刻装飾
茶壺の本体や蓋に彫刻刀で刻まれた装飾を指します。宜興紫砂壺の様々な装飾方法のなかでも、特筆すべきもののひとつといっても良いでしょう。釉薬をかけない宜興窯において、染め付けや紛彩などの装飾は基本的に行いませんから、刀で紫砂胎に書画を刻むというのは実に利にかなった装飾方法です。この装飾も単に絵を入れただけでなく、時代毎の文人が多く関わり、文人趣味をふんだんに取り入れたことから、紫砂壺を宜興という一地方の特産品から、中国文化の粋であるといわれるまでに引き上げたといっても過言ではありません。
日本でも、江戸末期の文人達に宜興茶壺が珍重されたゆえんでもあります。刻装飾は、彫刻刀を筆の代わりにして書や絵を描くもので、これらの文字や書法・篆刻などの金石味が渾然一体となって独特の文人趣味をかもしだすものです。すでに、明代の茶壺には刻装飾が見られますが、やはり刻装飾を不動のものにしたのは、陳曼生です。絵としては、山水花鳥人物博古図などをテーマにします。特に梅・蘭・竹・菊という四君子は縁起物として良く刻まれます。また、茶壺は昔から贈り物としてオーダーされることが多く、誰々のなんとか記念とかそういう記念の文字が入っているものも多くあります。
砂地刻・・・素晴らしい。