーションにふさわしい文化的空間を創造してまいります。
◆伊丹市立工芸センター http://mac-itami.com/
全国的にも珍しい公立の工芸(クラフト)振興施設。国際公募展である「伊丹国際クラフト展」をはじめ、国内外の作家による機能的・デザイン的に優れた工芸品を紹介する企画展を開催しています。また、各種工芸講座、講演会なども行っています。
・・・ここは「無料」で見学できます。