防災・危機管理アート(10)
とにかく身の回りのものを段ボールにつめて避難所へ・・・
疲れた心と身体を休めるためには、やはり間仕切りによるプライベートな空間が重要です。
■避難所で習字大会
学校も再開できてなかったので、いくつか学校に残った習字道具を集め、半紙はないので、援助物資の段ボール箱を裂いて半紙の代わりにして、習字大会をしました。
このニュースに接して、子どもってスゴイなあと思いました。
■宮城・気仙沼で見つけた天才少年/段ボール彫刻作家が心をなごます
東日本大震災の被災地・気仙沼の市街地で、通行人が「おやっ」と足を止める光景がある。それは海産物問屋の店頭で、段ボール箱を組み立てたロボットが堂々と突っ立っている。それは誰が見ても、あきらかに子どもの作品だが、くすっと笑ってしまう。 ㈱勝正商店は気仙沼駅から海岸の向う途中の、三日町交差点の角に位置する。信号待ちする乗用車の車窓からも、「ほら、見て、みて」と指差す光景がある。年少者が制作したもので、海産物の空いた段ボール箱を利用したものだ。ユーモラスな作品だ。気仙沼は1000人以上の死者と行方不明者を出した、悲惨な被災地である。1年余りが経ったいま、ガレキの撤去は進んできたが、都市再生や復興は遅々として進んでいない。市民の多くは心に傷を負ったままで、口には出さないが、暗い気持ちである。それだけに小学校1年生の斉藤勝市郎くん(6歳)の作品が、行きかう人の心を思わずなごませるし、明るい話題の提供となっている。 三日町1丁目は、3.11の大津波が床下まできた地域だ。全壊の家屋が少なかっただけに、商店や会社などは順次営業を再開してきている。勝正商店も同様である。オフィスと作業場が隣り合い、営業活動が行われている。これら海産物の袋詰めとオフィスワーク(家族5人と社員5人)が、通行ちゅうの人たちからものぞきこめる。そこには『段ボールの時計台』とか、『発泡スチロールのお城』とか、『三階建てマンション』とか、さらには絵画など、勝市郎くんの制作品が所狭しと展示されている。どの作品も箱の立体空間を上手に利用している。店内で、勝市郎くんの創作について話を聞いた。「通行人の方が笑ったり、面白い、愉快だと足を止めてくれるんですよ」祖母が町の人気者だと教えてくれた。 三陸地方は過去から海産物で栄えてきた。漁業の産地からは段ボールで商品が送られてくる。同店では作業場で小割して袋詰めする。毎日、決まって空箱が出てくる。勝市郎くんはそれら形状を見た瞬間に、何が作れるか、イメージがひらめくようだ。「毎日、なにかしら作っています。カッターやナイフは危ないので、使わせていません。すべてハサミです」と母親が話す。「働く人、全員にケータイのストラップを作ってくれたんですよ」母親がそれを見せてくれた。それぞれ(10人の)顔の特徴がとらえた動物に似せる、ユーモラスな絵が飾りになっている。小学校から帰ってきた勝市郎くんには、「何か作ってみて」というと、快く応じながらも、「きょうは良いもの(素材)がないしな」と首をかしげた。帰宅と同時に、作業場を見て、空の段ボールや発泡スチロールがないと、わかっていたのだ。制作現場を見られないのかな、そんな気持ちにさせられた。ところが、少年はすぐさまB2版ほど段ボール板を見つけ出してきた。この段階で、もはやイメージができあがったらしい。オフィスの応接セットに移動した。その壁には勝市郎くんの等身大の自画像もある。応接机で、段ボール板を置くと同時に、スケッチを始めた。そして18色のクレヨンで色を付けていく。一心に向かう。熱心に創作している勝市郎くんに、何ができるの?と問えば、毒牙のカニだという。ジャイアント・ドラゴン、他の怪獣との三つ巴の戦いだった。この年代の子どもの多くに見られる、怪獣とか、乗り物とか、一つの物にこだわっていない。勝市郎くんの創作の領域は広い。それが特徴だ。 「これも見てください」祖母が取り出してきた、江戸前寿司は本ものそっくり。テーブルに茶菓子とお茶を置いてみた。すると、まさしく本物に思えた。さらなる創作品の海苔巻も同様に上手にできていた。次なる、チューリップの花は虹色である。「1年に一度しか咲かないから、虹色なんだそうです」それは大人にない発想である。「私たち家族全員が仕事をしてますから、子どもの相手をしてあげられないんです。だから、一人で遊びながら、楽しむことを覚えたようです。この職場にはテープや段ボールが豊富にありますから」母親は養育と仕事との兼ね合いを語る。先に作成したという、段ボール箱『マンション』をあらためて凝視すると、室内には浴槽とか、テーブルとか、諸もろの調度品とかが整っている。観るほどに愉快にさせてくれる。まさに段ボール彫刻作家である。それら作品が通行人から見えるのだ。勝市郎くんは教師に勧められたわけでもなく、親に命じられたわけでもない。「観る人を意識した作品だ」ここに天分の才能を見ることができる。 勝市郎くんは大人が働くオフィス内で、自作のロケットで独り遊ぶ。そんな無邪気さも兼ねそなえている。「これを押すと、宇宙に飛び出せンるんだ」非常用脱出ボタンも描いている。世の中には工作好きの少年・少女は多い。勝市郎くんはそれらを越えた、抜群の発想力、制作力にある。天才的だといえる。芸術とは見る側を意識した創作力である。少年の段ボール創作品が、被災地の人々の傷ついた心に、一瞥にしろ、作品を通して、癒しを与えている。市民が笑みを浮かべ、明るくさせてもらえる。この才能は得難いものがある。
つらくても、悲しくても・・・子ども心と遊び心があれば、未来への希望を失うことはないと、つくづく思います。
復興のエネルギー、防災・危機管理の知恵は・・・
子ども時代に、遺伝子として組み込まれていくのです。