シュール考(2)
中学生の子どもがいる教え子から、子どもが学校で「シュール」を習ってきたので、自分の中学時代を思い出して嬉しかった・・・という話を聞かされたことがある。
私が美術教師になって間もなくの頃、様々な教材を開発してきたが、その中でも「シュール」は子どもたちが興味関心をもって真剣に取り組んでくれた。
同様の取り組みは、多くの学校で実践されていた。「シュール」というタイトルを用いないまでも、「構想画」としてイメージや心の世界を描く教材は、とりわけ「思春期」の子どもたちにはふさわしいようである。
写実的な描写にこだわる年代ではあるが、技術的な「うまい・へた」がはっきりするだけに、強く抵抗感をいだく者も多い。
そういう点から、「シュール」が生み出した様々な技法・・・中学校では「モダン・テクニック」という呼び方で指導している。
コラージュ、デカルコマニー、フロッタージュ、ドリッピング、そして最も子どもを喜ばせる技法として・・・マーブリングがある。偶然のおもしろさや美しさを生かして、画面を構成していく。「うまい・へた」を超えた・・・まさしく「シュール」の世界が展開されていく。
どうしても「写実的」な表現が必要な部分もある。いざとなれば、フォト・モンタージュという技法で処理することもできる。結局のところ、技法以上にイメージやアイデアが重要なのである。
その大部分が「思春期」ならではのテーマとなる。恋愛であったり人間関係や親子関係、最も多いのが・・・やっぱり「受験」に関することである。
美術研究会などでは、「思春期の美術」が重要な柱とされる。「受験」という現実的な問題を解決するには、国語や数学などの教科が重視され、美術は軽んじられる傾向にある。しかし、そのような思春期の重圧や心のバランスを保つ上でも、美術の果たす教育的効果は大きい。
私が実践した「シュール」において、描線は「油性黒ボールペン」を使用させた。もちろん下描きは鉛筆であるが、その上からの着色を考えてのことである。すなわち、着色によって描線が弱くならないことと、あくまで緻密な線描を求めたのである。鉛筆では、どうしても陰影をこすったりぼかしたりすることが多く、ボールペンの線を重ねての陰影、ハッチングを駆使させたのである。着色は、当然のごとく「淡彩」を基本とし、少しずつ重ねていく方法をとった。このような方法で、線も色もイキイキさせることができる。表現技法が適切であれば、抵抗なく作業を進めることができ、本来のテーマ追求に没頭できるというものである。
その結果として、本当に優れた作品を多く生み出してくれた子どもたちに感謝している。そのお陰もあって、永く美術教師を続けてこられたのだから・・・
久しぶりに・・・マーブリングしてみることにした。
水ではなく、柿渋で墨を磨ってみた。どのような効果が出るか・・・濃さを変えてサンプルを作っておくことにした。
マーブリングの前に、様々な素材に着色してみることにした。まずは、竹の柄杓・・・
新聞紙のコラージュ作品にも・・・
材木にも塗っておくことにした。乾燥してどのようになるか・・・楽しみである。