きらっ(155) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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灰との出会い(1)

「藍染で大事な灰汁は、ポリ容器では作れないというのが私の考えです。桶で作ることで、灰汁に“呼吸”させることが大事。そうした手法は創業から続いているものです。」と語るのは、明治3年の創業以来、紺屋(藍染屋)として様々な素材を鮮やかに染め続ける「紺九」、4代目の森義男氏。昭和34年に義男氏の父である3代目の卯一氏、そして平成元年には義男氏本人も携わったのが「桂離宮」の茶室「松琴亭」の修復事業、親子2代にわたって歴史的建築物の襖・壁紙の市松藍染紙を染める仕事を手がけてきた。


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藍染についていろいろ調べているうちに、このような話に出会ったものだから、正直たいへんなことになったなあと・・・紺九のHPには次のような大きな桶が掲載されている。


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こんなに大きな桶を入手することができるだろうか?かなり高価に違いない。素人がそこまで用意する必要があるのだろうか?しかし、素人だからこそ、最大限の努力をするべきではないかと・・・


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結局、大きな樽と小さい樽を3個・・・一般に「こもかぶり」と呼ばれる酒樽を入手することができた。とりあえずは、これでやってみよう。次は「灰」の準備である。


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紺九の森さんは「まず、山にある椿、モミジ、楓などを燃やして灰を作ります。このときには、木が燃え尽きる前に消すなど、昔ながらの工夫があるんです。その灰を使って灰汁を作りますが、このときには一切薬品類は使いません。水道水ではなく地下水を使うのも、余分な薬品が入らないようにするためです。水道水を使うと、塩素などの影響でグレーがかった仕上がりになってしまうんです」と語る。


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SAVに地下水はないが、山水なら豊富になる。よっしゃあと・・・ほくそ笑む。ところが、資料によるとそうでもなさそうで、山水には様々な有機物・無機物が含まれているので、ふさわしくないと書かれている。汲み置きの水道水がいいらしい。う~ん残念、とにかく「灰」をなんとかしなくては・・・


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「灰汁(あく)は、文字通り灰の汁。カシなどの堅木の灰でなければ、良質の灰汁が取れません。」という解説があったりしたものだから、とにかく「樫灰」を探すことに・・・しかし、これがなかなか見つからず難航する。


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ようやく入手したのが「くぬぎ」の木灰である。


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■クヌギ

ブナ科コナラ属の落葉樹のひとつ。新緑・紅葉がきれい。クヌギの語源は国木(くにき)からという説がある。古名はつるばみ。漢字では櫟、椚、橡などと表記する。学名はQuercus acutissima。樹高は15-20mになる。 樹皮は暗い灰褐色で厚いコルク状で縦に割れ目ができる。葉は互生、長楕円形で周囲には鋭い鋸歯がならぶ。葉は薄いが硬く、表面にはつやがある。落葉樹であり葉は秋に紅葉する。紅葉後に完全な枯葉になっても離層が形成されないため枝からなかなか落ちず、2月くらいまで枝についていることがある。花は雌雄別の風媒花で4-5月頃に咲く。雄花は黄色い10cmほどの房状に小さな花をつける。雌花は葉の付根に非常に小さい赤っぽい花をつける。雌花は受粉すると実を付け翌年の秋に成熟する。


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クヌギは幹の一部から樹液がしみ出ていることがある。カブトムシやクワガタなどの甲虫類やチョウ、オオスズメバチなどの昆虫が樹液を求めて集まる。樹液は以前はシロスジカミキリが産卵のために傷つけたところから沁み出すことが多いとされ、現在もほとんどの一般向け書籍でそう書かれていることが多いが、近年の研究で主としてボクトウガの幼虫が材に穿孔した孔の出入り口周辺を常に加工し続けることで永続的に樹液を浸出させ、集まるアブやガの様な軟弱な昆虫、ダニなどを捕食していることが明らかになった。いずれにせよ、樹液に集まる昆虫が多い木として有名であり、またそれを狙って甲虫類を捕獲するために人為的に傷つけられることもある。

ウラナミアカシジミという蝶の幼虫はクヌギの若葉を食べて成長する。またクヌギは、ヤママユガ、クスサン、オオミズアオのような、ヤママユガ科の幼虫の食樹のひとつである。そのため昆虫採集家はこの木を見ると立ち止まってうろうろする。

クヌギは成長が早く植林から10年ほどで木材として利用できるようになる。伐採しても切り株から萌芽更新が発生し、再び数年後には樹勢を回復する。持続的な利用が可能な里山の樹木のひとつで、農村に住む人々に利用されてきた。里山は下草刈りや枝打ち、定期的な伐採など人の手が入ることによって維持されていたが、近代化とともに農業や生活様式が変化し放置されることも多くなった。材質は硬く、建築材や器具材、車両、船舶に使われるほか、薪や椎茸栽培の榾木(ほだぎ)として用いられる。


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■落葉は腐葉土として作物の肥料に利用される。養蚕では、屋内で蚕を飼育する家蚕(かさん)が行われる以前から、野外でクヌギの葉にヤママユガ(天蚕)を付けて飼育する方法が行われていた。

■ドングリ

実は他のブナ科の樹木の実とともにドングリとよばれる。ドングリの中では直径が約2cmと大きく、ほぼ球形で、半分は椀型の殻斗につつまれている。殻斗のまわりにはたくさんの鱗片がつく。この鱗片が細く尖って反り返った棘状になっているのがこの種の特徴でもある。実は渋味が強いため、そのままでは食用にならない。

実は爪楊枝を刺して独楽にするなど子供の玩具として利用される。また、縄文時代の遺跡からクヌギの実が土器などともに発掘されたことから、灰汁抜きをして食べたと考えられている。

■つるばみ染め

樹皮やドングリの殻は、つるばみ染めの染料として用いられる。つるばみ染めは媒染剤として鉄を加え、染め上がりは黒から紺色になる。

■樹皮は樸樕(ボクソク)という生薬であり、十味敗毒湯、治打撲一方(ヂダボクイッポウ)といった漢方薬に配合される。

■里山

日本では岩手県・山形県以南の各地に広く分布する。低山地や平地で照葉樹林に混成して生える。また、薪炭目的の伐採によって、この種などの落葉樹が優先する森林が成立する場合があり、往々にして里山と呼ぶのはこのような林であることが多い。また、これを薪炭用材として人為的に植えられた物も多い。また、このようにいわゆる里山の代表的な構成と認められて来たために、近年の広葉樹の植樹の際に選ばれることが多い。しかし、元来その分布は日本の中ではやや北に位置するものである。たとえば紀伊半島南部では、かつては植栽され、大きな木になっていたが、枯死した後に苗が生育する様子は見られない。そのような点も考慮すべきであろう。