えへっ(31) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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大正ロマン(1)


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい1  


この夏の入院手術という予期せぬ出来事以来、


暗雲のようにたれこめていた「アンニュイ」は


病室で読みふけった「村上春樹」に端を発して


「佐々木マキ」や「安西水丸」へと波紋を広げ


「ガロ」を頂点とする青年期の「メランコリイ」と


結託するという想定外を引き起こしてしまった。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい2


とりわけその時代における「ねじ式」の影響は


ぬぐいさることのできない四畳半物語を産み


武蔵野シラス台地一面に広がりむせかえる


栗花の香りはさらに少年期の「紅い花」へと


私の記憶の断片を容赦なく掘り起こしていく。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい3


キクチサヨコ・・・


■『紅い花』

つげ義春が『ガロ』1967年10月号に掲載した短編漫画。雄大な自然の風景とノスタルジックなおかっぱ頭の少女を通して、独特の叙情世界を築き上げた作品である。『ねじ式』と対極をなすもう一つの代表作。ストーリーは釣り人である主人公の男性と、山中の小さな売店で店番をしているキクチサヨコとの出会いから始まる。よい釣り場を訪ねる主人公にキクチサヨコがシンデンのマサジを紹介するところから、この切なくも美しい一篇の抒情詩のような物語は展開してゆく。『紅い花』とは、少女が初潮を迎えて大人になることの隠喩である。半分大人になりかかったキクチサヨコと、彼女にいたずらするかたわら、仄かな恋心を寄せるまだ子供のシンデンのマサジのやり取りが渓流や森といった自然を背景に繰り広げられ、微妙な恋物語を際立たせる。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい4


その時、私はシンデンのマサジだった。


そう、今になって気付いたわけである。


■少年時代/作詞・作曲:井上陽水

夏が過ぎ 風あざみ

誰のあこがれに さまよう

青空に 残された

私の心は 夏模様

夢が覚め 夜の中

永い冬が 窓を閉じて

呼びかけたままで

夢はつまり 想い出のあとさき

夏まつり 宵かがり

胸の高なりに 合わせて

八月は 夢花火

私の心は 夏模様

u・・・

目が覚めて 夢のあと

長い影が 夜にのびて

星屑の空へ

夢はつまり 想い出のあとさき

夏が過ぎ 風あざみ

誰のあこがれに さまよう

八月は 夢花火

私の心は 夏模様

u・・・


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい5


■少年時代

昭和19年の秋、東京に住む小学5年生の進二(藤田哲也)は戦局の悪化に伴い、富山県の田舎に縁故疎開することに。そこで彼は子どもたちのリーダー格である武(堀岡裕二)と親しくなるが、彼は学校では性格が変わったように進二につらくあたるのだった・・・。柏原兵三の小説『長い道』と藤子不二男Aの同名漫画を原作に、『瀬戸内少年野球団』などの巨匠・篠田正浩監督が戦時中の都会と地元の少年同士の友情と確執を通して、昭和とは何だったのかを問いかける秀作。子ども社会の構図が、実は軍国主義の構図とも共通したものであり、子どもを描くことで当時の日本が見え隠れしていくという優れた計算がなされているが、それ以上にジュヴナイルとしても一級品であり、今は戻らない懐かしき時代への郷愁は決して回顧主義には陥らない。ラストに流れる井上陽水の同名主題歌も作品に貢献している。


すくらんぶるアートヴィレッジ(略称:SAV)-たい6


■少年H/著:妹尾河童

胸に「H.SENO」の文字を編み込んだセーター。外国人の多い神戸の街でも、昭和十二年頃にそんなセーターを着ている人はいなかった。洋服屋の父親とクリスチャンの母親に育てられた、好奇心と正義感が人一倍旺盛な「少年H」こと妹尾肇が巻き起こす、愛と笑いと勇気の物語。毎日出版文化賞特別賞受賞作。この戦争はなんなんや?忘れられかけている太平洋戦争とその時代を、純粋な「少年H」の眼を通して現代に記した、著書初の自伝的長編小説。戦争のまっただ中を逞しく生きる悪童とその家族が感動を巻き起こす大ベストセラー作品。戦争を知らない少年少女はもちろん大人たちもぜひ読み継いでほしい名作。

河童さんは1930年神戸生まれ。グラフィック・デザイナーを経て、1954年、独学で舞台美術家としてデビュー。以来、演劇、オペラ、ミュージカルなど幅広く活躍中の日本を代表する舞台美術家。「紀伊國屋演劇賞」「サントリー音楽賞」「芸術祭優秀賞」「兵庫県文化賞」ほか多数を受賞。またエッセイストとしても知られ、ユニークな細密イラスト入りの『河童が覗いたヨーロッパ』『河童が覗いたインド』などの人気シリーズといったベストセラーの著書も多い。本作品『少年H』は、著書初の小説で、毎日出版文化賞特別賞受賞作。