予言(3)
予言と言えば・・・
ノストラダムスの予言は、独自に組み上げられたものだけではなく、先行する予言関連の著書からの借用も含まれていることが指摘されている。そうした彼の予言的な参考文献の中で最も重要なものは、疑いなく『ミラビリス・リベル』(1522年に出された編者不明の予言集)である。同書にはジロラモ・サヴォナローラの『天啓大要』の抜粋が含まれており、『予言集』第一序文には、そこからの引用が少なくない。『ミラビリス・リベル』は1520年代に6版を重ねたが、その影響は持続しなかった。一因としては、ラテン語で書かれた第一部の分量が多く、かつ読み辛い古書体で印刷されていたことや、難解な省略が多かったことなどが挙げられる。ノストラダムスは、この書を最初にフランス語で敷衍した一人と言うことができ、一説には『ミラビリス・リベル』を出典とするノストラダムスの四行詩は137篇に上るとも言われている。
ノストラダムスは「パクリ」の天才なのか???
さらに異なる引用元として、クリニトゥスの「栄えある学識について」をあげることができる。ここには、ミカエル・プセルロスの『悪魔論』や、4世紀の新プラトン主義者ヤンブリコスがカルデアやアッシリアの魔術について纏めた『エジプト秘儀論』からの抜粋を含んでいる。『栄えある学識について』をそのままフランス語に訳して転用した箇所や、ノストラダムスなりに敷衍した箇所は、第一序文の中でいくつも指摘することが出来る。また、「百詩篇集」の最初の2篇が、『エジプト秘儀論』の翻案と言うことはつとに知られていた。
ノストラダムスは、第一序文で、自身の神秘学系の蔵書を焼却したと語っている。これが事実だとしても、火にくべられた書物が何であったかは特定されていない。とはいえ、彼の蔵書の追跡調査も、1980年代以降行われており、その結果、彼の蔵書には、スコットランドの神学者ヨハネス・ドゥンス・スコトゥス、イスラム世界の占星術師アルカビティウス、パドヴァ大学の医学者コンファロニエリらの著書や、トマス・モアの『ユートピア』が含まれていたことが明らかになっている。
こうした出典の研究が進んだことで、かつて言われていたように、ノストラダムスが予言の際に何らかの魔術的な儀式を行ったり、トランス状態に陥ったりしたかどうかは疑問視されている。「百詩篇集」の最初の2篇には儀式的なことが書かれているが、既に見たように、これは他の文献からの翻案であり、本人の行動と一致するとは限らない。また、顧客向けの私信に儀式を行ったように書いているものもあるが、顧客に対して説得力を増すために誇張した可能性もある。
他方で、それをもって彼の詩が「予言詩」(「預言詩」)でない、と言い切ることには慎重さが求められる。当時の詩人にとって「詩を作ること」と「預言をすること」とが近しいものと捉えられていた点には、留意が必要だからである。そして、カールステットはまさにこの点において、ノストラダムスがプレイヤード派に影響を及ぼした可能性をも示唆している。
なるほど「詩を作る」ということが「予言(預言)すること」に近いなんて・・・考えたこともなかったけれど、とても納得できる。
『予言集』は、「百詩篇集」と名付けられた四行詩と、散文による2つの序文から成っている。生前に刊行されたのは642篇の四行詩と息子に宛てた序文のみである。死後、さらに国王アンリ2世に宛てた献辞(第二序文)と300篇の四行詩が増補・出版された。死後増補されたものは、既に生前に出版されていたとも言われるが、他方で贋作説も主張されるなど、現在でもなお様々な議論がある。17世紀になってから、さらに四行詩や六行詩などが追補された(追補された素材には、16世紀のうちに登場していたものもある。この点後述を参照のこと)。
ノストラダムスが正しく未来を見通す能力を持っていたとする立場の論者たち(以下「信奉者」)は、「百詩篇集」には16世紀から遠い未来までの出来事が予言されているとして、数百年来、様々に解釈してきた。また、その過程で「的中例」の数々が喧伝され、いわゆるノストラダムス現象のひとつの原動力となってきた。
しかし、20世紀以降、彼が基にしたと推測される文献なども次々と明らかになった結果、ルネサンス期にしばしば見られた百科全書的精神に基づく「科学詩」の一種などとして、『予言集』の文学史上の位置づけも考察されるようになっている。
1999年の7の月
天から恐怖の大王が降ってくる
アンゴルモアの大王をよみがえらせ
その前後の期間
マルスは幸福の名のもとに支配するだろう
(予言集『諸世紀』より)
この不吉な“恐怖の大王”の正体は何か?天変地異、人工衛星墜落、小惑星衝突、コンピュータ暴走、宇宙人襲来、世界戦争勃発…等々色々な説が取りざたされていた。当時、ノストラダムス予言の1999年人類滅亡説を多くの人々が信じた。しかし実際には、破局的な事は何も起こらなかったため、予言は外れたものと思われた。だが、ノストラダムスの人類滅亡予言は1999年ではなく、実は2012年だったという説がある。
ノストラダムスは「カバラ数秘術」という計算法で予言を記していた。しかし解読の間違いでカバラ数字の『13』を足し忘れていたらしい。「1999+13=2012」。つまり、2012年に世界の終焉が訪れる可能性があるというのだ。そして近年、新たにノストラダムスの予言絵画なども発見された。実は彼の予言には、続きがあることがわかったのだ。予言絵画には、ローマ教皇暗殺未遂、9・11テロ等の世界的大事件の様子が描かれていた。そして、予言絵画によれば、現代は魚座の時代で、そして3種類の太陽に関する天体現象が起こるのがちょうど2012年だと言う。そして、2012年の冬に、人類に何か重大な出来事が起こると予言している。
マヤの長期暦の終わりにあたる2012年12月22日。このとき人類は、壊滅的な大破局を迎えるという予言がある。ノストラダムスの予言は、まさにこの時期に合致する。