オッタマゲーロ(5)
■ヘビをたいじしたカエル/草山万兎作・あべ弘士絵
アマガエルのあまおと、ヤモリのりーこは仲良しです。ある日、二匹の前に突然シマヘビが現れ、彼らの平和な暮らしが脅かされます。困ったあまおたちがどうしたらよいか相談をしていると、そこへ赤と黄色のナゾのカエルが現れて、助けを申しでます。いったい彼らの正体は・・・あまおたちは助かるのでしょうか。
■大分県の民話:ヘビがカエルをのむわけ
むかしむかし、神さまが世界中の生き物を作りましたが、まだどの生き物に何を食べさせるのか決めていませんでした。
生き物たちは何を食べていいのかわからないので、お腹がペコペコです。
そこで生き物たちは、神さまのところへ行って、
「神さま。早く食べ物を決めてください」と、お願いをしました。
すると、神さまが、
「明日の朝、みんなの食べ物を決めてやるから集まるように」と、おふれを出しました。喜んだ生き物たちは、夜の明けるのを待って神さまのところへ出かけました。
さて、ヘビがノロノロとはっていると、後ろからカエルがやって来て言いました。
「なんだなんだ、長い体で地べたをノロノロと。もう少しはやく進めないのかね」
「そんな事言っても、お腹が空いて力が出ないんだよ」
ヘビが、力のない声で言いました。
「ふん。そんなに事じゃ、昼になってしまうぞ。まあ、お前は後からやって来て、おれさまのお尻でもなめるんだな」
カエルはヘビをバカにして、ピョンピョンと飛んで行きました。
生き物がみんな集まると、神さまは生き物を次々に呼び出して、それぞれの食べ物を決めていきました。
「お前は、草を食べるがよい」
「お前は、花のミツを食べるよい」
「お前は、魚を食べるよい」
でも、カエルは、なかなか呼ばれません。
怒ったカエルは、神さまの前に飛び出して言いました。
「早く、おれさまの食べ物を決めてくださいよ!おれさまが、一番先にやって来たのですよ」
神さまは、うるさいカエルをジロリと見て言いました。
「よし、お前は、虫を食べるがよい」
「えっ?わたしの食べ物は虫ですか!?」
カエルは、ガッカリです。
それでも食べ物が決まったので帰ろうとすると、神さまが言いました。
「待て。お前にはもう少し言う事がある。お前はここへ来る時、ヘビをバカにしてお尻でもなめろと言ったであろう」
「まあ、確かに。でもそれは、ヘビの奴があまりにもノロマですから」
「いいわけはよろしい。望み通り、これからはヘビにお前のお尻をなめてもらう事にしよう」
「とっ、とんでもない!」
カエルはビックリして反対しましたが、神さまは許してくれません。
その時からヘビはカエルを見つけると、すぐにお尻から飲み込んでしまうそうです。
■日本昔ばなし:ヘビがカエルを食べるようになった理由
昔むかぁし、神さまが森や生き物たちを作ったばかりの頃の話です。
どの動物たちも皆、朝ツユを飲んで暮らしていました。ところがある時、カエルは朝ツユに飽きて不平を漏らし始め、他の生き物たちみんなに「皆もそうだろう?」とけしかけました。動物たちも不満に同調し、日中をだらだらと過ごすようになりました。
そんな様子をみた神さまが「そんなら明日、自分たちの食べる物を決めてやろう」と言いました。それを聞いた足の遅い虫や蛇たちは、夜がまだ明けきらない早い時間に、神さまのところへ出発しました。
寝坊して出発が一番遅くなったカエルは、ものすごい勢いで神さまの広場へ駆け出しました。その途中、足の遅い蛇に追いつき、蛇を蹴ったり踏んだりして「ほれほれ、俺の尻を舐めてみろ」と、さんざん馬鹿にしました。
ようやく広場に生き物たちが集まり、神様はそれぞれにふさわしい食べ物を決めていきました。カエルは「簡単に食べられるものが良いです」と主張したので、神さまは「ではカエルは虫を食べるがよい」と決めました。
次にヘビの番になると、またカエルが口を出し「ヘビは役立たずだから、役にたたない喰い物が良いよ」と言いました。神さまは「じゃあヘビはカエルを食べるがよい」と決めました。神さまは「生き物を食べて生きるという事は、自分も食われるという事だ。食べ物に感謝の気持ちを忘れるな」と、言い聞かせました。
こうして、生き物たちは自分たちにふさわしい食べ物が決まりました。それ以来、ヘビはカエルを見つけると、からかわれた時のように尻から飲み込むようになったそうです。
■能登:鳥屋町の昔話伝説集:蛇と蛙/川田:守山裕美子
むかし、神様が動物たちを呼び寄せて、それぞれの動物に食べ物を決められたと。
蛇が昼寝が長くて行くのが遅れたので、急いで神様のところへ出かけた。ところが途中で帰ってくるギャットに出合ったと。蛇はしまった遅かったかと思ったが、ギャットに
「もう間に合わないか」と聞いたら、ギャットは
「もう手遅れでだめやわい」といった。
そんなら蛇が
「わたしは何を食べれぱいいだろう」というたと。ギャットは蛇に尻をむけて
「おまえみたいな、のろまのバカは、おらのげすでも食らえ」と言うたもんで、ほんで蛇はギヤットを頭から食べないで尻からのみこむげと。
■「類話」:蛇とギヤット/瀬戸:池島つや
お釈迦様が、もうおかくれになるちゅうもんで、みんなお釈迦様のところへ、集まったげと。そんとき、蛇がギャットに「おらに、なにくれてやるなあ」と聞いたと。そしたら
「おまえみたいもんに、なにくれるもんなあるいや」ギャットは
「おらでさえ、なんでもそこらにおる、こまかいもんでもひろて食べるがになったもん」と言うたと。蛇はこまった顔をしとったもんで
「なに欲しいちゅうたって、なんもなかろがい」
「ええい、おらの片シチべをやるわい」そうギャットが言うたげと。そやもんで、蛇ゃそれから、蛙の左のシチべから喰らえつくげと。蛙から、蛇をだらにして、やると言うたもんでえんりょなしに食べとるぎ。
■(類話)/今羽坂:坂本正次
(付記)蛙と蛇
なぜ蛙が蛇に呑まれるかという由来談。神様が動物たちに、だれに何を食べさせるか決めたときに、腹のすいていた蛇はのろのろとはって行く、追いついた蛙が蛇をからかい、後からやってきたので、おれの尻でもくらえ、と言って先に行ってしまった。神様は順々に食べ物を決めてくださった。最後に蛙が呼び出され、虫を食うように言われる。そして蛙が蛇をからかったとおり、蛇は蛙の尻をなめてもよいと言われた。それでいまでも、蛇は蛙をみつけると尻から呑みこんでしまう。